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日本エンタメ協会

(……言っていることはめちゃくちゃだ。)


僕達は見てくれる人がいないと、結局のところ、ダメなのだから。


(……でも。)



「それでは、Vワールドに、君達を転送する準備をするから、もう少し、その場で待機していてくれ。」


シュッ…


すると、スクリーンは真っ暗になり、スポットライトのような明かりは次第に光量が下がり、普通の照明になった。


「……待機って言われても…。」


僕達はこれから、そのVワールドで生活するということ以外は……そうだ!


「へいジェーミニ。VTuberバトルロイヤルについての、詳細を教えて!」


『「 かしこまりました それでは 説明を始めます 」』


頭の中で、無機質な女性の声が響いた。

というか、声に出して話さないといけないのか。

もっと…こう、頭の中だけで会話できるとかさー!


周りから見たら独り言を言っているみたいで、少し恥ずかしい。


『「 VTuberバトルロイヤルとは 一言で申し上げると VTuberによる “戦国時代” でございます あなた様は 配信や 動画投稿によって 再生数や チャンネル登録者を増やすのが 当面の目標になります 」


戦国時代…なんか、殺伐としているイメージしかないなぁ。


『「 その数字は あなた様の ステータス スキル パッシブ 武器 防具 アイテム 等 様々な能力に 変換できます 」』


なんか…面白そうだな。ハクスラとか、ローグライクみたいな感じなのかな?まぁ、敵を倒したらレベルアップとか、そう単純では無いだろうけど…。


『「 しかし 炎上やキャラ崩壊 もちろん 数字が下がるだけで 即座に弱体化 してしまいます 」』


「な、なるほど…。」


つまり、視聴者が増えて喜んだりしたら、キャラ崩壊と見なされて弱体化…なんてことも起こりうるのか。


『「 この戦いに敗れると あなた様のキャラクターは消失 VTuberとしての活動が “二度と” 出来なくなります 」』


二度と…。もう辞めようと思っていたけど、その言葉を聞くと、胸が締め付けられる。


『「 勝ち残ることができれば トップVTuberとしての 名誉と 賞金”一千億円”が 与えられます 」』


一千億円?!そんな多額な賞金、eスポーツの舞台でも聞いたことがないぞ?!


「な、なぁジェーミニ。今更なんだけど、こんな大掛かりな事…一体、誰が仕組んだんだ?」


『「 私からは “日本エンタメ協会”  とだけ お伝え差し上げます 」』


日本エンタメ協会…

名前くらいは聞いたことがある。

アニメ、スポーツ、音楽、動画投稿…日本の様々な娯楽を裏で管理している組織。

一体、何が目的なんだ。


◇◇◇


「……うん。私も…ひーくんと…一緒だから…辛くないよ…」


ジェーミニにいろいろ聞いていると、左隣に座る、隣の制服の女の子も、例のVBRブイチューバー・バトル・ロイヤルについて、話し合ってるのが聞こえた。


「なるほどな、チエ。要は、弱いやつからぶっ倒して、数字を根こそぎ奪っちまえばいいんだな?」


右隣の剣を立て掛けた男も、VBRについて話し合っている。何やら物騒な言葉が聞こえてきたけど、まぁ聞かなかったことにしよう。


(というか、パートナーがAIなのは、僕だけなのか?)


周りから聞こえるのは、頭の中の存在と親しげに話す声…あれか?数字を持っていると、大切な人と通話を繋げるみたいな。まぁ、僕が大切な人なんて、両親と……


「あの!あのあの!私、ずっと前からファンでした!…握手…とか…して、くれませんか?」


突然、背後から一際大きな声が聞こえ、

振り向くと、僕の三つ後ろの列で、

羊がモチーフであろう女性キャラクターが、顔を赤くして、

左眼に眼帯をした、うさぎの人形を持つ、

金髪の少女に話しかけていた…あのキャラクターは。


「ありがとう…。だけど、あまり大きな声は出さないでちょうだい。正直…迷惑…だから。」


チャンネル登録者数150万人越えVTuber”アイリス・ワンダ”。活動歴が長く、所謂古参勢でありながら、未だ人気は衰えることはなく、人気を維持し続けている、


「…すみません。でも…私、誕生日グッズとかも毎年…全種類買っていて…好き…なんです。それだけ、伝えたくて。」


迷惑…と言われてなお、彼女の小さな手を握り、少しだけ涙目になる羊の女性。


「…もう。何泣いてるのよ。貴方だってVTuber…でしょ?泣いていいのは、良いストーリーを見た時と、ライブやイベント…ファンに恩返しする時だけ。」


そう言うと、もう片方の手で彼女の手を優しく包んだ。

彼女が人気な理由が少し分かった気がした。



バン!


照明が消え、辺りは再び真っ暗になった。

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