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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
四の巻
89/153

困惑

 目の前に現れた朔太郎様。薄い緑の癖っ毛で、 黄色い瞳。

商家の方らしく賑やかだけど、話し方はやんわりとしている方。

お歳は、確か橙矢様よりも上で、33歳っておっしゃていたはず。

その朔太郎様が、私と一緒に市中の見回り……?

千隼様と一緒にいくのかと思っていたのよ……。


朔太郎様は、スッと部屋の中へ入っていらっしゃった。

「雫様、お久しゅうございます」

「あっ……、こんにちは……。あの……?」

私は、3人の顔を順に見比べ、困り顔になってしまった。

まるで状況が飲み込めないし、想定もできない。


そんな私を見て、清志郎様が説明を始めてくれたの。

「雫、実は私と橙矢で説明するつもりだったのだが、

橙矢が多忙で、同席できなんだ。よく聞くように」

稽古の時のように、言葉もなく頷いた私に、清志郎様は驚くべき事を

一声を放ったのだ。


「朔太郎は、お前につけた間者なのだ」


……今、なんと……? 間者?

えっっっ、以前に聞いていた間者に対応する稽古って、

朔太郎様が相手?!?!?!えっっ、待ってまるで分からない……!!!


「雫、落ち着きなさい。間者に対する稽古はしたが、

あくまで敵方の間者に対するものだ。朔太郎は、お前の護衛だったのだよ」


ーーー師匠!!! そんな涼しい顔でアッサリと爆弾発言しないでください!!!

私に護衛がついていたの?!いつから?!

え?商人の格好で?! あ、間者なら変装するのか……。

いやっっ、そうじゃなくて!!!


その時、ふと実道様の顔が浮かんだ。

……そういえば、前に……。


私達は、お使いと称して街中を歩く練習をしていたの。

実道様は街の至る所に連れて行ってくれて、かなりの距離と時間をかけた。

警らとして配備されたら気をつける事、学問所には学問所の

商家には商家の、職人街には職人街の、色々な注意点や

みるべき場所を教えてくれたのだ。


そういえば……、その中の1日……。

どうにも奇妙で、私が背後を振り返った時だった。

「雫? どうかしましたか?」

「……ああ、いえ、誰かに見られているかと思ったんで……。

なんだか、気持ちが悪いんですよね……。

でも、影じゃないし……。鬼火も見当たりませんよね……?

おっかしいなぁ……」

「確かめに行きますか?」

「……いいえ、知り合いもいないし、きっと気のせいかもしれません。

殺気も感じないんですよね……。なんだろう……?」

「雫、気になるなら見に行っても良いですよ?」

「いえ、大丈夫です。私の勘違いかもしれないし……。

もう一度気になったら見にいくことにします」

そういった私を、実道様はジッと見ていた。

あれ?間違いだった……?そう思ったら、実道様は歩き出したのよ。

「雫、気になったら話しなさい」

「はい、わかりました」

そう答えたけれど、その時は実道様が影を気にしているんだと

思い込んでいたのよ……。

……もしかして……、嫌な予感……。


「清志郎様……、すみません、私、朔太郎様が護衛してくださってたことに

気がつけたかもしれないのに、見逃したかもしれません……」

おおぅ、久々の失敗……。ああ、顔があげられないくらい恥ずかしい……。

気配を感じたのに、気がつかなかったなんて!!!


たぶん真っ赤になっていたのだろう。勇隼様が助け舟を出してくれた。

「雫、我らは怒っているのではない。そもそもお前が気がつかぬのなら

それで良いと思っていたのだ。お前の世界に間者はおらぬと聞いておったしな」

「あの……、昔は居たんですけど、私たちの時代には、居なくて……。

……すみません、言い訳です……。あぁーー、実道様……、教えて欲しかった……。

……でも、教えてもらって気がついたら、剣士の名折れですよね……。

やっぱり……、すみませんでした……!!」


私は、観念して深々と頭を下げた。

勇隼様は、やっぱり大らかに笑って面白いと言っている……。

はぁ、面白くないですよ……。


明らかにへこんでいる私に、清志郎様は一つ忠告をくれた。

「雫、お前の安全のために、民の安全のために、

違和感というものを大切にしなさい。何もなければそれで良し。

最後まで違和感の正体を突き止めるように」

「はい、肝に命じます……」


そんな私の失敗を、朔太郎様はニコニコしながらご覧になっていた。


「朔太郎、よろしく頼む」

清志郎様が私のために、朔太郎様に頭を下げてくれている。

「朔太郎様、どうぞよろしくお願いします」

私は、朔太郎様に三つ指をついて挨拶した。


「雫様、仲良くいたしましょう。それが雫様を守ることなるでしょう。

市中へ出るための策は、橙矢のところで練ることになっております。

明日、夕刻にお迎えに上がります」


朔太郎様は、商人として商家に出向いていた。

……街中を歩くのは、顔を知られているのにどうするんだろう……?


「大丈夫です。橙矢が良い知恵を授けてくれるでしょう」

私の疑問を見透かしたように、朔太郎様は穏やかに声をかけてくれた。


……やっぱり橙矢様に、能面のなり方を教わろう……。

あまりにも皆が私の意図をたやすく汲み取ってくれるので

私は、鬼教官に頼む事を決心したのだった。



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