自然は厳しく残酷である
「うわ、ひでえなあいつ」
自分が見た光景と状況を考え、この現象を起こしたセティンに文句を言うようにつぶやく。
ちなみに移動した先は森が地平線まで続く光景が見える場所、目測20メートルほど上空である。もちろん羽が生えてるわけでも、シロのように魔法で飛べるわけもないので重力に引っ張られてあとは落ちるだけだ。
このままでは森の主云々の前にお陀仏だ。そうならないために腹這いになるように体勢を整え、枝が多い場所に落ちるように調整する。
「何もせずに死に戻りはごめんだぜ」
下にあった木の枝にぶつかる寸前に手を顔の前に上げ余計な怪我をしない様にすると、すぐに枝の折れるバキバキをいう音と衝撃が走る。
そして顔をガードする腕の間で地面が近づいてきたを確認して足から地面に落ちて膝、太もも、背中と何度も転がり衝撃を逃がしてどうにか無事に着地する。
「あっぶねー」
HPを見れば4分の1程度が減っている。思ったより多かった枝と強化された身体能力、あとリアル技能のおかげだろうか。
コートについた汚れを叩き落として見回す。街の近くの森と違い木々も大きく太く、森の中自体が明るい印象を受ける。
魔王が持つ森だと言うからもっとこうおどろおどろしいものを予想していたが、見上げた空も紅いなどの魔王領あるある要素もない、活気にあふれながらどことなく荘厳な雰囲気の場所だった。
「さって、これからどうしたものか」
上空から見た限りこの森はかなりでかい。闇雲に探せばただ時間を無駄に消費するだけだ。かといって罠を仕掛けるには、どこに出るかわからない現状では博打でしかない。
まあ他のパーティーも同じ状況なんだし焦ることはないだろう。ここ限定のアイテム取ってのんびりしてればいいだろう。せっかくだし景色いいとこで飯を食うのもいいかもしれん。
そうと決まれば主を探すふりして景色いいとこ探そう。いつも通りに影針で跳び、背後から追従する球体に苦笑いしながら枝から枝へと跳び移っていく。
が、すぐに数人のプレイヤーと敵が盗賊の技術の索敵に引っかかった。助ける気は皆無だが、もし主と戦ってたらハイエナできるかもしれないしそっちに行ってみよう。
近づくにつれて徐々に合図の声や何かと戦う音が聞こえ始めたので速度を緩め、ちょうど見える木の枝まで移動する。そしてそこで見たものは地獄だった。
「攻撃を正面から受けようと思うな、盾を斜めに構えて受け流せ!」
「ちきしょう、俺はこんなところで死ぬのか…」
プレイヤー側は意匠が統一された防具と武具を持ったパーティー上限の6人だ。リーダーと思わしき男が自ら前線に立ち、敵からの攻撃を防ぎながら必死に指揮をしているが、ほとんどの仲間がぼろぼろになり絶望の表情を浮かべる中でどれだけ役に立つというのか。
そして敵を一言で表すなら大きなトカゲ、もしくは翼の生えていないドラゴンといったところだろう。灰色の鱗をテカらせる五メートルほどのそいつが三体、プレイヤーと対照的にほぼ無傷で居た。
あと見えてないだろうけど、繁みの奥に二匹追加でパーティーの背後から来るの見えるから負け確定だな。合掌。
「とにかく攻撃だ。鱗ではなくて目や口を「ぐわあっ!」なんだ!?」
指示している間に後ろから忍び寄ったトカゲに後衛の魔法使いがトカゲに食われて一瞬でポリゴンになる。
元より劣勢だった戦いなのに、敵が来て味方がやられたらどうなるかは明白だ。負けるとわかっていても立ち向かう者、武器を捨て情けない声をあげて逃げる者も平等に食われた。
「ひっ、助けt」
「えっげつねー…」
五匹に囲まれ、一本の木まで追い詰められた男を食ったトカゲの口からはみ出た腕がしばらくぴくぴくと動いた後にポリゴンとなり散っていく様に頬を引き攣らせる。
これ中継してるらしいけど盛り上がってるのだろうか。予想だと会場から音が消えてそうだが。
誰も相手が居なくなったトカゲが俺の方を一瞥した後、森の奥に去って行くのを見て大きく息を吐いて木の幹に体を預けた。
「見逃されたか」
どうやら俺はトカゲにとって取るに足らない存在らしい。俺としてもタイマンならともかく慣れてない集団と戦うのは嫌だったので助かったが。
あのトカゲが食物連鎖のどの程度の位置に存在しているか分らないが、あれが最底辺じゃないことを祈りつつその場を後にした。
剣Lv36 回避Lv38 隠密Lv31 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv24 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv24 罠Lv11 盗賊の技術Lv31
着地するところのマネして怪我をしても一切の責任を負いません




