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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
二の巻
50/153

宵宮

 大祭の初日前、私は伊吹様に預かった手紙をたずさえ、

胡蝶様の元を訪れていた。もちろん実道様と千隼様と一緒に……。


大祭では、祈りの民は多忙を極めるらしく、

大祭後に有給で、代わる代わる旅行に行けるくらいの休暇が出るらしい。

当然伊吹様は、多忙の筆頭主で屋敷の夜警の寝泊りするところで

過ごしているらしい。

意外なのが、医局も多忙を極めるという点だ。

なぜかと言うと、これを機に都の医師の診断を受けてみたいという人が

押し寄せるからなんだって!!!

なるほど……、民は賢いと思う。

勇隼様の何代か前の國主から、地方にも医療をと、

医師を派遣したり、その地域の医師や薬師志望の人を育てたりして、

地域医療の充実を測ってきたみたいなの。

それでも、都には仁様のような留学帰りの新しい知識を持っている人がいる。

だから、評判が噂となり、診察希望が耐えないそうなの。


「皆、俺たちを買いかぶりすぎなんだ。

だいたいな、人は健康的な生活をして初めて健康になるんだ。

朝から酒をあおってて、健康にしてくれって無理だろう?」

仁様達は、憮然として話していた。


それでも、来た患者はみなければならないって。

どんなに不摂生だとしても、どんなに無知だとしても

教えれば良くなって、喜ぶ人がいるかもしれない。

その万に一つの可能性にかけるのが医者だって、仁様は笑っていた。


やっぱり、この國の人達は善良で勤勉だ。

もちろん悪いことをする人がいない訳ではない。

でも國の中枢に、善良な人がいるって、それだけですごいことなのかも。


伊吹様のお屋敷には、胡蝶様が変わらず仕事をしていらっしゃった。

「あら、いらっしゃい。どうぞ、上がってちょうだい」

初めてお会いした時と変わらず、胡蝶様はざっくばらんに

誘ってくれた。

客間に通してくれて、お茶と、おすすめの和菓子を出してくださる。

一緒に食べながら、にっこりと伊吹様の行動を見抜いた。

「すみませんね、伊吹が手紙を届けて欲しいと言ったのでしょう?」

そう言われても、実道様は涼しい顔で手紙を差し出した。

「はい、おっしゃる通りです。こちらがお預かりした手紙です」

「皆さんもお忙しいのに……、ありがとうございます」

言葉とは裏腹に、胡蝶様は嬉しそうに手紙を受け取った。


「お屋敷は、てんてこ舞いでしょう?伊吹はちゃんと食べていますか?」

「はい、祈りの民のもの達が、手慣れたもので衣食を見張っているのですよ」

千隼様が、笑いながら胡蝶様に教えていた。


伊吹様は、雲のような人なので、時間の感覚が

普通の人とは少し違うみたいなの。

胡蝶様が、大笑いしながら教えてくれたのよ。

「伊吹はね、どうにも時刻ってものが不便らしくて……。

なぜ、ああ、朝だなあ、昼だなあ、晩になったなあでは

皆は暮らせないのかと聞くんです」

「それはまた、伊吹様らしいと言うか、なんと言うか……」

私は、なんと言ったら良いか分からなくて、言葉を濁しながら笑ってしまった。

「でしょう? あの人は不公平だと言うんです」

「不公平? どういうことですか?」

「自分は、(あやし)のために、人の時刻に合わせるわけにいかないのに、

妖は、妖の時刻でしか動かない。誠にもって不公平だというんです」


……うん、伊吹様、……その通りだとは思います……けど……。


「だからね、伊吹だけ特別に妖時間にすれば良いというんです」

胡蝶様は、大笑いしていた。

「まあ、言い分が分からない訳ではありませんがね。

ただ、それを通されちまうと、伊吹の体が持たなくなるんで、

それはいけないよって、押し通しているんですけどね……」

胡蝶様は、まだ笑っていた。


「胡蝶様がいてくださらないと、伊吹様は夜中でも仕事をしていますよ」

千隼様が、にっこりとして答えた。

「本当に、胡蝶様のおっしゃることなら是非もなく、効果てきめんですからね」

実道様も笑っている。


「お手数おかけして、すみませんね。

伊吹に、ちゃんと三食食べて、就寝するように行ってください」

そう言って胡蝶様は、頭を下げた。

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