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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
三の巻
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発見

 皆に見送られて、私たちは出立した。

本来だったら、元の世界と同じように武士には遠出する時

お供がつくんだけど、今回は目的が目的なので、

自分の荷物は自分で持つことになっている。


歩き出すと、野袴は裾が絞られたものなので、なかなかに歩きやすい。

荷物は着替えだけなので、風呂敷のようなものに包んで斜めがけのバックのように

背中に背負う。雨対策として、塗りの笠を頭につけるの。

元の世界だと、確か塗り一文字笠って言うのに似ている気がする。

刀にも刀袋みたいなのがあるんだよ。雨が降ってきた時に使うみたい。


そして、……心配していた蒼だけど、これが私たちと同じ格好で現れた。

頭に笠を付けていないだけ。歩幅も小さいし、歩けなくなったら抱っこだな〜、

なんて思っていたら、ぴょんぴょん跳ねるように歩いていた。

まるで遊びだと思っているかのようで、ニコニコしていていつもと変わりがない。


橙矢様が、蒼のことが興味深いらしく、ジィーーーッと見ている。

実道様は、慣れているので別に気に止めることもなく、

それよりも周囲を警戒しながら歩いていた。

伊吹様は……、どう見ても柔らかな印象なのに、

剣術は得意らしく、下手な剣士より体力があるんだって!!

まあ、あれだけ仕事するんだもの、体力ないとできないよね。

千隼様は、蒼が本当に面白いらしく、蒼にあれやこれやと声をかけ

隣を歩いていた。


お昼ちょっと前には、都の外れにたどり着いて

昼休憩を取ろうってことになったのよ。


ここには、道中の最後の休憩所なので、旅籠や、料理屋が

たくさん立ち並んでいたの。

何やらお姉さんたちが、一生懸命に客引きをしている。

……うん、これは違反ではないんだよね……?


首を傾げていた私に、橙矢様は苦笑いしながら説明し出したの。

「雫、あれは違法ではない。まだな……」

「まだ?」

「ああ、自分の店の良いところを言って、客になってもらう。

それだけでは違法にならん。ただ、道を踏み外しやすいな。

他店に負けまいと、他の店に嫌がらせしたり、

客を引き込んだ後、法外な値段を要求すれば、

ようやっと我らの出番だ。とっとと捕まえる」

「なるほど……。ここの管轄の方が上手くやらないと揉めますね……」

「揉める? なぜだ?」

「だって、競争を禁止すれば商売は流行らなじゃないですか。

どんな店にも肩入れせず公平に、でも不正は許さないと毅然な対応をする。

厳しすぎると、商売人同士が結束して言うことを聞かなくなるかもしれないし、

緩すぎれば、不正が横行するかもしれない。難しいですよ、橙矢様……」


腕を組んで、ここを管轄している人は、よっぽどの切れものだろうと思っていると、

橙矢様は、やっぱりニヤリと笑った。

橙矢様……、その笑顔、怖いんですけど……?


「その通りだ。安心しろ、ここの管轄は安心できる者だ。

何せ、私の兄だからな」

……。

「橙矢様、それって何の心配もないじゃないですか……」

「おや、お前は会ったこともないのに信用するのか?」

「心配だったら、とっくに橙矢様が乗り込んでいるでしょう?」

なあんだと、小さなため息をついて答えると、

橙矢様は、またニヤリとして。

「お前も、だいぶ私に慣れてきたな」

「ええ、おかげさまで。日々精進おりますから……」


めずらしい……。橙矢様が、こんなにご機嫌で饒舌なのは

本当にめずらしいのだ。

そんなたわいもない話をしていると、伊吹様に呼ばれた。


「雫様、お疲れでしょう?少し長めに休憩を取るように橙矢様にお願いしておきました。

ゆるりと休まれるのが、よろしいでしょう。

食事も、皆のお勧めの店なのですよ。雫様は、お刺身も煮物もお好きでしょう?

とても美味しいお店なのですよ?座敷をお願いしましたから、蒼もくつろげます。

ご褒美をたくさんあげてくださいね。こればかりは雫様しかできませんから……」

「……そうなんですね?良かった。少し蒼のことが気になっていたんです。

良かった!! 分かりました、伊吹様のおっしゃる通りにします!!」


こうして私たちは、長めの休憩を取ることになった。


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