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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
四の巻
92/153

特訓

 居残った私に、案の定稽古が待っていた。

もはや過保護を隠そうともしない実道様と千隼様が

後学のためという名目で、清志郎様の後ろに座りだす。

……二人とも……、ありがたいけど、後から復習しようって言わないよね……?


そして、実道様と同じ笑顔の朔太郎様が、スッと立ち上がった。

あ、これ、本当に実道様と同じだ。私に良かれと思って下さっている。

そうじゃなかったら、こんな厳しい稽古に耐えられないよ……。


朔太郎様は、木刀を実道様から受け取ると、

私の前にやってきて、同じように正座した。


「雫様、間者とは、どういった仕事だと思いますか?」

「私の元の世界でのことですか……?」

「ええ、雫様の印象を現実と合わせる必要があるかと思うのです」

「……、元の世界では間者は、秘密の任務を背負うことが

多くあったと思います。決して表舞台には出ませんでした。

私たちは、時代や地方によって色々な呼び名がありましたが

総称として忍者と呼びます。また(しの)びと呼びます。

領主などに支えていて、諜報活動、破壊活動、浸透戦術、

暗殺を請け負っていたとされています。上忍、中忍、下忍と

身分も分かれていました。それぞれに違った役割があります。

ですから、実行部隊は下忍だと考えられています」

「雫様の世界での間者は、なぜ表舞台に出なかったのですか?」

「まず、背景として国内での争いが多い時代がありました。

情報収集戦とゲリラ戦……、ええと、どんな手を使ってでも勝つ戦い方から

生まれ出た集団ということがあります。当時の領主達が、自分の勢力を保つために

彼らを使ったのです。荒くれ者のような戦い方を間者としての訓練法に入れていきました。

ですから、剣士、私たちは武士と呼びますが、彼らの戦い方の美学とは違います。

また、領主も隠密に動く人達が必要でした。その位、なりふり構わず

国が荒れていた時代があったのです」

「なるほど、よく分かりました。我ら間者は、同じような仕事内容ですが、

暗殺は致しません。それは影向(やうがう)様の意思に反するのです。

影向様は、あくまでも國を善良な心から生まれる約定で

治世を行って欲しいと考えていると伝わっております。

ですから、我らは、國主が治世を行うための地ならしをするのみ。

そこまでが我らの仕事です」

「でも間者としても、戦術は行うんですよね?」

「ええ、我らも身を守らなければなりません。

そして、顔を見られずに、捕縛しなければならない場面もございます」

「その戦術は、剣士とは違うものなのですか?」

「はい、まるで違います。基本的に我らは変装して別人物になっているか、

潜んでいるかなのです。ですから雫様達のような稽古をした後、

短剣などで別の稽古を致します」

「接近戦ということですか?」

「そうですね、相手が気がつかぬうちに制圧しなければなりません」


そこまで話が進むと、朔太郎様はふっと笑った。

「雫様、周りになんと言われようと我らの戦い方の方が

圧倒的に有利なのです。例えば剣士が相手の場合、

彼らは、我らの気配に気がつく必要があります。

飛んできた武器を払う必要があり、

変な体勢から長い刀を抜かなければなりません。

雫様は、國外の間者に狙われる可能性もあります」

「私を?! え? なぜですか?なんの利点もないと思うのですが……」

「先日の大祭で、我が國に異変が起こることが伝えられました。

すぐにではないにしろ、他国にも噂は広まりましょう。

至宝様がきてくださっていることも、合わせて広まります。

もし至宝様に痛手をおわすことができたら?

我が國を手にしようと思う他国が出てもおかしくはないのです」


とんでもない話に、私の背中に冷たいものが走った。

でも、……これが現実だ……。

だから皆が必死になって私を守ろうとしてくれているのだ。


「さあ、雫様。勇隼様が私を雫様につけたのも、影向様の御加護でしょう。

警らの無い日は、どうぞ私と稽古してください」

柔らかに告げる朔太郎様に、私は是非もなく答えた。


「朔太郎様、どうぞよろしくお願いします」

そういって、手をつきお願いしたのだった。

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