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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
三の巻
71/153

雑談

 伊吹様が絶賛したお店、そこは本当に美味しい料理が自慢の店だった。

奥の座敷、要は個室のような離れを私たちで使わせてもらったの。


こちらの人は、川での交通が発達している。

馴染みの船で商売している人を、仕入れの贔屓先にしているんだって。

そこで新鮮な魚屋、野菜、お肉を手に入れ、料理に励んで評判の店になった。

店主は、体の大きな男性で、包丁を持つ手は、とても大きい。

離れに通される時に、調理しているところが見えた。

器用に野菜の飾り切りや、魚をさばき、動作は美しいくらいだ。


部屋に運ばれたお米は、大きなおひつから良い香りがこぼれ落ちるようだ。


「わあ〜〜、良い香り!!! 私、ご飯をよそいますね?

蒼、運ぶのを手伝ってくれる?」

私は蒼に手伝ってもらって、ご飯をよそい

お茶を入れて、御膳の前に座った。


橙矢様が、皆が席についたのをグルっと見て

手を合わせた。ここは元の世界と一緒なのよねぇ。


「では、今日も食事を楽しめることに感謝しよう。

いただきます」

「いただきます!!!」


そうして皆で箸を取り、思い思いの皿に手を付け出した。

私は、まずはお味噌汁!!今日は豆腐とお揚げみたい。

ネギの良い香りと味噌の香りが何とも言えず食欲をそそる。

ひと口、口に含んで思わずニンマリしちゃった。


「雫様、気に入っていただけましたか?」

「はい、もちろん。とても良い香りのお味噌汁です」

伊吹様に問いかけられた私は、ご機嫌だと丸わかりの笑顔で答えた。

それを見て、橙矢様が笑っている。

最近の橙矢様は、表情豊かだ。まあ、それは私の前だけらしいけど……。

たぶん、こんなに珍しい現象を観察したいんだと思うんだよね……。

えっ??ひょっとして私、珍しい生き物認定された……?


「雫、お前は食事の時はいっそう幸せそうだな」

「そうですよ、橙矢様。こんな美味しいものを食べられることに

感謝しなきゃいけません。

この國では、どこでも美味しいものを食べられるんですか?」

「ここ100年くらいで、地方でも食生活は豊かになってきている。

食べるということは、人にとって楽しみの一部だからな」

橙矢様は、ゆったりとゴボウの胡麻和えを口に運んでいた。


「雫様の故郷は、異国のような食事も召し上がっていたのでしょう?」

千隼様は、いつもながらの綺麗な箸遣いで魚の煮付けを食べていた。

「ええ。私のいた国は、そうですね、職人気質の人が多かったのだと思います。

異国に修行に行って、その国で料理のコンクール……、えっと品評会みたいな

ものに出場して、金賞をとって帰国する方がたくさんいたんですよ。

だから、お料理屋さんは競争が激しかったので、

どこで食べても大抵は美味しいんですよ」

私は、大好きなお芋の煮浸しに舌鼓をうっていた。


「雫様、お願いが……」

ふと見ると、千隼様が好奇心を隠し切れないようにしている。

「はい、千隼様。何ですか?」

「あの、時間がある時で構わないのです。直ぐでなくとも構わないですし……」

千隼様は元来、人からお願いされることはあっても、人にお願いするところは見たことがない。

「良いですよ、言ってみて下さい」

「あの、華から西洋料理という料理のことを聞いたのです。

材料があればできるかもとおっしゃっていたと……」

「ああ、そうですね。簡単なものならできる気がするんですよね。

でも道具を改良できるかなって思ってたんですよ」

「雫様、道具も材料も私と華で揃えてみようと思っています。

だから、いつかご相伴に預かってもよろしいですか……?」


千隼様のささやかな願いに、私は目をパチクリさせた。

「ええ、もちろん!!!時間ができたら挑戦してみますね。

その時は、ぜひ味見してください!!!」

「はい、もちろんです!」

ニコニコしている千隼様の脇で、橙矢様もニコニコし出した……。


「雫……、」

「はい、橙矢様。分かっています。橙矢様も味見してください。

大丈夫です。全員の分を作ります」

橙矢様に続いて、実道様も伊吹様も口を開こうとしたので、

私は先回りして、そう言った。

うん、これだけのメンバーがいれば絶対に作れる気がする……。


「雫、お前、賢くなったな」

橙矢様は、ニンマリと笑ったのだった。


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