途中経過
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「どぉ? プラモデルの進み具合は?」
会社に行くと、毎日のように、松下さんにプラモデルの進捗状況を聞かれる。
「まぁ。それなりに形になってきたところです」
ようやく、コツを掴んできたところだ。
「順調なんだ?」
「いまのところは、なんとか」
取りあえず、組み立て自体は、問題ない。
「そう。良かった。ほら。あたしが嗾けたところもあったしね」
松下さんのこの言葉を聞いて、悠希は「やっぱり嗾けてたんだ」と思った。
「ところで、木村部長とはどういうご関係なんですか? 知り合いみたいだったようですけど」
最初のときに、ちょっと気になっていたことを聞いた。
「あぁ。絢子さんは、あたしの母親」
と、衝撃的な言葉が飛び出す。
「嘘!? ホントですか!?」
当然ながら、松下さんを凝視してしまうほど驚く。
「噓よ。そんなわけないでしょー。あたしの母親は、あんなにキレイじゃないわ。ただの普通のおばさん」
と、あっさりと噓を撤回する。
「もぉーー!? やめてくださいよぉーー!?」
またすぐに、松下さんに騙されてしまった。
「だってそうなると、絢子さんのお祖父さん、イコール、あたしの曾お祖父さんってことになるでしょ。無いない。そんな話」
「もぉー。松下さんが言ったんじゃないですかぁーー」
「でも、この会社では、あたしの母親のような存在。最初の、直属の上司でもあるしね」
「松下さんて、元は営業職だったんですか?」
「いいえ。最初から事務職。ほら、営業事務ってあるでしょ。営業の人のアシスタント的な。それ」
「へぇーー。そうだったんですねぇーー」
松下さんの、こういう高いコミュニケーション能力は、そのときに身につけたものなのかもと思った。
「あたしは高卒入社だから、この会社ではもう10年以上になるのよ」
これは、初めて知った。
「でも、3年目のとき、ある大きなミスをしちゃってね。会社に大きな迷惑を掛けちゃって。それを庇ってくれたのが、絢子さん」
人には、やっぱりいろいろとあるんだなと悠希は思った。
但し。この話は、これ以上は聞かないことにした。余計なことは、詮索しないことが一番だ。そういうことにしておく。
期限まで、あと一週間。それでも、それよりも前に仕上げたいと思っている。
次の土日休みが、ヤマだ。
そこまでなんとか、「完成」させたい。
逸る気持ちを抑えながら、慎重に作業を進めていく。
上下の翼の下部と胴体と。あとフロートというのだろうか。水面に浮くための浮のところは、筆塗りで少しくすんだシルバー色に塗り分ける。
そのあと、そこをエアブラシで白色を、前から後ろの方に流れるように少しパラ吹きした。
こういう塗装の仕方は、これまで一度もしたことがない。別の動画を参考にしたわけでもない、悠希の完全な思いつきによるオリジナルだ。
だから、「必ず上手くいく」という保証はなかった。




