技巧
この國の鍛冶屋は、刀鍛冶と呼ばれる明確な区切りはないらしい。
商品は、色々なものがあって依頼されれば作りますよという感じ。
だから、生活用品が多いんだって。料理包丁や、農具のクワやスキ、
草刈り用のカマとか、お鍋や、フライパンのような物。
カナヅチや、カンナ削り、クギのような大工用具。
では刀はどうしているのかと思ったら、鍛冶屋さんの中から、
その時々で、依頼されたり職人の推薦があった人が、
刀身をうつんだって。
とは言っても、やっぱりそこは人情で、お気に入りの鍛冶屋さんだったり、
評判の鍛冶屋さんに頼むのが多くなるみたい。
小春は、何百年も前の文献を調べてくれているの。
彼女の専門は、何と植物だった。植物を分類し、
元の世界にはあって当たり前だった図鑑を作っているのよ。
本当は、植物がどういった進化を遂げたのかを研究したいらしいんだけど、
図鑑がないから、そこからなんだって。外国の文献も読んでいて、
絵師と相談しながら、綿密な打ち合わせは、本当に大変そう。
でも、その合間をぬって、私自身に興味があるからと、
召喚された過去の人物を調べてくれているの。
文献が、あまりにも少なくて不思議だって話してた。
他の國には、こう言う召喚の術ってあるの?って聞いたら、
小春は、まじまじと私を見て
「そうね、他の國でもあったけど隠しているかもしれないわよね」
と言って、橙矢様と相談してみるって決めていた。
それぞれが思案し出したとき、変わらなかったのは伊吹様。
それはそうよね、思いつく限りのことを他の祈りの民に考えてもらっていて、
必要があれば、彼にはお話に来る人がいるんだもの。
やっぱりニコニコしている人がいるとホッとするものね。
それだけで、あ、焦んなくて良いんだって立ち止まって一息つける。
うん、この一息つくって大切なんだと思う。
私とかは特にね。好きなことだと夢中になってのめり込んじゃうから。
顔をあげると、他の景色を見て良いんだって思えるの大切にしようと思った。
そして、稽古は……。ええ、難しいことが増えました……。
動態視力をあげる必要が……。ついでに、走る速さも早くする必要が……。
特に私は、隼を帯同しているから歩くのも、やっと慣れた所なんだもの。
実道様が、にっこりと私に言うのよ。
「雫、大丈夫です。私が走る稽古に付き合いましょう。
コツがあるのですよ。そのうち速さも距離も伸びてきます」
……はい、頑張ります……。
そんな準備で毎日明け暮れているうちに、秋の大祭の時期になっていた。




