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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
二の巻
49/153

力動

 仁様の元に戻ると、当然のように目を丸くした仁様に迎えられた。

それはそうよね、一皿の量は少ないとはいえオヤツではなく

お祝いの料理をお盆いっぱいに持った実道様と私、

足元には、小鬼達が、一人一つのお猪口と、お酒を持って

戻ってきたんだもの……。


「俺は、オヤツを頼んだんだが……」

そう言った仁様に、実道様が困惑したように答えた。

「それが、……蒼が私の膝の上に座ったのです。

それでお祝いだとなりまして……」

お皿のいくつかは、中のお医者様に渡したの。

今、大祭の前で大掃除しているんだって。

いつも清潔だけど、大祭は色々な地方の方も来るから、

より念入りに部屋中消毒までするんだって。

消毒といっても、薬があるわけではないから、

建物以外、全て熱湯消毒なの。だから中には、医局の人しか入れないんだって。


外に出してあった、ベンチのような椅子を合わせてテーブルのようにして、

座るところも確保して、ようやくお祝い膳になったのよ。 

その準備の間の私は……、ええ、小鬼達にお礼のギュッをしまくっていた。

準備もできた頃、蒼はトテトテと歩いて、ベンチに腰掛けたの。

おお、参加希望なのね?

蒼は、その場に居るかどうかハッキリとしている子だった。

迷ったりはしなくて、居たければ居る。そんな感じで分かりやすい。

「蒼?お手伝いは良いの?」

私が問いかけると、ニコニコして椅子をパンパンと叩き

そこに座るように仕草する。

「蒼、今日のお手伝いは、もう良いのね?

分かった、隣に座るね?」

そういって私が座ると、蒼は私の場所と反対のところをパンパンと叩き、

実道様を見た。

「実道様、蒼がここに座ってほしいそうです」

私が蒼の通訳をすると、実道様は目をパチクリさせ、

それでも笑顔で蒼の隣に座った。

「蒼、どうやら雫の側に居ることを許してくれたようですね?

実道です。よろしくお願いします」

実道様が律儀に頭を下げると蒼は嬉しそうにキュッと鳴いた。

そして、次は……、仁様を見ると……。ただ、ニコニコと笑っただけだった。


仁様は苦笑して、真向かいに座った。

「なるほど、蒼。俺はまだ、お前のお眼鏡には敵わんが

一緒に居るのは許した。そんなところだな?」

そう聞かれて蒼は、キュッと鳴く。

どうやら本当に、そんな所らしい。

「ま、良いだろう。良いか、蒼。いつか俺も認めさせるからな?」

そう宣戦布告した仁様に、蒼は首を傾げてキュッと答えた。



とても10分で作ったとは思えないほど美味しい料理を堪能しながら、

私たちは雑談に花を咲かせた。

仁様も実道様も、小鬼がお家に居たことがないらしい。

だからこそ、実道様は本当に驚いていた。

「この年になって小鬼に膝に乗ってもらえるとは思いませんでした」

「本当だよな、小鬼は大抵純真な子供の頃になつく者が多いからなぁ」

実道様と仁様は、何やら感慨深げに話していた。

「医局にも小鬼がいてくれると助かるんだぞ、蒼?

誰ぞ、興味のある小鬼がいてくれたら紹介してくれ」

「キュッ」

……蒼、誰か居そうなの?仁様、結構真剣だよ?

私の心配をよそに、蒼は足をプランプランさせてニコニコしている

……この分じゃ、誰かやってくるかも……?

伊吹様のように、何かの予感を抱えて青菜を口にした。

う〜〜ん、美味しい!!隠し味で、出汁を含ませてある。


「雫、大祭の間、どうしても困ったら医局まで来い」

そう言った仁様に、不思議に思ったものの、はいと返事をした。

「大祭の三日間だけ、伊吹がこの医局のあたりに

お札をベタベタと貼っていくんだ。魔除らしい。

逃げられないものを守れるようにしているらしいんだ。

だから、建物の中は安全だ。そして、その効力が

建物の外のある範疇までは、守るようにできているらしいんだ。

良いか、覚えておけよ?」

「はい、分かりました。でも、それなら尚更、私が近くに居ない方が……」

そう言いかけたとき、蒼がキューっと鳴いた。

「蒼?!」

見ると蒼は首を振っている。

「わかった、わかったよ、蒼。どうしても手に負えない時は

医局までくるね」

「キュッ」

私が仁様の話に納得すると、蒼は再びニコニコとした。


「雫、蒼の様子をよく見ておきなさい」

実道様に言われて、私は素直に頷いた。

「蒼が全てを分かるわけではなさそうです。

でも、全てが分からない訳ではない。

私の言っていることが分かりますね。雫?」

「はい、よく分かります」

「蒼は、貴方に名をもらい、貴方と一緒に成長するのかもしれません。

そのことを忘れないように」

「はい、分かりました」

実道様の話に、蒼の顔を見ながら頷いたのだった。







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