Vワールド
右側のスクリーンから目を離し、辺りを見回す。
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金髪の綺麗な髪を触る、エルフの女性。
自分の牙を弄る、赤い瞳の吸血鬼。
肉球の感触を確かめる、幼い猫獣人。
自分のマントを翻す、魔導書を持った青年。
手首を360度回転させる、人型アンドロイド。
座席にかがみ、スカートをまくって、下着の色を確認する船乗りの女性……
本当に、いろんなキャラクターがいた。というか、何やってんだ、あの人。
僕は黒い革手袋を嵌め直し、銀色のネックレスを見つめた。憧れの姿になれたという昂りと、キャラが定まらなかった苦い過去が交錯し、複雑な感情になる。
【壮観ですな〜】【自分もモブとして参加したいンゴねぇ】【流石に多すぎw】【全員VTuberマ?】
「……というか、流石にコメント邪魔だなー。」
左側のモニターを埋め尽くしていたコメントが消え、再びサラリーマン山田の姿が現れた。
「分かってくれたかな?総勢一万名の、VTuberの皆さん。さて、説明を続けよう。」
一万?そんなにいたのか。この状況についていくのに精一杯な僕を、その男は待ってくれない。
「Vワールドには五つの大陸があり、
それぞれキャラクターの設定に応じた大陸で生活してもらう。
ファンタジー世界の大陸。
近未来の大陸。
魔王が支配する悪の大陸。
現実世界がモチーフの大陸。
残り一つは、神の大陸。」
右側のモニターは、Vワールドの地図に戻っていた。
「…はぁ…良かった。」
隣の制服の女の子が、ほっと胸を撫で下ろした。現実世界の大陸があるなら、自分はそこで平和な生活ができるだろうと…だけど。
「現実世界って言っても、普通の生活ができるわけではない。ある地区では、魔法少女が警察の役割を担う…なんてこともある。」
「……しょぼん」
え、何その反応可愛い。
「君達一万名は、それぞれ個人チャンネルを持っていて、視聴者には各チャンネル十個まで登録できる権利が与えられる。そして、ライブ配信は五窓まで。」
視聴者一千万人、一人一人が十個のチャンネル登録権利があって、VTuber一万人の中から選ぶ。……その十個はきっと…人気VTuberに取られてしまう。
「君達はそこでの生活、キャラクター性、エンタメ性…様々な要素で視聴者を勝ち取る必要がある。勝ち取れなければ……この先は、君達と共に過ごす存在に聞いてくれ。」
VTuberバトルロイヤル…さっき、ジェーミニが言っていた…
「……うん。すでに表情だけでもキャラクター性が滲み出ている……最後に、一つだけアドバイスだ。」
アドバイス?こんなイカレた奴のアドバイスなんて、誰が聞くか!
「君達は、視聴者やSNS…常に、周りの視線に晒される存在だった。時にはその視線に怯え、恐怖し、自分を上手く表現できない事もあっただろう。」
「あまつさえ、キャラクターを”演じきった”が為に、炎上”させられた”者もいた…」
悪魔や魔王といった悪の存在は、視聴者層外の人達には、悲しいけど…受け入れられにくい。
「だが!このVワールドでは、そんなことを気にする必要は満に一つも無い!自分がなりたい存在!やりたいエンタメ!君達の夢が!ここでは叶う!」
「……是非。キャラクターに目を輝かせていた頃の自分に成って、君達の発想力や創造力を、私達に魅せてくれ。」
キャラクターに…目を…。
くたびれた姿のその男が…
ふざけた態度をとっていたその男が…
VTuberを見下していたその男が。
目を輝かせて放ったその言葉は、とても真っ直ぐだった。




