第2話 害獣全頭管理案
かつて最先端技術と工業生産力を誇っていたA国は 衰退の一途であった。
大学での研究費は確保できない
優秀な人材を育てることもできない
なにしろ 自国の優秀な若者ではなく、周辺国の教育レベルの低い金目当ての連中に、A国での小学生レベルの国語教育と中学生レベルの技術教育を手とり足とり教えこみ A国の大学生として扱わねばならないのだから、
A国で生まれ育ったA国の大学生に専門教育を施す余裕など大学教員には全くないのである。
A国出身の大学生はチューターとして 「留学生」様の無償の家庭教師兼メイド・侍従役となることを お国が推奨しているのであるから。
そして留学生たちは 平然としていう。
「私たちは オオカミ A国人は羊の群れ」(私たちは好き放題にやる。A国に置いても 私たちのやり方にA国人が批判することは無礼きわまりない)
「A国はB国へ行くための中継所。ここでお金を稼いで 私はB国で暮らすか、それが無理な時には 本国で暮らしつつA国を保養地として利用する」
実際 A国では 隣国からの元留学生たちが、本国で産まれた子供達を連れて休暇に来ては、子供達が A国の歴史的文化遺産をぶっ壊しても「子供がやることを許せないA国人の心が狭い」と平然とのたまうようになっていた。
◇
事態が ここまで進めばたとえ「オールドメディア」と揶揄されるようになったA国報道機関がだんまりを決め込もうと、A国民 一人一人が 異常な国内状況に目を向けるようになった。
迷惑外国人の氾濫 クマの氾濫 どちらも 私たちの存在を脅かす存在なのに
マスごみは それを報じず、あいも変わらず 外国人を大切に クマを守ろう、クマに食われる人間は悪い、熊に荒らされるような場所に生活する人間が悪い、クマが庭に来て困るなら、庭の果樹を切り倒せ!
としか「報道」しないのであるから。
◇
かつて すたれ行くA国の10年後20年後を見据えて提出されていた「害獣全頭管理案」
あるいは その他の改善案。
これらはすべて、「未決済書類箱」に入れられ 検討されることもなく没にされていた。
しかしながら、ど根性大根のように 癒着組織の 癒着基盤の割れ目に根を張って生き延びていた
プッツン官僚たちが連携して 再度推敲して再提出した「害獣全頭管理案」
それが 今回は 日の目を見た。
それは
①衛星通信とドローンを使って A国内の山野に完全監視網をひく
目的は あくまでも 野外動物の保護基準作成のための 基礎資料作りのため
②ドローンを使って 野外動物に タグを埋めこむ
麻酔銃を使い、痛みもなく薬品も体内で素早く分解される無害なものを使う、動物に優しい仕様である。
タグからは微弱な電波を発信させ、動物の所在地を確認できるようにする
③山野の単位面積あたりの 動物の生息可能数を超える繁殖があった場合のみ 間引きを行う。
鉄砲などという野蛮な方法ではなく ドローンによる麻酔発射により
安らかに動物を(あの世)に送り出す。
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③については 動物愛護団体から反対声明が出されたので
麻酔銃による捕獲と同時に その旨を広告する。
その動物を守りたい方は 公示より1日以内に、保証金を支払い 担当機関による安全確認済みの飼育環境にその動物をひきとること、引き取り手が無ければ 旅立たせる
という妥協案で 法案を成立させた。
すなわち 飼育者が 飼育動物のふるまいすべてについて全責任を負い
他者に危害を加えたり 他者の器物破損を引き起こさない環境を用意してからひきとり 飼育中はその環境を維持することを義務づけたのである。
それゆえ 飼育中のクマや犬などが脱走して他人や他人のペット・家畜を傷つけた場合は、無条件で飼育者が 傷ついた生物が負ったのと同等の傷を負うこと法令で定めた。
もし 被害者の目がえぐり取られたなら、飼育者の目も麻酔抜きでえぐり取られる、もし脱走した犬が家畜を噛み殺せば飼育者の体を引き裂いて死ぬまで放置する、そういう 因果応報の飼育責任を負わせる法律である。
ハムラビ法典を持ちだすまでもなく、この「他者を傷つけた者は 同等の罰を受ける」定めは、人類普遍の定めという認識を、復活させたのであった。
なにしろ、獣の命にも人間と同じ価値がある主張するのが 動物愛護論者であり、金銭に変えることができない! というのがその者達の主張であったので、ならば 飼育動物が他者に与えた損害は お主の身体と命で償えという論理的帰結になったのであった。なぜなら 罰金の支払いとは 命を金に換える行為であり、君たちが全否定している論理なのだからと。
・このゴリ推し論法で、法案を成立できたのは、世論という風に便乗する国会議員が多数出たからであった。
なにしろ 票田の地域住民が 「私たちの命と財産を害するクマの野放しをする議員など支持しない!」と宣言し、パーティ券の購入も 寄付も 選挙協力も一切拒否したのであるから。
表向きの「キレーな言葉」が大好きな田舎議員たちも 都会=他選挙区に住む動物愛護団体のご機嫌取りばかりをしていられなくなったのであった。
さらに 各方面から 議員団体に様々な根回し&献金と圧力をかけることにも成功した。
◇
議員たちからみてこの法案の利点は、
①軍事転用可能なドローン技術や 国土監視ネットワークを
あくまでも 国民の命と財産を守ることを第一目的とする、「市民社会に優しいシステム」と銘打って実現できる
②最初から 人間をターゲットにした監視ネットワークのプログラミングは
対象が人間であるかぎり、政治と利権と犯罪者による悪用と、他国からの妨害+市民の反発(その中には 個人が監視逃れ策の実行に走るということも含まれる)により システム作りがうまくいかないのは自明である。
一方、野良動物を対象にするならば、対象生物種ごとの個別案件として システム化しやすく、それに対応した技術・道具開発は 小規模資本での起業参入を可能とし、地域産業の発展に役立つ。
そのために、純粋な国産企業のみが 生産活動に加われるようにすることにより、議員にも地域活性化に功績をあげたという実績作りができる。
そして 基本技術さへできてしまえば、その発展的応用はたやすいので
軍国派議員としても反対する理由がない
という点にあった。
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A国には 先端技術を追求する軍産共同体というものがなかったので
こういうソフト防衛策がちょうどよかったという点が 実は一番大きな理由であったが、これは 言わぬが花である。
そして この全頭管理対策は すべて 国産技術者・A国単独資本の企業のみで行い、従事者も3代前からのA国民のみを雇用するという点で
いいかげん 外国人跋扈の国内不安定化にうんざりどころか恐怖をいだいていたA国民からも、歓迎されたのであった。
もはやA国民にとっては、クマやイノシシ・鹿を筆頭とする野良害獣も、外国人も 同等の脅威・不安要因と感じられるほど、国内情勢が悪化していた。
表面的には、外国人の人権に配慮して 外国人観光客に対しては礼儀正しく対応していても
A国民の心の中には 憎悪と呼べるラインに接近するほど 外国人へのうんざり昂じて嫌悪感が
蓄積されていたのであった、抑圧という外部規範により圧縮された形で。
敏感な政治家ならば、その状況を無視できないほどの反感のたかまり。
それに速やかに対応してみせることこそが、次期首相への道!
と目端の利く議員志望者ならば だれもが 認識した事態。
それが「害獣全頭管理案」成立につながった。




