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女子プラモ部  作者: 志村けんじ


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52/59

アルティメットニッパー

♢


 悠希が「普通のニッパー」と言ったのは、「プラモデル用の先細の薄刃ニッパー」のことだ。


 悠希は、タミヤの「ゲートカット用の先細薄刃ニッパー」を愛用している


 詳しいことは聞いていないが、悠希があのとき三人と一緒にいなかったときに、すべて遥香に教えられて、この類《たぐい》の工具などを揃えていたのだろう。


 しかし、1万ドルを日本円で持ってきた真唯《マイ》と、社会人一年目の環季。


 舞花《まいか》は、特にアルバイトなどはしていないそうなので、このお金も貯金や小遣いではなく、親が出してくれたそうなのだが……。おそらくそれは、父親が出してくれたのだろう。


 いつの時代も、かわいい娘には、父親は甘いものである。


「では……」

 環季がそう言う。


「あっ!? 待って、環ちゃん!」

 悠希が、環季を止める。


「えっ!? えぇーーっ、ナニ!? 何か問題でも!?」

 環季は動揺して、悠希を見る。


「いや……。メカニカルコアメッキのパーツは、ちょっと硬いみたいなんで、切るときには、ちょっと気をつけて……ね」

 そう言った。


「あぁーー。なるほどー。了解です。部長」

 そう返した。


「確かにYouTube《ユーチューブ》でも、そんなこと言ってたな……」

 環季は、そう呟く。


 やはり、みんなそれなりに前もって調べてきているようだ。


「あぁーー!? あと、そのメカニカルコアメッキのパーツと、舞花《まいか》ちゃんのガンダムの外装パーツは、アンダーゲートタイプだから、そんなにゲートの痕が残らないから安心して」

 そう言った。


「あの。そのアンダーゲートタイプを詳しく教えてもらっていいですか」

 そう言ったのは、舞花《まいか》だった。


 舞花《まいか》の、極度の人見知りの英語キャラは、いつの間にか消えている。


 まだ常にではないが、こうしてハッキリと日本語で話してくれることもある。


「あっ……。はい。そのアンダーゲートタイプというのは、パーツの側面に、ランナーとパーツを繋いでいるゲートがあるのではなく、目立たないパーツの裏側の合わせ目部分にゲートがあるモノのことです。それなので、当然パーツの外側にゲート痕が残りません」

 そうかしこまって、悠希は説明する。


「なるほどー」

 舞花《まいか》は、そう言って納得する。


「あと、もう一つ。アンダーゲートタイプは、最初に側面のランナー部分を切ってから、そのあとにゲートの二度切りをした方が良いと思うから、計三度切りになるから、初めての人はちょっと面倒くさいと思うかも……」

 そう付け加える。


「あのぉ、部長! 質問です! それじゃ、このあとのヤスリ掛けはしなくてもいいんですか」

 そう聞いたのは、環季だ。


「いや。気になれば、しても構いませんが。環ちゃんのメカニカルコアメッキのパーツは、逆にヤスリ掛けはしない方がいいかも」

 そう言った。


「やらなくてもいいんだ……」

 環季は、少し残念そうに言う。


「あっ、でも環ちゃん。やらない方がいいのは、メカニカルコアメッキのパーツだけだから。他のパーツはしないと」

 そう、フォローを入れる。


「わかりました、部長!」

 環季は、そう元気に返した。


「では、部長。あらためて、アルティメットニッパーの使い方を教えてください」

 そう真唯《マイ》が言う。


「あっ。そうだね。それじゃーみんな。ちょっと近くまで来てもらってもいいかな」

 そう言って悠希は、みんなを呼ぶ。


 悠希は、先細の薄刃ニッパー切り取ったパーツを、アルティメットニッパーで切る実演をしてみせる。


「最初に大事なのは、刃の付いていない、まな板側をパーツの側面に、刃と水平にしっかりと合わせること。そのあとは、まな板を固定して刃の方のグリップを握ればきれいに切れるから」

 そう言って、残していたゲートを切った断面を見せる。


 その断面は、切った痕が白くなる、いわゆる白化せずにきれいな状態だ。


 このゲートを切った痕が白化しないというのは、通常の両刃のニッパーの切り口は、どうしても両方の刃が斜めに入って、ゲートを挟み込んで切っているので、その切り口が白くなってしまうことがあるのだ。


 アルティメットニッパーのような片刃ニッパーは、刃が水平に入るので、基本的にそれがない。


 但し、アルティメットニッパーのような片刃の薄刃ニッパーは3ミリ以上のモノや、硬いモノを切ってたりはしない方がいい。


 それに刃が薄いので、床に落としたりすると、その刃が欠けたりもするし、パーツを切ろうとして無理にこじったりしても、刃が欠けたりすることがある。


 実際に悠希も、過去に二回、片刃ニッパーの刃を折っている。


「なるほどぉーー。それでさっき、そのことを教えたくって、環季さんを止めたんですね」

 そう真唯《マイ》が言った。


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