先触
この國で一番大きな祭り、大祭は秋に入って収穫がすぎる前に
行われているんだって。地方では、色々な時にお祭りが開かれて、
生活に楽しみをもたらしている。
春は、食物の芽が大切に育ちますように、夏は潤いの雨に恵まれますように、
秋は平穏に生活が過ごせ、実り豊かになりますように、
冬は、雪が降って、春の芽に栄養が行き渡りますように。
この國には、酪農もあるし、工芸もある。でも全ては豊かな実りからって
考えだから、大祭はとても重要みたい。
そして、地方との違いが一つ。
祈りの民が、影向様からのお告げをみんなに知らすことのできる日。
別に特別な事を、おっしゃるわけではないんですって。
でも、そこが大切みたい。いつもと変わらず平穏であることに感謝して、
さあ、たくさん収穫して冬に備えようって、また季節の移り変わりを感じる。
そこに、この國の人達の幸せがあるんだって。
……やっぱり、この感謝が人への親切に繋がるのかなぁって思うのよ。
清志郎様以下、剣士の部門も忙しくなる時期なの。
一度は伊吹様達を見てみたいと、都に登ってくる人もいるから。
当然、お酒も入れば、揉め事も増えるし、
サギもひったくりも出没すると言うわけ。
宿屋も、料理屋も賑わうし、ここでしか買えない反物や、女性用の小物、
男性は、タバコ入れや、お洒落なキセル。……ちょっとわかる気がする。
欲しいものを買う事を目標に、一年間頑張る人だっているよね。
私も、……実は欲しいものができたのよ!!
仕事着があれば、私の生活は困らないし、簪もしていくところがない。
ちょっと隼を手放せないから、しょうがないのよね。
でも……、ふふふっ……、古書店を見つけてしまったの!!!
これが、本当に面白くて……!!
この國は、紙が豊富にあるので、貸本屋は流行っていないんだって。
まあ、高価ではあるけど買おうと思えば買える値段。
有名な作家や、お芝居の脚本家なんかもいるんだって。
古書店は、いわばマニア向けの本を取り扱うことが多かったり、
人気の小説の初版、こっちは初版は、必ず作者が自分で書くんだって!!
その初版本を、取り扱っているみたいなの。
よって……、ええ、高価です。偽物もあります。だから注意が必要です。
私には、小春達、精鋭がついていてくれるので、
そこの心配はしなくて済むのがありがたい。
いただいたお給金を少しずつ貯めるのも
買うときの楽しみよね? え? 私だけ?……貧乏性……?
そういえば、いろんなタイプの買い方があったよね。
どうしても欲しい時に手に入れて、コツコツリボ払いの友達……。
見ると、絶対に買いたくなるので、お金が貯まってから
お店に行く友達……。私のように値段を知ってから貯める友達……。
こっちには、当然カードがないからリボ払いではないの。
代わりにツケで、コツコツ返す人はいるみたい。
古書店では、返す期間が長いほど、利子が高くなるから、
ツケで買う人は、ほとんどいないんだって。
みんな、堅実!!
そんなんで、みんな警備に駆り出されるの。
もちろん私も。街中は正体がバレると困るので、
屋敷内で、常時警備になっているの。
もちろん、兄弟子の実道様とだけど。
今日も実道様から、屋敷を警護するときの講習会なの。
警備するには、屋敷ならではの決まりや注意があるんだって。
まず、1番手厚くしなければならないのは、屋敷の正門。
それはそうだわ。次は、祈りの民の社の近辺。
その次は、お屋敷ではなくて、船着場なんだって。
そして、それと同じくらい大切なのは、屋敷裏の塀。
う〜ん、あれだけ人員がいれば、入ろうと思わないんじゃないのかな?
大祭は三日間あるの。初日と二日目は街中の祈り場で、三日目に
屋敷内の社に、やっとお参りすることができるの。
「いいですか、雫。我らは目立ってはいけません。
ここでしっかり見張っているぞ、と見える役目は
他の剣士に任せるのです。我らは、非番の剣士のように
柔らかく振舞うのです」
「はい、実道様。それで、賊や、悪さをする人を油断させられるんですか?」
「ええ。充分に効果はあります
。皆、気分が高揚して、はしゃいでいますからね。
その分、悪さをするものは、顔つきが違います。
一目で分かりますよ」
おお〜、なるほど。そんな興奮して喜んでいる人達の中に、
真剣な顔している人や、キョロキョロしている人がいたら、
それは、丸わかりよね。人探ししてるのかもしれないけど、
それなら名前を読んだりする気がするもの。
やっぱり、人が受け継ぐ感覚って大切なんだなって
改めて確認しちゃった。
私は小さいから、尚のこと丁度いいんだって。
そうね、相手が荒くれ者なら、間違いなく馬鹿にされる自信がある。
まあ、捕物がないに越したことはないけど、
初の普通の任務、頑張ろう!!




