出立
今回の祈りの民と鍛冶屋の代表は、山の作業場で会うことになっていたの。
鍛冶屋さんが、どうしてもそこが良いんだって。
遠出と言っても、何週間もかかるような旅ではない。
鍛冶屋さんは、普段は街中で仕事をしているけど、
刀鍛冶だけは山籠りして創るみたいなの。
集中できた方が良いのかしらね?
だから行ったり来たりできるようになのか、ふもとの村で一泊し、
翌日、山の作業場へ出発して着くくらいの距離だそうだ。
こちらの編成隊は、なんと橙矢様(お仕事、これが第一優先みたい)、
もちろん伊吹様、実道様、千隼様、そして私。
こちらの旅支度は、何を用意したら良いんだろう?
私が1番心配したのは、足元だった。
元の世界での私は、例えば室町時代から
武家の発達に伴った武士の服装の研究はしていなかった。
もっと勉強しておけばよかったな……。
こちらに来て初めて、あれ?そういえば時代によって履く物って
違ってたっけ?っと思い出したのだ。
そう、身分によっても違ったかもしれない。
あやふやな記憶を、こちらの世界とすり合わせていったのだ。
武士だけで考えてしまえば、確か皮足袋や木綿の足袋があったはずだ。
木綿は当初、皮足袋よりも高価で、
後に時代になるほど使われていくことになったはず。
皮足袋は靴のような形状で、足袋の原型のような物を履き、
靴ずれ防止に履いていたと思われているが、
はっきりと理由は分かっていなかったはず……。
草履は、いざという時走れる物、下駄の初期はぬかるんだ道を歩く物、
そう言った認識があった気がする。
それから雪駄。
現代では男性が和装をする際の正式な履物とされているものだった気がするんだよね。
下駄じゃないんだって驚いた記憶が……。
まあ、私の和装の知識は、ほぼ夏祭りや花火大会の浴衣に関する物だから……。
これは草履の裏に皮を張り、鼻緒の留め具に金具を使っていた気が……。
確か、履き物一つで当時の身分も大体分かったって読んでた気がするのよね……。
ああ、いつでも調べられるスマホが欲しい……。
そして、困った私は、この時ばかりと実道様と桔梗様から
知恵を授かり、良いとこ取りをしたのよ。
だって男装してるけど、一泊するんでしょ?
なら、持ち物が違うと困るじゃない?
結局のところ足元は、普通の足袋に、草鞋を履いたのよ。
他にも工夫はあったよ。
例えば、袴。これは野袴と言って、普通の乗馬用の袴に
裾がビロードで縁取られているものを身に付けた。
元の時代では、武士は旅行は基本的に禁止されていたと思うから、
これは特別な時や、戦の時に付けたんじゃなかったかな?
こうして、私は荷造りを終え、やっと落ち着いた気分になったの。
そうしたら……。
出かける当日になって、蒼が風呂敷をかついで
私の目の前に現れたのよ!!!
「……蒼……? お前……、ひょっとして一緒に行ってくれるの……?」
戸惑いながら聞いた私に、蒼は相変わらず可愛さ満点の返答をした。
蒼は、少し不思議そうな顔をして、首を傾げた。
……かっっ、可愛いぃぃぃ……!!!
そして、満面の笑みでキュッと鳴いたのだ!!!!!
こうして私たちは、蒼を含め、遠出に出ることになったのだった。




