成果
私は、順調に実力をつけたのだと思う。そう、普通ならありえないほど順調に……。
自分の気が、どのほどの大きさで、どのほどの威力があるのか。
それがハッキリと掴めなかっただけで、自分の気は大きさを増減できるようになっていた。
今日は、午後から社会見学の日だ。清志郎様は、街中や色々な人から話を聞くたびに
強く、そして技をものにしていく私をみて、週末以外に週に2日間の午後を稽古ではなく
社会見学にするように決定したの。
そのうちの一日を、私は小春が通う町の学問所へ行き、
授業を受けることにしていた。ようやく文字がすらすらと読めて、
下手なりに書けるようになったのよ。
これなら教科書も読めるからって、小春が勧めてくれたの。
私は、どうぜ習うならと興味のあるこの國の歴史について
授業を受けることにしたのよ。
みっちりと1時間、授業を受けると小春と街中の甘味やへ行くのが
お決まりのコースになっていた。
実道様は、常に私の護衛をすることになっているから、
当然、一緒に甘味屋へ……。あまり甘いものは召し上がらない実道様は
笑って、気にせず好きな店に行くようにと話してくれていた。
そして、お茶を頼んで静かに私たちの話を聞いているの。
今日は、葛餅を堪能して、小春と次は何を頼もうかと話に花を咲かせ、
いつもの小道に入る所だった。
突然、私の全身に鳥肌が立ったの……。
なにっ?!?!?!
ガッと周りを見渡して、隼を持っている左手にグッと力が入る。
マズイ……!! どこに……。
「実道様、小春を連れて、大通りに戻ってください」
小声で話すと、実道様はなにも言わず小春を連れて行ってくれた。
良かった、取り込まれる可能性があるんだから人は少ない方がいい。
私は、まだ一度も一人きりで怖いものに遭遇したことがなかった。
いつでも誰かが私の側に居てくれた。
あれに遭遇するのは3度目だ……。自立するんだから、稽古もしたんだから、
1人でもできる……!!
覚悟を決めた私は、隼をいつでも抜けるように構え、
小道の前方を注視した。その小道は、建物と建物の間にあって、
人が2人肩を並べて通れるかどうかという幅の小道だった。
夕暮れ時になっていたので、大通りはまだ明るいが、
小道には日陰ができている。見通しは良いとは言えない明るさだった。
私は構えて、小さく深呼吸した。静かに動かずに、ジッと前方を見ると……。
……居た。あの影だ。日に当たっていないからか、いつもよりも
影が濃い色に見える。うん……たぶん、今まで見た中で1番念が強い……。
いつもは慌てていたから、よく見えなかったけど、
今日は影の様子を冷静に観察できた。
黒い一色に見えるけど、それは炎のようにユラユラと揺れている。
まるで、いく筋かの空気が絡み合うように揺れていた。
私は、静かに自分の丹田に気を集めはじめた。実はこっそりと
試そうと思っていたことがあったのだ。
私には、自分の気も皆と同じ光のたまに見える。
それを少しずつ大きくしていった。用心深く、少しずつ、少しずつ……。
ある大きさになった瞬間、影は突然揺らめきを大きくした。
いまだ!!!
私は、走って影へ近づき祈りを込めて影を切った
どうか、これで天に帰れますように……!!!
空間を切る手応え……。それは、バッと何かが切り裂かれる音もするの。
そして、キラキラした光に影が生まれ変わったとき、
隼はフッと軽くなる。
……できた?
私が見たとき、やっぱりそれはキラキラと空へ昇っていった。
良かった……、できたんだ……。
影が空へ帰っていくのを確かめたとき、ようやく私は
仕事の手応えを掴んでいた。
「雫!!!」
後ろから実道様の、焦った声がする。
うん、今度は倒れなかったよ。
私は、この國に呼ばれて初めて、
ようやく微笑んで実道様を振り返ることができた。




