第11話「パニエのヒーロー」
なぜ、マグマレッドがパニエを履いているのか。真っ先に聞きたかったが、怪物の粘液が飛んできて、飛び退いた。
「そうそう」
マグマレッドがパニエを揺らしながら言う。
「私の魔力は強くないから、時間稼ぎしかできないぞ」
「ええっ」
「ええっとはなんだ。ヒーローに怪物が倒せるわけないだろう」
それはそうだけど、一緒に戦おうと言われたからマグマレッドもなにか強い技を持っているのかと思ってしまっていた。私がやらなきゃ。
私は怪物から距離を取ってから、背中のリュックを下ろした。
なにか武器になるもの。そして、今日の服にも合うものがいい。
それにしてもどうして飛べなくなってしまったんだろう。最初に異変を感じたのは、背中の編み上げを解いた時だった。
その時、すとんと肩紐が落ちた。
編上げを解いたから背中が全開になっていた。なんてはしたない格好なんだろう。これじゃ可愛くない!
辺りを見渡す。遠くの方でマグマレッドが怪物と戦っている。他に人はいなさそうだ。
私は服を脱いでシャツとパニエ姿になると、リュックに入れていたワンピースから編上げを抜いた。黒いワンピースだったから黒いリボンだ。でも、アクセントになりそうだ。
私はピンクのワンピースにそのリボンを丁寧に編み込んでいった。背中に黒が来るなら前にも黒があった方が可愛いかもしれない。編み終わった時にそう感じ、リュックから黒いリボンのクリップを取り出すと肩紐のところにつけた。
うん、可愛い。
ワンピースを被る。背中を締めすぎていて、少し緩めたりもしたが、綺麗に着ることが出来た。全身が見たいが、こんな森の中に姿見がある訳がない。でも、可愛い自信があった。
魔法少女の魔法について。私はさっきまで、身につけた可愛いものを武器にしていた。でも、それだとためだ。失ったときに可愛くなくなってしまう。
アステリアのように、可愛いモチーフで戦わなくては、長続きしない。
「おい、まだか。そろそろ限界だぞ」
マグマレッドの声が聞こえた。私はリュックを背負って木に登ると、怪物を眺めた。スカートが揺れる。怪物が私の姿に気がついて粘液を飛ばしてきた。
「フリルガード」
目の前に透明の壁ができて、粘液がぶつかった。やった! 魔法が使えた。
しかし、喜んではいられない。攻撃しないと怪物は倒せないのだ。どうやって攻撃しようか。
さっき、リボンブレードで動きは多少は止めることは出来ていたが、リボンボムはあまり効いていなかった。マグマレッドのパンチは効いていた。もしかして物理攻撃に近い方がこの怪物には効くのかもしれない。
「フリルパンチ」
私は怪物に向かって水面に飛び込むように飛び降りた。怪物の悲鳴が響いている。攻撃は効いていそうだ。地面に到着すると前転して体をひねり、怪物を見上げた。2等分された怪物が左右に倒れていく。倒しただろうか。
「まだ、気を抜くな!」
マグマレッドの声が聞こえた。
右の片割れが粘液を飛ばしてきた。飛んで避けると左の片割れから粘液が噴射される。交互の攻撃を避けながら私は高い木の上までのぼった。
怪物が2人に増えたようだった。しかし、大きさは先程よりも小さくなっているようだ。攻撃の威力も弱まっているように思える。
「フリルパンチは効果あり、と」
ならあとは持久戦だ。私はリュックから黒いお袖留めを取り出すと腕にはめた。手首でフリルが揺れて力が湧いてくる。
「フリル袖パンチ100連発」
私は力の限り怪物を殴った。殴る度に怪物が小さく増えていく。両手の平サイズになった怪物を殴ると、パンと大きな音がして怪物が消えた。終わりが見えた!
「殴るのなら私も手伝おう」
マグマレッドも手伝ってくれたが、なかなか怪物の数が減らない。刻一刻と時間だけが過ぎていく。半分ぐらいは削っただろうか。太陽がしずみかけている。今何時だろう。間に合う気がしない。
「学校に行きたいんだろう」
マグマレッドが声を掛けてきた。私は怪物を弾けさせながら頷いた。あれ、なんで知ってるんだろう。
「私にいい考えがある」
マグマレッドが耳打ちする。確かにその方法なら間に合うかもしれない。
マグマレッドのパニエが風になびく。私はマグマレッドの案に乗っかることにした。




