経過
初めて自分で浄化をし、そして合わせて盛大に失敗もし、
めちゃくちゃへこんでいた私は、皆の気遣いによって、
少しずつ浮上していった。特に華様。
突然、私に見て欲しいものがあると言って、稽古の後に
着物の見立てを頼まれた。正直なところ、少し驚いたの。
華様は、私が稽古の後は疲れていることを知っているから、
無理を言い出すなんてこと、一度もなかったんだもの。
でも、たってのお願いと言われ、何か大切なことがある時に
着るのかも、他の人じゃ、相談しにくいのかな?って思って、
私では役立つか分かりませんよと言って、華様の部屋に通されたのよ。
女官さんに頼んで、三着の打掛が出ていたの。
珍しく蒼も一緒についてきて、私の膝の上でニコニコしながら見てたのよ。
蒼にも意見があるらしく、華様にどっちが好き?と聞かれ、
気に入った淡いピンクの打掛の時にキュッと鳴いていた。
私の小鬼は、女の子が好きなのか……?
小鬼にも色々な手伝い方があって、もちろん男性を手伝う小鬼だっているのよ。
街の料理人だけでなく、文人の手伝いもするの。
墨をすったり、書簡を乾かしたり、色々な手伝いができる。
蒼は、誰が見ても女性に可愛がられている。
一生懸命、手振りで教えるので、一段と可愛いんだもの。
そんなこんなで、それからしばらくの間、華様は私を誘い続けたの。
次第に元気を取り戻した私は、改めて華様が私を元気付けるために
誘い続けてくれたんだって、本当にじんわりと心が暖まって、
ありがとうって心を込めて言えたのよ。
そうして、私の稽古も次の段階に移って行ったの。
清志郎様から、間者に対応するための稽古も入れると聞かされ、
実は、人ごとの様に、おお〜〜、忍者のことね?
すご〜い、技とか見てみたいな〜〜、なんて考えていた私がバカだった。
本当、反省したばかりだったのに……。
いつもの稽古の後、その稽古は始まるんだけど、
最初は、正座しているところから隼の刀身を抜き、立ち上がる稽古。
これが、……気が遠くなるほど難しかった……!!!
そう、よく考えればおかしい稽古ではないのよ。
だって、相手は忍びでしょ?普通の体勢の時に、挑んでくれないよねぇ……。
ああ、これが居合道だ……。
そこから、黙々と同じ型の稽古に明け暮れる日が始まったのよ。
清志郎様も、実道様も、難なくできるのよね……。
目指せ師匠!! 瞬時に立てる様になりたいなぁ……。
時々、授業をしてもらうために道場に迎えにきてくれる伊吹様が、
うんうんと微笑みながら、
「大丈夫ですよ、雫様。まだ刻は充分にあります」
と、予言して良かったのやら、どうやら……。
はい、焦らず毎日稽古します……。
その合間に、菊次郎様は少し膨れながら、私の手足をケアしているの。
「雫様、疲れたら遠慮なく、お話ください。無理をなさらない様に。
ああ、また小さな足に豆が……。良いですか?
きつくなったら、必ず清志郎様にお話ください」
菊次郎様も、仁様も、実道様と同じ様に、どんどん過保護になっていて、
清志郎様と、小春に、大笑いされているのよ。
そんな中、ただ1人冷静に、私にも容赦ない人物、橙矢様。
彼は、私に授業をし、冷静にその授業料として、
私の元の世界の情報を聞き出していくの。
さすが、参謀……。じゃっかん腹黒系な気も……。
橙矢様は、ニヤリと笑って、お前に授業するのも悪くないって
楽しそうにしているのよ。
まあ、お役に立つなら、いくらでも話したいんですけどね。
……ご褒美に、宿題は勘弁してください……。稽古で手一杯なんですよ?
こんな感じで、浮上した私は、次の一歩に踏み出したのだった。




