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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
一の巻
22/153

糸口

 ここの世界の茶道は、とてもシンプルだった。

まず、茶器を愛でる時間がない。

その都度、自分だけと出会う茶器を大切にするためなんだって。

何度も同じ茶器が出るってことは、縁があると考えるらしいの。

だから、茶器はかなりの数を所有することになるみたい。

師匠同士で貸し借りしたり、期間を決めて貸し出し期間を設けて

高額にならないように工夫するみたいなの。


お抹茶も作る技術があるんだ……。

改めて、そう認識した。時々、思いもよらぬところで

異世界なんだなぁって実感することがあるの。

うん、油断大敵。突然だと、まだ少しショックを受けちゃうんだよね。


後は、飲み方もお菓子のいただきかたも同じだった。

懐石料理とのお茶席もあるのかな?あとで聞いてみよう。


色々な事を考えながら座っていた私の視線は、

実は香代様のお腹の光に釘付けだった。

……一体、なんだろう? 最初は見えなかったのに、どうして……?


香代様は、とても優雅に流れるような動作で、お茶を立てていた。

背筋を伸ばすと、その小さな光はより強い光になったように思う。

観察するだけで、それが何かわかるはずも、思いつくはずもなく、

美味しいお茶の時間は終了してしまったの。

お抹茶って、立てる人が上手だと

クリーミーで美味しく感じるんだよね。私だけ?


お礼を言って、庭の見える部屋に戻った時、

後から香代様もいらしゃったの。


……あれ? 光ってない……。何で?

香代様のお腹は、もう光っていなかった。

……見間違い? ううん、そんな事はないはず。

だってお手前の間中、光っていたもの……。

ええい、素直に聞いちゃおう。


「あの、お尋ねしたいことがあるんですが……」

困惑している私に、その場にいる皆が驚いていた。

特に香代様は、私の風習に合わないことがあったのかと

とても気にしてくださった。


「いえいえ、そうではありません。お手前、とても美しかったですし、

美味しかったのです。お尋ねしたいのは、全然別の内容で……」

私が切り出すと、清志郎様は静かに私を見た。

「雫、言ってみなさい。遠慮はいらん」

「……はい。実は……」

私は、自分が体験したままに話を伝えた。


「なるほど、雫には光って見えたのだな?

千隼様、実道、お前達はどうだ?」

2人は清志郎様に尋ねられて、ゆっくりと首を横に振っていた。

……やっぱり……、私にしか見えていないんだ。

清志郎様は、腕を組んでじっと考え込んでいた。

隣に座っている香代様を見つめ、しばらく考えているようだった。


「なぜ光って見えたんでしょうか?

それにずっと光っていたわけではないんです。

茶室に呼んでいただいた時だけでした」

私は、答えをもらおうと期待せず、思ったままに疑問を口にしたの。

そうしたら清志郎様が、パッと顔をあげたのよ。


「香代、茶を立てる時に何か気をつけている事はあるのか?」

「気をつけている事ですか……?

まず、……心を込める事でしょうか?

それから……、そうですね、……心の芯が曲がらぬよう、

姿勢を正し、気を込めます……」


香代様が、そう答えてくださった瞬間、私と千隼様は声をそろえた。

「それです!!!」


興奮して私は、千隼様と話まくった。

「千隼様、気が見えたのかも!!」

「ええ、雫様。私もそう思います。気が見えれば量が分かる。

今まで他に気が見えた事は?」

「稽古に夢中で、他の方で見えた覚えはないの。

でも注意していれば見えるようになるかも!!!」

「そうですね、やはり余裕が必要かと思います。

良かった、成功のカケラをつかんだやもしれません!」


盛り上がっている私たちに、香代様は驚いて清志郎様と私たちを交互に見ていた。

「香代、手柄だ。さすが私の自慢の妻だ」

にっこりと微笑む清志郎様に、香代様は戸惑いながらも頬を赤らめた。

なんて女子力!!香代様、素敵です……!!

「さて、自慢の妻に褒美をやらねばならんな。何が欲しい?

そうだな、呉服屋に行きたいと言っていたな。茶器を購入する計画もあったろう。

何が希望か、話してみると良い」

「……まあ、旦那様……。そんな……。何やらよく分かりませんが

雫様のお役に立てたのであれば、それで充分でございます」

恥じらいながら、頬を袖で隠す香代様は、とても愛らしい。

私から見ても、その魅力は充分感じ取れた。

「まあそう言うな。せっかくだ、次の休みはお前をと出かけよう。良いな?」

「……はい、旦那様……」


実道様が、天井を見上げた。……実道様、同感です。


師匠、ごちそうさまです!!


……お腹いっぱい……。

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