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女子プラモ部  作者: 志村けんじ


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22/23

急募の理由


 その日は松下さんから、そのことに関する新しい情報は聞けず。また数日が経った。


 悠希も、ただの冗談話だったと思っていたとき。あのときの話の出処がわかった。


 マーケティング部の木村絢子きむらじゅんこさんという方が、複葉機のプラモデルを作ってくれる人を探しているというのだ。


 ただ、これは仕事ではなく、個人的な頼みのようなのだ。


「なんでです?」

 だからこそ、そこは聞いてみた。


「さぁ? そこまでは聞いてない」

 松下さんは、その大事なところが抜け落ちていることは、あっけらかんと応える。


「そんなに気になるんなら、自分で聞いてみれば?」

 そんな悠希のプラモデルに対する興味心を、松下さんはくすぐった。


 これは絶対に、松下さんは確信犯だと、悠希は思った。


 正直言って、複葉機はおろか、飛行機のプラモデルは作ったことがないし、その作り方も知らない。


 それは飛行機 = ラジコンのイメージが強いからだ。


 飛行機は難しい。そして、もしも飛行機にハマったりして、そこからラジコンの世界に行ったりしたら、それこそお金が掛かり過ぎて破産する。そんな妄想的な不安が悠希にはあった。


 そんな悠希の前に、木村絢子きむらじゅんこさんから現れる。


 その前に聞いた話では、木村さんは、松下さんより20歳上の人で。それよりも驚いたのは、マーケティング部の部長が、この木村さんだったからだ。


「小日向さんて、どなたかしら」

 颯爽さっそうと現れた木村さんは、開口一番に悠希を名指しする。


「えっ!? はい。あたしです」

 いきなり自分の名前を言われて、悠希は慌てて立ち上がる。


「ごめんなさい。ちょっといいかしら」

 そう。優しい口調で声を掛けられる。


「あっ。はい」

 どうしていいかわからないまま、悠希は返事をする。


「ここではなんなので、ちょっと部屋の外で」


 そう木村さんに言われて、総務部の部屋の外に連れ出された。


「ごめんなさい。私も時間がないので、手短に話すわね」


「はい」


「お願い! あなたに複葉機のプラモデルを作ってもらえないかしら」

 そう言って木村さんは、悠希に深々と頭を下げた。


「いや。そんな。頭を上げてください。それで、理由は?」


「理由は、今は介護施設のベッドで寝たきりになっている祖父に、安心して天国に行ってほしいからよ」


「失礼ですが、そんなにお身体がお悪いんですか?」

 これが失礼なこととわかってはいても、悠希はあえてそのことを聞いた。


「私の年齢トシの祖父だからね。今年で、もう100歳よ」


「でも、単にプラモデルを作るのであれば、別にあたしでなくてもかまわないと思うのですが……」

 それは悠希が聞いた、核心だった。


「それは……。本当に、大空を飛んでいるように作ってほしいのよ」

 木村さんは、それが心からの願いであるかのようように言った。


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