アルティメットニッパー
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悠希が「普通のニッパー」と言ったのは、「プラモデル用の先細の薄刃ニッパー」のことだ。
悠希は、タミヤの「ゲートカット用の先細薄刃ニッパー」を愛用している
詳しいことは聞いていないが、悠希があのとき三人と一緒にいなかったときに、すべて遥香に教えられて、この類の工具などを揃えていたのだろう。
しかし、1万ドルを日本円で持ってきた真唯と、社会人一年目の環季。
舞花は、特にアルバイトなどはしていないそうなので、このお金も貯金や小遣いではなく、親が出してくれたそうなのだが……。おそらくそれは、父親が出してくれたのだろう。
いつの時代も、かわいい娘には、父親は甘いものである。
「では……」
環季がそう言う。
「あっ!? 待って、環ちゃん!」
悠希が、環季を止める。
「えっ!? えぇーーっ、ナニ!? 何か問題でも!?」
環季は動揺して、悠希を見る。
「いや……。メカニカルコアメッキのパーツは、ちょっと硬いみたいなんで、切るときには、ちょっと気をつけて……ね」
そう言った。
「あぁーー。なるほどー。了解です。部長」
そう返した。
「確かにYouTubeでも、そんなこと言ってたな……」
環季は、そう呟く。
やはり、みんなそれなりに前もって調べてきているようだ。
「あぁーー!? あと、そのメカニカルコアメッキのパーツと、舞花ちゃんのガンダムの外装パーツは、アンダーゲートタイプだから、そんなにゲートの痕が残らないから安心して」
そう言った。
「あの。そのアンダーゲートタイプを詳しく教えてもらっていいですか」
そう言ったのは、舞花だった。
舞花の、極度の人見知りの英語キャラは、いつの間にか消えている。
まだ常にではないが、こうしてハッキリと日本語で話してくれることもある。
「あっ……。はい。そのアンダーゲートタイプというのは、パーツの側面に、ランナーとパーツを繋いでいるゲートがあるのではなく、目立たないパーツの裏側の合わせ目部分にゲートがあるモノのことです。それなので、当然パーツの外側にゲート痕が残りません」
そうかしこまって、悠希は説明する。
「なるほどー」
舞花は、そう言って納得する。
「あと、もう一つ。アンダーゲートタイプは、最初に側面のランナー部分を切ってから、そのあとにゲートの二度切りをした方が良いと思うから、計三度切りになるから、初めての人はちょっと面倒くさいと思うかも……」
そう付け加える。
「あのぉ、部長! 質問です! それじゃ、このあとのヤスリ掛けはしなくてもいいんですか」
そう聞いたのは、環季だ。
「いや。気になれば、しても構いませんが。環ちゃんのメカニカルコアメッキのパーツは、逆にヤスリ掛けはしない方がいいかも」
そう言った。
「やらなくてもいいんだ……」
環季は、少し残念そうに言う。
「あっ、でも環ちゃん。やらない方がいいのは、メカニカルコアメッキのパーツだけだから。他のパーツはしないと」
そう、フォローを入れる。
「わかりました、部長!」
環季は、そう元気に返した。
「では、部長。あらためて、アルティメットニッパーの使い方を教えてください」
そう真唯が言う。
「あっ。そうだね。それじゃーみんな。ちょっと近くまで来てもらってもいいかな」
そう言って悠希は、みんなを呼ぶ。
悠希は、先細の薄刃ニッパー切り取ったパーツを、アルティメットニッパーで切る実演をしてみせる。
「最初に大事なのは、刃の付いていない、まな板側をパーツの側面に、刃と水平にしっかりと合わせること。そのあとは、まな板を固定して刃の方のグリップを握ればきれいに切れるから」
そう言って、残していたゲートを切った断面を見せる。
その断面は、切った痕が白くなる、いわゆる白化せずにきれいな状態だ。
このゲートを切った痕が白化しないというのは、通常の両刃のニッパーの切り口は、どうしても両方の刃が斜めに入って、ゲートを挟み込んで切っているので、その切り口が白くなってしまうことがあるのだ。
アルティメットニッパーのような片刃ニッパーは、刃が水平に入るので、基本的にそれがない。
但し、アルティメットニッパーのような片刃の薄刃ニッパーは3ミリ以上のモノや、硬いモノを切ってたりはしない方がいい。
それに刃が薄いので、床に落としたりすると、その刃が欠けたりもするし、パーツを切ろうとして無理にこじったりしても、刃が欠けたりすることがある。
実際に悠希も、過去に二回、片刃ニッパーの刃を折っている。
「なるほどぉーー。それでさっき、そのことを教えたくって、環季さんを止めたんですね」
そう真唯が言った。




