カッコつけるとろくなことが起きない
「影針」
衝撃に呷られながら魔法を発動、影針と爆風を推進力に大きく進み草むらに飛び込んで地面に伏せて隠蔽と隠密を使う。
HPバーは7割ほどが減っているが、普通に喰らうのに比べたらだいぶマシである。
「なんなのあの男。いきなりあんなこと言うなんてありえないわよ!」
少女を中心として木々がなぎ倒され、円状の広場が形成された場所で顔を赤く染めながら叫んでいた。
もちろん返事をする気はない。だが反論するとあれはお約束みたいなものだから宣言しなくちゃいけないと思ったんだ。
「というかみっともなく地面に這いつくばらせて命乞いをさせて、じわじわといたぶればよかったわね」
顎に手を当てて周囲をぐるぐると熊のように回りながらぶつぶつと言っているが、気の強そうな見た目でそれやられたら何かに目覚めちゃいそうだからごめんだねそれは。
しかし早くどこかに行ってもらわないと消費MPがドゥンドゥン減っててるからすぐに見つかっちゃいそうなんだ☆…言っておいて何だが我ながらキモイ。
「まあいいわ。私を満足させてくれる人間じゃなかったってだけだし」
そう強がるように言っている。しかし理由はわからないが、ちらりと見えた横顔がどことなく寂しげに見えたのは気のせいなのだろうか。
その表情を見て思わず出ていきそうになったがこのHPじゃ次の魔法は耐えれないしじっと我慢して、少女が遠くに行くまで待たなけらばならない。
「仕方ないわね、そこらへんのモンスター狩ってストレス解消しましょ。あそこなら強そうなの居そうだし」
そんな独り言を言って大木の方向、つまりこちらの方にやってくるので見つからない様に祈っていた。
こちらまでの距離が一メートルを切ってもう諦めかけてた時、突如後ろの方から何かが来るのが索敵で分かった。それだけならいいが速度がやばい。下手すると車くらいの速度が出てるんじゃないだろうかレベルだ。
だが目の前の少女はスキルを使っているとはいえ、これだけ近くにいる俺を認知してないのだからその敵に気づいてないだろう。
そこまで考えたところで勝手に体が動き立ち上がっていた。
「貴方生きてたのね!」
やはり気づいていなかったようで少女が声を上げて右手の杖をこちらに向けようとするが、その前に懐に入り込み右手で腕を押さえつける。
そのまま肩を鎖骨のあたりにぶつけながらこちらに腕を引っ張り少女を反転させ、膝かっくんの要領で倒して首の後ろとひざ裏で保持して抱え込む。
ここまでで数秒、その時にはすでに背後から地響きがするのですぐさま影針を発動させながら横に飛んだ。
「あっぶね…」
その数瞬後に俺が潜んでいた草むらを踏み潰して、高さが3メートルはあろう巨大なイノシシが飛び出してきた。
そいつは俺たちのところを通り過ぎたあと、広場の向こう側の木々をなぎ倒しながら徐々に減速してこちらを振り向いた。
額からサイのように突き出した角と湾曲した2本の牙をこちらに向け、怒りの色を見える瞳でこちらを睨む。
先が白くなり始めた毛皮に覆われた傷だらけの巨躯、それに対峙した時の雰囲気などでこいつが森の主だとあたりをつける。
「ななななななに勝手に触ってんのよ貴方! というかなんでお姫様抱っこなのよ!」
「うっせ。助けてやったんだから礼くらい言えよ」
「いいから早く下ろしなさいよ!」
「へいへい。我儘な姫様なことで」
照れてるのか赤い顔のまま腕の中で怒鳴ってくる少女をイノシシを見つめたまま下ろし、ナイフを掴みながら前に出る。
正直もっとからかっておきたかったがこのイノシシをどうにかする方が先決だ。攻撃が通るかどうか分からないが、最悪後ろのやつが逃げるまで時間を稼いでやろうじゃないか。
「ほら、来いよクソイノシシ。得物はこっちだぜ」
中指を立て、引っ張るようなジェスチャーをしてかかってこいという意思を伝える。
俺がヘイト上げるスキル持ってたらこんな不確定な挑発しなくてもいいんだけど、ソロの俺は持ってるわけないから仕方ない。
「<エアハンマー>」
そんなちょっとカッコつけたポーズをしている最中、後ろから伸びてきた杖の持ち主の呪文でイノシシが潰れた。
死んではいないが足が地面にめり込んで動けなそうだし、HPが9割ほど減ってるからもはや敵ではないですねはい。
「…ちったあ空気読めよアホが」
「何を言ってるのかしら。どうせ貴方じゃ倒せないでしょ、だからやってあげたんじゃない」
「カッコつけた俺は後ろの珠で他のプレイヤーに見られてんだよ? なに、俺がアホみたいじゃん?」
「知らないわよ。貴方が勝手にカッコつけただけでしょう」
思わず真顔で振り向いて言うと澄まし顔で言ってくる。
まあその通りとしか言いようにないが、なんか悔しいのでジト目で見続けることにした。
「………」
「…何よ。黙ってないで言いたいことあるなら言いなさいよ」
「……さっさととどめ差したらどうですかー」
「そんなの言われなくてもやるわよ。〈エアハンマー〉」
次の魔法で腹までに地面にめり込んであっけなくポリゴンとなって砕け散る。
1ダメージも与えてない俺には何もアイテムを取得できない。これ俺が居た意味があったのだろうかマジで。
剣Lv36 回避Lv38 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv35




