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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
二の巻
58/153

異変

 私たちが医局の前の長椅子で休ませてもらっている頃、

それは起きていた。伊吹様のお告げの伝達内容がいつもと違ったのだ。


菊次郎様は、長椅子に座っている実道様に、

疲労回復の薬湯を渡しながら、首を捻っていた。

いつもなら、もう伊吹様の伝達は終わっていて、

今年も変わらぬ良い年だと、歓声がワッと湧き上がる時刻なんだそうだ。

「おかしいですね……、いつもなら……。

少し遅すぎる気がします……」


菊次郎様が、そう呟いた時

実道様が小さな声で話し出した。

「菊次郎、今年のお告げは違うはずですよ。

そのために雫はきてくれたのですから……」

その実道様の言葉に、菊次郎様はハッとしたように見えた。

「申し訳ありません……、雫様がいらしてくださって

それだけで救われた気持ちになっておりました。

一緒に戦わなければならないのですよね。

気が緩んでおりました……」

そう言って視線を伏せる菊次郎様に、実道様は笑っていた。

「いいえ、菊次郎。私も、ついこの間まではお前と同じ気持ちでした。

でも、我らにも役目はあります。今日、そのことを思い知りました。

菊次郎にも、きっとお役目があるはずですよ。

時期に分かるでしょう」


そんな2人に、私は思わず本音ダダ漏れの話をしだしてしまった。

後から考えると……、穴があったら入りたくなるけど、もうしょうがない。


「実道様、私、仲間が増えると嬉しいです」

思わず満面の笑みになってしまう私を見て、実道様は苦笑いしていた。


「ね?菊次郎。雫はね、いつでも楽しみを見つける才に長けているのです。

落ち込む暇はないと、お前が教えてくれたのですよ?」

実道様が笑いだすと、菊次郎様はホォっと息を吐いた。

そして顔を上げた時には、もういつもの菊次郎様の笑顔だ。

「そうですね、実道様。今、目の前にあることを片付けなければなりません。

さあ、それを飲んでいただいて、半刻ほどしたら仁様に見ていただいてください。

それで、何事もなければ帰宅して良いと思います。

ただ、今日は安静にしてください」

「ええ、わかりました菊次郎。

忙しいところ悪いのだけれども、小春に使いを出してください。

今日は、街の大騒ぎには行けなくなったと……」

「はい、分かりました。屋敷内で仕事をしているようですので、

手間ではありませんよ。伝えておきます」


そうだった!!小春……!!!

ごめんね、さすがにこの状況で、街中の祭りの賑わいを

見学しに行くのはためらわれるわ……。

小春は、さっぱりしている。でも、説明は必要だろうなぁ……。

今度、小春には行きたいと言っていた茶屋に誘うことにしよう。


そうこうしている内に、菊次郎様はペコリと頭を下げ、

中の患者さんに対応するために戻って行った。


「実道様、どうですか? 崩れ落ちそうになるくらい眠くなったりしてません?」

私の質問に、実道様は一瞬真顔になったものの、すぐに笑顔になって答えてくれた。

「ええ、雫。あなたのおかげで、そこまでの疲労ではありません。

貴方は、崩れ落ちるように眠かったのですね?」


あれま、もうバレた……。ちょっと恥ずかしいな……。

「すみません、気の大きさをコントロール……、操れると思っていなくて……。

自分の中の力が、ゴッソリと持っていかれそうになったので、

眠かったんだと思うんですよね。気をつけます」

「雫、謝らないように。貴方は最善を尽くしているのです。

だから、私たちの方は助かっているのですよ?」

「……はい、実道様」


私が素直に返事をすると、実道様はにっこりと笑っていた。

「さあ、一休みできました。ここから質問責めの会合ですよ。

良いですね、雫?」


……いや、私は良いですけど、実道様は休んだ方が……。

そう思った私を見透かすかのように実道様は、笑い出した

「雫、キツくなったら言います、だから大丈夫ですよ。

さあ、ほら、お偉方がやってきましたよ?」


そう言って、おもしろそうに実道様は笑い出したのだった。


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