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私の瞳に大切な人がいますー鷺草の海 (最終回)
「鷺草の少女に逢えて、僕は幸せだ!」
幸樹が歓喜の声を上げ、舞の手を強く握った。
「お兄さん!」
十年前の少女に戻った舞は、幸樹に抱きついた。
「可哀相に、今日まで、お兄さん、と呼べなかったんだね」
うん、と舞が頷く。
その愛らしさに、幸樹は少女を抱くように、舞をひしと抱き締めて言った。
「もう、君を絶対に一人で帰らしたりしないからね」
舞に真の安らぎと幸せが訪れた。
二人の幸せを見守るかのように、美しい夕日が二人を優しく包むように照らしていた。