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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
三の巻
73/153

清白

 美味しかったお店を満喫して、私達は再び目的地に歩き出したの。

ここからは、本当の道中。道があるだけ。


すぐに山のふもとにたどり着いたのよ。

そこには、畑があって色々な野菜が植えられているところが

ふもと一体に広がっていた。

その間の一本道を、黙々と登っていく。

最初は緩やかな坂道だったので、あまり大変だと言う印象はなかったの。


目指すのは山の中腹だと聞いていた。

そこに、広く平らな地があり、奥にはさらに山道が続いている、

そんな場所だと聞いていたのよ。

木々は、まだ紅葉には早くて、でも秋の香りがして……。


この辺りは、薪を集めるだけでなく、山栗や、きのこが採れるんですって。

……松茸ないかな……?

あたりを見回すと、松林ではないみたい……。惜しい、松があるか

帰ったら小春に聞いてみよう。そうだな、そろそろ銀杏の茶碗蒸しも食べたいな……。

……イチョウは……、残念、ないか……。


食いしん坊の私は、食べたいものを思い浮かべながら

山道を登っていたので、ちっとも退屈しなかった。


気遣ってくれた伊吹様に、正直に話すとクスクスと笑って、

きのこ職人を紹介してくれると言う。

「雫様、ご存知かと思いますがキノコは食する物と、

毒になるものがございます。必ず職人を伴ってください。

よろしいですか?」

「もちろん!!私、お店で売っているキノコしか食べたことがないんです。

だから、ぜひその方を紹介してください。お願いします」

ペコリと頭を下げると、伊吹様は慌て出した。

「いいえ、そのような……!!どうぞお気遣いは無用になさって下さい」


伊吹様は、私の事をどうにも宝物で触れてはいけないものかのように

振る舞っている。大切に思ってくださるのは嬉しいんだけど……

そう思って、困惑していると橙矢様が笑い出した。


「伊吹、雫は存外に乱暴な物言いの方が安心するのだ。

お前の口調を改めよとは言わぬが、もそっと雫の心に安堵を与えてやれ」


そう言われた伊吹様は、文字通り、鳩が豆鉄砲をくらったかのような表情になった。

「雫様の、安堵……?」

「そうだ。お前が雫を大切に思う気持ちは充分に分かる。

ただ敬いすぎて、人として努力する雫に気を使わせては

本末転倒と言うものだ。急には無理であろう。徐々に慣れよ。

お前にも良い機会だ。人の表情の奥を読むと言うことに慣れよ」


そう淡々と話す橙矢様に、伊吹様はパァッと頬を紅潮させて

目を輝かせた。

「はい、橙矢様。雫様の心に安寧を……。はぁ〜〜、それを私ができれば

この上なく幸せに思います。ご教示ありがとうございます」


キラキラしている伊吹様……。意図は半分しか伝わっていないのでは……?

橙矢様を見ると、苦笑いしていた。

「雫、今日はここまでが精一杯だ。何度かすれば、少しは良くなるであろう」


はい!! ありがとうございます。……それにしても伊吹様が、他の方から

教示を受けるところを初めて見た……。

そのくらい私にとっては、見たことのない様子だったのよ。


先頭をいく千隼様が、弾んだ声を上げていた。


「雫様、つきましたよ!! こちらが作業場です」


そこには、思っていたよりも大きな小屋があったのだった。

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