作戦成功です
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この様子を、少し離れた席で、悠希と環季と舞花の三人は見ていた。もちろん、飯田にはすぐにバレないように、三人とも地味な格好をして変装している。
「突然の話で、娘が心配だったので、代理人の八神さんにも来ていただきました」
絢子さんは、そう神妙な面持ちで言った。中々の演技派だ。
「それで、契約の話なんですけど」
松下さんは、そう言って全部英文の契約書をテーブルの上に置く。
「こちらの内容を確認して、サインをいただけますか」
そう言った。
「こちらは……?」
この予想外の状況が理解できず、飯田が聞く。
「契約書ですが、何か?」
冷静に松下さんが返す。
「いえ……。確認させていただきます」
そう言って、飯田はその契約書に目を通すが、英語など、そもそも読めるわけがない。
唯一、わかったところがあったので、そこを聞く。
「あの……。ここの4×100,000$というのは?」
「一人、10万ドルでの契約ということですが、それが何か?」
松下さんは、冷静に答える。
「いや……。一人10万ドルというのは、さすがに……」
10万ドルというのは、現在のレートで計算すれば、日本円で約1500万円ぐらいだ。
「アメリカでは、これが相場ですが」
そう、松下さんが答える。
「そうよね。それぐらい頂かないと、割に合わないわよね」
絢子さんも、そう言う。
「えーーっ、ダメなんですかぁーー。せっかく契約してもいいと思ったのに」
そう、飯田の隣で、真唯が残念そうに言う。
「あの……。スミマセン。社の方に戻って、一度検討させていただきますので、今日のところは持ち帰らせてください」
そう言って、飯田はまだ熱いコーヒーを一気に飲み込む。
「熱ぃ!?」
当然というか、飯田は口の中を火傷してしまったようだ。
「で……では、失礼させていただきます」
そう言って飯田は、テーブルに置かれた契約書を持たずに、慌てて帰っていった。
ずっと、笑いを堪えていた三人は、その飯田の様子を見て吹き出す。
「いやぁーー。最高でしたねぇーー。あの飯田って人の様子」
真唯が言った。
「まったく。希実のあの迫真の演技見てて、笑いそうになっちゃったわよ」
「いえいえ。そんな絢子さんの演技も、中々でしたよ」
「二人とも。満更でもなかったです」
そこに別のテーブル席にいた三人もやってくる。
「どうもどうも、みなさんお疲れ様でした」
そう、環季が言った。
「凄く、面白かったです」
悠希が言う。
「舞花はどうだった?」
真唯が聞く。
「スッゴイ、最高ーだっだ!」
舞花が声に出して言った。
「なら、今回のこのことは、最高ーだったということで」
そう言って、真唯が締める。
そのあと、飯田の方から何かしらの連絡がくることはなかった。




