シアター
「何が起こってるんだ?」
突如現れた、自身をVTuberと名乗る謎のサラリーマンや、巨大なスクリーンを埋め尽くす文字。そもそも、こんなでかい映画館自体がおかしいんだけど……さっきから、驚いてばかりだ。
「だからね、君たちにはこれから…自分が作ったキャラクターの個性や、キャラクター性を育てるための…修行をしてもらう。」
視聴者?が書いた文字によって、すっかり姿が見えなくなったサラリーマン山田が、気にすることなく話を続けた。
【楽しみだなー】【山田!早く始めろー!】
【ちょwコメント多すぎw】【覇権コンテンツktkr】
「………それは、僕たちの自我を無くす行為に他ならないが、あなたは、そんなことを望んでいるのか?」
コメントを脳内で再生し、頭が痛くなってたその時、遠くから聞こえたその声は、驚くほど鮮明に、はっきりと聞き取ることができた。
「もー。説明の途中なのにー。VTuberなら分かるよね?今は、空気を読んで、僕の説明を聞く時間!」
度々口調が変わるのは何なんだ?まぁ、僕も他の人のことは言えないけど。
「修行……この部分の詳しい説明をしよう。君たちはこれから、自身が作成したキャラクターで、生活してもらう。」
キャラクターで…生活?
「あぁ…勿論、僕みたいな普通の生活じゃない。」
すると、巨大なスクリーンが分割され、左にさっきまでの画面、そしてまた一つの画面は、大陸が五つほど書かれた地図。
「君たちは、この仮想世界。”Vワールド”の住人として、生活を営んでもらう。ここでの生活は、この視聴者たち、”一千万人”によって視聴される。」
【うぉー!】【やっと見れるー!】【推しの真の姿…wktk】【あの子可愛い!】【呆然としてて草】
—
「…ちょっと待たんかい!突然すぎるやろ!」
「そーよ!そもそも、そんなこと了承してないし!」
「僕たちは、キャラクターそのものになりたいわけじゃない!」
「さっさと、元の生活に戻しやがれ!」
その説明を聞き、空気を読むなんてこと、出来るはずもなく、巨大な映画館では、口々に抗議の声が上がった。
「あははっ!抗議の仕方まで、まるで個性がない…。でもね、もうすでに、君たちに拒否権はないんだよ!」
パチッ—パチッ—
その時、上部に設置された照明器具が、一つ、また一つ。次々に点灯し、その場にいる僕たちを一人一人、スポットライトのように照らした。
「君たちは、自分の身に何が起こっているのか、よくわかってないと見た。」
すると、地図が映されていた画面が切り替わり…
そこには、そのスクリーンを見ている、僕達の姿。
—
ヒラヒラしたスカートを履いた、魔法少女。
大きな二つのツノが目立つ、悪魔。
すっごく胸がでかい、サキュバス。
全身が体毛で覆われた、獣人……
そして、赤髪の騎士。
……ここまではっきりと映されると、この現実を受け入れざるを得ない……
僕は…僕の見た目は……
シェパード・ラインハルト、本人になっていた。




