闇
(うっ……ここは……?)
気がつけば、辺り一面に闇が広がっていた。
手足を動かそうとするが、感覚がない。
人の体は電気信号で動いているというが、
僕の体にはその電気が通っていないと確信する。
(死んだのか……僕。)
僕の名前は崎島悠人。
年齢は二十三歳。
ニート歴一年。
新卒の会社を三ヶ月で退社し、
以降実家で引きこもり生活を続けている。
(……いつか、”あの人”みたいに…なりたかったな。)
僕の憧れのVTuberアルシェル・レグルス。
通称アルルは、
チャンネル登録者数200万人超え、
ライブ配信の同接も平均5万人を超える。
金髪碧眼の王子様。
声は少し高めで、落ち着いた雰囲気。
架空?の国、”アルシェン王国”で起こった話は
とてもリアリティがあり、視聴者を釘付けにした。
(……アルルさんに、僕は…救われたんだ。)
会社を退社した数週間の間、
スマホのショート動画で一日が終わるといった
無気力な生活を続けていた。
ある日、Youtubeのおすすめ欄に、
彼のライブ配信があり、暇つぶしのつもりで視聴した。
すると、
灰色だった僕の世界が豊かな虹色になり、
こんな世界があるのかと、
感動したのを今でも覚えている。
[二十三歳、ニートです。
あなたのおかげで、生きる希望が芽生えました。
ありがとうございます。]
彼に対し、一つのチャットを送った。
読まれないだろうが、
自分が救われたことを素直に伝えたかった。
「…コメントありがとう。
私はただ、この世界の魅力を伝えているだけだよ。」
「………よ、読んでもらえた。……僕のコメント…アルルさんに…。」
孤独だった自分が、誰かと繋がった瞬間だった。
VTuberに興味を持った僕は、
三ヶ月働いた貯金を使い、
機材を整え、イラストの依頼を出した。
(……あの時は、楽しかったな…。)
キャラクターの設定を考え、
イラストをLIVE2Dで動かした時、
新しい自分に生まれ変わったような高揚感があった。ライブ配信をして数週間は、
熱量や勢いがあったからか、
平均同接二桁を維持していた。
(……でも、現実は…甘くなかった。)
配信して数ヶ月、次第にボロが出始めた。
キャラ設定の崩壊から始まり、
口調や言動も変化した。
一人、また一人と、
見てくれる人が少なくなっていった。
ついに同接が二人まで下がった頃には、
VTuberである意味を見出せなくなっていた。
—
(………アルル……さん……
最後、に…スーパー、チャット…
送り……た……か…………。)
彼の顔を思い浮かべることができない。
闇を闇だと認識できない。
…次第に意識が遠のいていった。




