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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
三の巻
79/153

本題

 朝食をいただき、お片付けの手伝いをして、

30分くらいすると、いよいよ会合の時間を迎えた。

橙子様が、朝食の時に静かにおっしゃったの。


「伊吹様、お待たせ申し上げました。場は整いましてございます」

そうしたら伊吹様が、静かに箸をおいたのよ。

「かしこまりました。宜しくお願いします」

伊吹様らしく、柔らかく頭を下げていた。


朝餉を皆でいただいた部屋の襖や障子が開け放たれ、

夏とは違い、少し涼やかな空気が部屋をいっぱいにしていた。

食事をいただく時と同じ席次に、なんとなく皆が治まったの。


そして、意外にも伊吹様が口火を切った。

なんとなく橙子様が先導なさるのかと思っていたから、少し驚いちゃった。

私の後ろでは、蒼がコロコロと遊んでいた。


「刀鍛冶 橙子様、そして御一門の皆様。

改めまして、私は祈りの民、伊吹。本日、御伝達がございます」


……えっっっ??? 御伝達……?あれっ、伊吹様、

いつの間に影向(やうがう)様と話したの?

昨日、就寝するまでは、そんなことはおっしゃっていなかった……。

伊吹様は笑って、果報は寝て待てと申すでしょう?と話していたもの……。


その伊吹様の一言に、鍛冶職人の皆さんは一斉にザッと頭を下げた。

大祭の時に、皆が同じ格好をしていた時と一緒……。

……本当に影向様からの、伝達なんだ……。

ポケッとしていると、小声で橙矢様に

「雫……!!」

と、声をかけられ慌てて同じように頭を下げる。


「影と光が、同時に現れた今世。鍛冶師の受け継がれし力を

合わせる時がやってきた。遠き先祖の願いに恥じぬよう、

よく技を磨かれよ。さすれば到達するであろう」


伊吹様が、柔らかで通る声で、まるで手紙を読んだかのように

伝達をし終えると、橙子様はホォ〜っと長い息を吐いて顔をあげた。


「かしこまり申した。この橙子、しかと勤めましょう」

別に普段と変わらない表情で、橙子様は答えていた。

そんな橙子様に、伊吹様は初めて笑わずに問いかけていた。


「橙子殿、この仕事、命がけになります。

私ができうる力、全てを持って、お支えいたします。

貴方が生み出すのは、隼ではない。

でも、何か役割の持つ銘刀となるでしょう。

書き記すために文人も用意します。

どうか、皆様も橙子様を支えてください」


伊吹様の、いつにない真剣な表情に、お弟子様たちは

何かを覚悟したように見えた。

言葉もなく頭を下げている。


こんな緊迫した場面なのに、蒼は、突然テケテケと歩き、

橙子様の方を見て私の前に座ったのよ!!

……蒼……?!?!?!


さすがに目を見張ってしまったわ。


そうしたら少しの静寂ののち、首を傾げてキュッと鳴き

ニコッと笑ったの。


あまりの緊迫感の後だったから皆、動けなくなってしまったの。

でも橙子様は、嬉しそうにホッホッホと笑って、

蒼にも頭を下げてくださったの。


「蒼殿、よろしく頼みまする。この橙子、

全力を持って、期待に答えましょう」


涼やかにお話になる橙子様に、蒼は変わらず愛くるしくキュッと鳴いて返事をしたのだった。



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