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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
三の巻
80/153

狼狽

 朝の会合は、あっさりと終了してしまった。

言い出しっぺの私の心が、あまりにも早く話がついて

追いついていかない。

……伊吹様、命がけって言ってた……。


本当に、何でこう成長しないんだろう……。

今回の計画は軽い気持ちで、

ゲームのアイテムを生み出すかのように思いついたのだ。

対峙できる人が必要なら、アイテムがあれば良いんじゃない?って……。

その軽い思いつきに、人が命をかけて挑む……。

まさか、そこまでとは思わなかった……!!!

それが私の正直な感想だったし、またやっちゃったよ……!!!という

後悔の波だった。ここはゲームの中じゃない……。

目の前で、尊敬したり笑いあったりした人が挑んでいく

現実の世界なんだ……。


こちらに呼ばれて、どうにもその現実に慣れることができなかった。

優しい人に囲まれて、その現実感を実感できないのならば、

それは私の責任だ。これは、結構へこむなぁ……。


縁側で、蒼を抱っこしながら憂鬱な気分で座っていると、

いつの間にか千隼様が、隣へ座っていた。


「雫様、どうかしましたか?」

「あぁ、……うん、ちょっとね……」

千隼様の瞳を見る勇気がなくて、俯きながら答えた。


「……雫様、蒼に話すように、とりとめもなく話してください。

聞くだけなら私もできます。聞くだけですよ?」

千隼様は、私の気持ちを軽くするかのように

わざとふざけて話していたの。


「私ね、……私……」

「はい、雫様」

千隼様は、まるで私の背中をそっと押してくれるかのように返事をした。


「私、まだ夢と現実の区別ができていない」

そう振り絞った一言に、震えを止めることはできなかった。


「私の元の世界にはね、ゲームっていう遊び道具があったの。

創作した映像が、物語を進めたり、戦ったりするんです」

「……芝居を影絵で見るような感じですか?」

「うん、でも色はついているよ。そこではね、遊びを作った人の意思、

つまりは物語の決まりにのっとって遊ぶのよ。

物語だから遊ぶ人に、都合の良い決まりになっていることもあるんです。

だから、主人公は生き返ることができる」

「……それは、こちらの遊びにはありませんね……」

「うん。物語の最終話にたどり着けるように、現実ではありえない

決まりがあるのよ」

「でも、その遊びを知っているからと言って雫様が

人をないがしろにしているとは思ったことはありませんよ?」

「そっか……、良かった……。うん、良かったのかな?

私、まるでその遊びをしているかのように

今回の浄化できる物を作れば良いんじゃないっかって思いついたの」


そう懺悔した私に、千隼様は固まっていた。

そうだよね、皆が真剣に難関に立ち向かおうとしていた時に、

隼を託された私が、そんな遊び半分の思いつきを話していたなんて……。

これは軽蔑されても……。


へこみ続ける私に、千隼様は優しい笑顔に戻ってこう言ったのだ。

「良いんじゃないですかね、雫様」


へっっっ???


「以前、雫様が私におっしゃってくれたでしょう?

それで良いんじゃないですかねって。

私も、今、本当にそう思っているので、雫様にお伝えしました。

良いんじゃないですかね、雫様」


ポカンと間抜け面する私に、千隼様は笑っていた。

「雫様、私は何をしても平凡です」

そう自然に言った千隼様に、私は思わず目を見張った。

そんなことを思っていたのか……!!!

「いや、千隼様。貴方は飛び抜けた能力の持ち主ですよ」

思わず真顔で返した私に、千隼様はクスクスと笑い出していた。

「ね?私は、真剣にそう思っているのです。でも貴方は違うと言ってくださる。

そして、そのままの私で良いのではないかとおっしゃる」


千隼様は、一度言葉を切ると、明るい日差しの中で

私の膝の上にいる蒼を、優しく撫でていた。

「私も、そう思うのです。たぶん、雫様は思いついた元が遊びだったので

不謹慎に感じられたのでしょう?でも、良いのではないでしょうか?

そこから人々を救う道具が生まれるのなら、元は何でも良いのではありませんか?」

「……でも、……伊吹様が、命をかけてとおっしゃっていて……」

「なら、遊びが元ではない発案であれば、命をとしても良いのですか?」


ハッとして言葉を失う私に、千隼様は微笑んでいた。

「ね? 以前、貴方が教えてくださったのですよ?

人が救えれば、善意から出てきた心です。

手段は考えずとも良いのでは?」


私は、まるで弟に慰められているかのように胸が切なくなった。

本当に弟がいれば、こんなに勇気づけられることが、どんなに励みになることか……!!!


私は、こちらにきてからの出会いに恵まれているのだ。


「……ありがとう、千隼様」

私も、蒼を撫でながら千隼様に答えたのだった。


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