見える景色は桃源郷
たとえそれが一瞬でも
あても無くあちこちと彷徨った結果見つけた川辺にある木の上で、休憩がてらに飯を食べることにした。
インベントリから取り出した焼いて味を付けた肉と新鮮な野菜を挟んだパンにかじりつきながらこの森のことを整理する。
見た限りモンスターは最初のトカゲ、複数に枝分かれした角を持つ黄金色の巨大な鹿、人なんて簡単に攫えるほどの大きさの黒い鷹だ。
他にも地面を掘り起こした跡や空気を震わせるような轟音が聞こえたのでまだまだ居ると思う。ただ残念なことに全ての敵において一撃で俺は死ぬだろうと判断している。
そして落ちる時にはちょうど真後ろだったから気づかなかったが、天まで届けとばかりの大木が生えているのが見えた。なので次はそこに行ってみようと思っている。
「うしっ、行きますか」
パン屑を払って立ち上がり、大きく伸びをして危うく落ち掛ける。下の方にある洞にモンスターいるから落ちたら大事だ。さっき見たパーティーみたく音もなく食われてしまうだろう。
ちなみにそのパーティーの他のメンバーは賢明にも近づかずに他の場所に行ってしまった。まあ、見たところ魔法職が食われてたから遠距離攻撃がないんだろう。
地上は危険いっぱいのせいで全然探索ができないため収穫はゼロ。レベル差とか理由はあるが降りたら死ぬとか泣きたくなるね。
そんな風に考え事をしながらスキルで分かった敵と遭遇しない様に進路を変えながら、着実に巨木の方に近づいてた時にそいつを見た。
「…他のパーティーか」
何度目かになる他のパーティーとの邂逅。敵を遠ざけるためか魔法で火をつけながら休憩していたそのパーティーを一瞥して通り過ぎた。そして背後に爆音が響いた。
「………」
一瞬だけ止まり、攻撃を加えたことで分かった敵の位置から全力で逃げる。休んでたパーティーは索敵に反応がないから無視。というか自分の命最優先だから反応があっても無視だ。
「ダメよ逃げちゃ。貴方が一番楽しそうなんだから」
「んなこといいからどけえ!」
「いやよ。そっちがどいて?」
だが風切り音とともに次の枝に少女が現れる。飛び出してしまった俺が急に止まれるわけがないのでそのまま突っ込むが、ぶつかる前に少女が持つ身の丈ほどの杖を振ると何かにぶつかり地面に叩き落とされる。
転がるように受け身を取り、片手を地面につけて少女に見えない様に左手にカランビットを抜いて後ろ手に持った。
「やっぱり身軽なのね。貴方なら他の人より長く戦えそうだわ」
「へえ、そうかい。俺は戦う気ないけどねえ」
嬉しそうに言う少女に弱みを見せないためにニヤリと笑いながらそう返して、観察と思考を開始する。
枝の上に立つ少女は見た感じは俺と同じくらいの年齢で膝上のワンピースを着ている。気の強そうな切れ長の目と背中の中ほどまでの蒼みがかった銀の髪が特徴的な外見、そしてその手に持つ杖の大きな丸い宝石が目につく。
そしてさっきの攻撃や得物を見る限り魔法使い方のスキル構成でいいだろう。近接型の俺はいかに距離を詰めて戦えるかがカギになるが、相手が木の上にいる時点でかなり不利だ。
「というかどっかで見た特徴…」
ああ、あの髪の毛なんかセティンに似ている。というかよくよく見ると顔立ちもどことなく似てるじゃないか。
そう考えた時点で目の前の少女が誰かということと、この状況の原因は大体わかった。魔王の娘ならあの魔法も納得だ。
そうやって考えていて動きを止めていたからか、若干不満そうに杖をこちらに向けて言った。
「そんなことは別にいいでしょ? 貴方は私にやられればいいの」
「まあ待てよ。俺とお前じゃどう考えてもすぐ終わって楽しくねえだろうから他のところ行ったらどうだ?」
「他の人たちはこの森のモンスターにやられて全員やられたわよ」
「うわー、殺意満載っすねこの森」
さらりと言われたことに呆れて若干棒読みになってしまう。まあ冒険始めた勇者が魔王の御膝元の森の敵を倒せるわけないですよねえ。
そうなると俺が最後の生き残りのわけだが、どうもあと数十秒で死ぬね。だけど、いやだからこそこれだけは言っておかなくてはならない。
「見えた」
ゆっくりと立ち上がり、カランビットを握っていない方の手で?を浮かべる少女を指差して、かっこをつけるように言った。
「緑だ!」
枝の上にいる少女をしゃがんで低い視点から見ていたおかげで、スカートの中のレースが多い布が一瞬だけ見えたのだ。
一瞬わからなかったようで首を傾げていたが、気付いたのかスカートを抑え徐々に赤くなっていく少女を最後まで見る前に背中を向けて逃げ出した。
「死ね変態!」
直後、罵倒とともに空間が爆発した。
剣Lv36 回避Lv38 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv34




