事前準備は、バッチリOK!
♢
ランナーからパーツを切り出していく際は、パーツが付いているゲートと、そのパーツの境目ギリギリを切るのではなく、ゲートの細いところを少し残して切ったあとに、もう一度きれいに切り取って処理する。
いわゆる、「二度切り」というやつだ。
手間かもしれないが、こうやった方が上手くきれいにできるので最適だ。
「ほうほう。なるほどー」
こんな初歩的なことでも、初めてプラモデル作りをする、超初心者の環季は 感心する。
「それで、組み立てるときには、合わせ目消しっていうのをするんだよね?」
超初心者のはずの環季から、思わぬワードが飛び出した。
「えっ!? えーーーっ!? なんで知ってるの!?」
環季は、悠希が知っている性格上、好きなものには熱心だが、どちらかというと直感というか、行き当たりばったりなところがある。
だから、このことは驚くべき意外なことだったのだ。
「し・か・もーーー。これも悠希ちゃんに内緒で、買ってきちゃいましたーー!」
そう言って環季は、持ってきた別の「コトブキ堂の白いビニール袋」から、ガイアノーツ(M-7シリーズ)の瞬間カラーパテ1種類とアルテコ・スプレープライマー(瞬間接着剤用硬化促進剤)を取り出す。
瞬間カラーパテの色の種類は、肌色系のフレッシュだ。
「調べたんだ……」
こうなってくると、単なる「素組」とは、話しが違ってくる。
「当然! ねっ。イイでしょーー、イイでしょー」
これで、準備万端とばかりに、環季は誇らしげだ。
「そう……だね」
悠希は迷った。
瞬間カラーパテ自体は、もちろん知っている。しかし、使ったことはほとんどない。
それは、いつも塗装することを前提に、プラモデルを組んでいるからだ。
この環季の「プラモ作り」への気合いがどこまで続くのかはわからないが、いまのところ環季が本気なのはわかった。
「それじゃーー、続き、続き~!」
環季は興奮して、もうノリノリだ。
「環ちゃん。初めてだから、ちゃんと説明書見て作ろうね」
悠希はそう言って、環季に念を押す。
「はい。先生! 大丈夫です!」
「一旦。落ち着こう」
悠希はそう言って、環季に冷静さを促す。
細かい作業のプラモデル作りには、逸る気持ちを抑えながらの冷静さも必要だ。
「えぇーーっ!? なんでぇーー!? せっかく気分が盛り上がってたのにぃーー」
悠希にそう言われて、環季は不満を口にする。
「でも、このままやってたら、遥香さんに教えてもらえないかもよ」
そう言って、環季の気持ちを落ち着かせようと促す。
「えっ!? それは、絶対にイヤ!」
「ね。だから」
「わかりました。先生! またよろしくお願いします」
そう言って環季は、少し落ち着いた顔を見せた。




