プラモデルは一緒
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この木村さんのお願いは、本当に切羽詰まった切実なことなのだろう。それは悠希にもわかった。
「いや……それは……」
悠希は、迷った。複葉機はおろか、飛行機のプラモデルさえ作ったことがない。
その木村さんの求めるようなモノを、仕上げられるだろうか。
「いや……あたし……。実は、飛行機のプラモデルを作ったことがありませんで……」
と、正直に答える。
「いいじゃない。作ってあげれば。車が飛行機になっただけじゃない」
そう言ったのは、松下さんだ。
「お疲れ様です。絢子さん。相変わらず、忙しそうで」
松下さんは、そう気軽に木村さんに話し掛ける。
「あら、あなたも、お元気そうね」
この口ぶりだと、この二人は、それなりの関係のようだが、二人の距離感がわからず、なんだか怖い。
「あのぉーー」
悠希は、恐るおそる、二人に割って入る。
「あっ、ごめんごめん。だから、飛行機のプラモデルぐらい、ちゃちゃっと作ってあげなさいよ。同じプラモデルでしょ」
松下さんは、そんな簡単なこととばかりに、はっきりとそう言い切る。
「いや……。そうは言われましても……」
そんな風に言われても、やっぱり自信がない。
「なにぃ。あなたのプラモデルに対する情熱って、そんなもんだったの」
松下さんはそう言って、悠希を嗾けた。
そんなことを言われてしまうと、返事に困る。
それなので、一日だけ、返事の時間をもらった。
悠希はその時間を使い、頼まれた「ハセガワ 1/48 日本海軍 三菱 F1M2 零式水上観測機 11型 プラモデル」の製作動画がないのか調べてみる。
その動画は、「零式水上観測機 プラモデル」の検索ワードで、意外とあっさりと見つかった。
すぐに、その動画を見てみる。
最初に思ったのは、想像していたよりも、パーツが細かい。そしてスナップフィットではないので、組み立てには接着後が必要だ。
色分けされたパーツは無く、たぶん全部塗装が必要だ。
最初に操縦席と後ろの席のところを組み立てて、そのあと操縦席と胴体の内側を明るい緑色でエアブラシで塗っている。
このあと最初に組み立てたパーツも、普通の文房具のクリップで挟んで、同じ明るい緑色を塗っていた。
悠希はてっきり、そこは濃い深緑で塗装すると思っていたので、これは意外だった。
ただ使っていた接着剤は、悠希がガンプラの合わせ目消しにも使っている、タミヤの速乾性の流し込みタイプのセメント接着剤で、これを見ると、なんだか同じプラモデルなんだなと、妙に親近感が湧く。
「うーーん。やっぱり、プラモデルはみんな一緒かぁー」
と、悠希はちょっとだけ安心した。




