新米
私は、ジリっと進めた歩みを静かに立ち上がる姿勢に変えた。
隼を走りながら抜けるような体勢に変えたのだ。
実道様も、呼応するかのように同じ体勢になる。
「実道様、私が見えている他の二体は、一本手前の木のところにいます。
揺らいでいるだけなので、やはり気配で増幅するんだと思います。
ですから、静かに気配を消して近づきます。
どこまで近づけるか、やってみましょう。構えて少しずつ気を溜めていきます。
影の揺らめきが強くなったら浄化の合図です。そこがちょうど良い気の大きさのはずです。
まず、私がやってみます。見ていて下さい。
そのあと、実道様に三体目の浄化を試していただいて、
できなければ、私がやります。良いですか?」
私の小声に、実道様も真剣な瞳で頷いた。
「では……」
私のその一言を合図に、気配を消して影の方へ向かう。
静かに、静かに……。
私たちは、決して刀から手を離さず、ゆっくりと歩んだ。
そして、近づくにつれソロソロとした歩みに変えて行ったの。
私の問題は、二体が隣同士にいると言うことだった。
……どうしよう、一気に……そうね、一気に浄化しないと、
増幅された時のことが分かっていない……。
気の大きさを瞬時に倍にしないと……。
その後に残しておく気の問題もあるけど、やってみるしかない。
いったい何故に急に数が増えたのか……?
……ダメだ、目の前のことに集中しないと……。
まずはそれからだ。
私は、二体の前で静かに構え、気の大きさを少しずつ大きくしていく。
静かに、少しずつ、少しずつ……。
あるとこまで大きくすると、突然二体の影が震え出した。
いまだ!!!
私は、一気に丹田に気を集め、隼で空を切った。
ーーお願い、どうか浄化できますように!!!!!
空を切った瞬間、いつものように手応えがあった。
キラキラした粉が、空へ昇っていく……。
いつもなら、ここでホッとするところだ。
でも今日は違う。空に昇っていくものの後ろに
揺らめきが大きくなったのが見えた。
「実道様!!!」
私が叫んだ瞬間、実道様が動いた。
物凄い速さで、間合いを詰め瞬時に気を集めたのだろう。
お札のついた愛刀で、同じように空を切る。
実道様は、切った後すぐに、もう一度構えた。
でも、……奥の影も、美しい光に変化し空へ昇っていく。
……成功、した……?
今回は、周りを素早く見渡す。
他に影は?!
誰かいる?どこに?何かのヒントは……?
残念だけど、私たちから異変は発見できなかった。
実道様は、珍しく肩で息をしていた。
たぶん初めてのことだし、お札にも力をごっそり持っていかれたのだろう。
でもこれで、お札さえあれば浄化出来るかもしれないことが分かった。
そして、見えるようになる人が他にもいるかもしれない。
そういうことだ。
色々の案は、本当に安全になったときに考えよう。
そう思った私は、疲れ切っている実道様に肩を貸し、
仲間ができたことに、飛び上がりたいほどの嬉しさを隠せなかった。
「さ、実道様。蒼達のところに戻りましょう」
実道様は、声もなく頷いたのだった。




