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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
三の巻
75/153

注釈

 橙子様は、穏やかな声で私たちを招き入れた。

まずは、小屋の中を案内してくれたの。

それは外見からは分からないくらい、奥まで広い小屋だったのよ。

4間×5間の建物で、作業場は別。

作業場は、そう、二十畳ほどはあるだろうか……。

土の上に、精錬するための火床(ほど)と呼ばれる炉があり、

テコ台(テコ皿)とテコ棒と呼ばれる道具、藁灰が置いてあったりしていた。

(ふいご)は炉の中の温度を調節するためにあるのだろう。


もし元の世界、現代で、刀鍛冶が一振りの刀を打つとしよう。

それは刀鍛冶にとって、とても高額な投資になる。

原材料の玉鋼:3~6万円

炭代:7~10万円

研代:25~40万円

ハバキ:5~10万円

鞘:6~9万円

刀袋:2000~5000円

材料費だけで、このくらいはかかると言われている。

しかも、確か年間で二十四振りしか打ってはいけないと言う決まりがあった気がする。

……あってる?……刀鍛冶を専門にしていなかったので、

あやふやなのは、許して欲しい……。

こりゃ、学者になるより大変だと思った記憶があるのよ。

依頼者がいて、初めて打つ決心をするのかな……?

現代の刀鍛冶は、とにかく食べられるようになるまで

修行のように過ごす期間が長い印象だったのよね。


かたや、こちらの世界は刀の需要は、ふんだんにある。

剣士の部門に属しているでしょ?

皆、より良い刀鍛冶を探しているし、刀鍛冶を売りにしている職人は少ない。

だって、生活用品と労力が違いすぎるんだもの!!!

もちろん生活用品だって、評判の良い品物を作るのは大変なのよ。

それこそ、料理人の要望に答えるのは難しいことだと思う。

相手も職人なんだもの……。


とにかく、どんな道具も、それが刀だとしても

職人の並々ならぬ意欲があって、初めて生まれてくるものなのだと思うの。


そんなことを考えながら、作業場を眺めていたのよ。


「雫様、貴方様にとって刀は、どう言うものですか?」

突然に橙子様から尋ねられて、私はバッと振り返った。


私にとっての刀……??

しばらくの沈黙の後、私は、噛み締めるように話し出した。


「橙子様、私にとって刀は……、……刀は、馴染みのないものでした。

……でも、隼は……」

「隼は?」

「なんて言ったら良いんでしょう?……隼は、気がついたら

いつでも私を守ってくれていました。私にとっては最初から

そういう存在だったので……。それは特別なことなのだと

気がつくにのに時間が必要だったんです」

「そうですか。隼は、大切な刀になりましたか?」

「もちろんです!! 隼のおかげで、私は人として成長できたんですから!!」


興奮して話す私に、橙子様はにっこりと笑った。


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