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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
三の巻
78/153

万端

 朝、鳥の声で目を覚ますと、私が1番遅く起きたようだった。

……今、何時?! 慌てて飛び起きると、顔を洗い着替えを済ませた。

あれ? 蒼がいない……。


屋敷で寝起きしているときは、蒼は必ず目覚めた時に部屋で遊んでいる。

そこでお友達の小鬼も一緒に、私にたんまりと抱っこしもらい、

ニコニコとお手伝いにいくのが、日々のルーティンになっているんだもの。


小屋、大丈夫だったかな……?

新しい場所に、蒼なりに考えがあるのだろうと思っていたので、

少し気にかけていた。

夕餉の時は、私のそばを離れず、

かといって緊張しているわけでもなさそうにコロコロ遊び、

たまに実道様の膝に乗って、ニコニコ皆を眺めていた。

その様子を見て、鍛冶職人の皆さんもどよめいていた。


皆が私の小鬼だと知っている。小鬼は、滅多に他の人に慣れない。

でも私の目の前で、他の人の膝に乗っている蒼。

とても驚くことだったらしいの。

そして、会話しながらも蒼の様子を伺っていた。

私の周りで遊ぶのに、実道様の膝にしか乗らない。

まだ実力を発揮していない蒼の神秘性は、ますます高まったというわけ。


そんな蒼が見当たらない。なんとなく気になって、

私は蒼を探しにいくことにしたの。

外に出て、お日様の光をこれでもかって浴びた後に、

思いっきり伸びをして体を解した。


さあ、蒼はどこにいるんだろう?

なんとなく昨日見せていただいた作業場に足を踏み入れる。


気のせいだろうか、空気が澄んでいて、

中に入るのは躊躇われるくらいだったの。

そこに……。


掃除を終えた橙子様と、それを座って見ている蒼が居た。


「橙子様……!! おはようございます。断りもなしも申し訳ありません」

そう頭を下げた私に、橙子様は、この晴天の朝にふさわしい微笑みで

私に笑っていたのよ。

「雫様、おはようございます。良いのですよ。どうぞ入ってください。

毎朝、ここの掃除は私の仕事なのです」

そういうと、にっこりと座っている蒼を見た。

「蒼は私を待っていたようです。掃除の間、静かに眺めておりました」


驚いた私が蒼をみると、蒼はいつもの通りニコニコしている。

「蒼……?おはよう。今朝は蒼がいなかったから探しにきて見たよ。

無事にいてくれて良かった」

その瞬間、蒼はパアァッとさらに笑顔になり、私に抱っこをせがんだ。

「おはよう、蒼。今朝はお日様が綺麗だったね。お前も見た?

ピカピカのお日様だったよ」

私が抱きしめながら、いつものように何気ないことを語りかけていると

橙子様は、ゆったりと言葉を連ねていったの。


「雫様、いつも蒼とは、そのようにお話になるのですか?」

「は、はい。こうやって何気ないことを話している時が1番癒されるんです。

私ばかりが癒されていて、ちょっと蒼が、どう思っているか心配なんです。

私ばっかり満足している気がして……」

「雫様、蒼をご覧なさい」

そういわれて、ふと蒼を見た。

蒼は、ニコニコしていて瞳はキラキラしている。

喜んでくれているのかな……?


「ご覧になった蒼は、いかがでしたか?」

「……嬉しそうに、見えます……」

「ええ、私の目にも、嬉しそうに見えます。

雫様、もっと蒼を信じてもよろしいのでは?

なぜか、……なぜか貴方様は、自信を持てないでいらっしゃる。

でも、蒼に関しては、もっとご自分の瞳に写るものを信じて

よろしいのではないでしょうか」


橙子様の問いかけが、柔らかな朝日と腕の中にいる蒼を

照らし出していた。


「……はい。……はい、橙子様。

私、もっと蒼を信じてみます」


噛み締めるように言葉がこぼれ落ちた私に、橙子様は満足げに頷いていたのだった。

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