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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
一の巻
16/153

反面

 医局は、とても整然としていた。たぶん、感染症予防なんだろう。

完全に独立した小さな棟になっていた。

まず、畳ではなく板の間になっている。

棚には色々な器具が置いてあったけど、何の道具かは分からなかった。

患者を横たえるためなんだろうと思うけど、簡易のベッドのようなものがある。

もちろんマットレスなんてあるわけはないが(あっても良かったんだけど……)

板の間に寝るような感じになるんだろうなぁ。


「雫、体調はどうだい?」

「体調は良いですよ」

「そうか、なら休憩する部屋で話を聞こう。悪いな、なるべく患者のために

観たてる部屋は空けておきたいんだ」

仁様はそういうと、皆が休憩する部屋に通してくれた。


「皆、連れてきたぞ〜〜」

仁様が声をかけたのは、医局の皆さんのようだった。

薬師は別の棟なので、本当に診療する人しかいないそうだ。

ちゃんと女医さんもいるし、男性の看護士もいた。

私の元の世界への偏見だろうか。

女性も男性も、なりたい職業になれない時代があったことに

反応しているみたいにそう思った。

本当に能力主義のようで、男女に関係なく職につけるみたい。

工業的な発展はしていないので、レーザー治療などはないけど

外科的な手術もできるようだ。そうか……レントゲンがないから、

なかなか難しそうだよね。


皆の時間がなかったらしく、本当に私に一目合うだけのために

待っていてくれたらしい。今度ゆっくり話そうと言って、持ち場に戻って行った。


「どうだ?雫の世界とは、かなり違うんだろう?

医局もだいぶ違うか?」

「はい。でも想像していたより、進んでいました。

しっかり理論に基づいた医学を持っているんですね」

そう答えると、仁様は驚いた顔で私を見た。


「まあ、そこに座ると良い。……理論に基づいた医学ね……。

君の世界は、何を持って医学の理論になるんだ?」

今度は休憩室の畳にホッとしながら、長机の前に座ろうとしていた私が、

その質問に驚く番だった。


……この方は……。

私はジッと仁様を見た。

この世界に来て、私の方が人をジッと見るのは初めての気がする。

この人は軽く見える。会話も上手だ。人の気持ちを和らげるのも上手。

でも……。何かに傷ついてるように見える。この人は医師だ。

本人が望んだのかどうかは分からないが、留学までしている。

彼の傷は、助けられなかった命に対してだろうか?

考えた挙句、私は私の欲求に素直に従った。

まずは正攻法で攻める!!


「仁様」

正攻法には、誠実な態度が1番だ。だから、私は稽古の時のように

居住いを正した。

「私は医師ではありません。ですから、自分自身が受けた治療についてしか

話すことができません。器具もそうです。

たぶん、私の世界の器具の方が進んでいます。検査方法も。

それがあれば、仁様の願いに近づくことができるかもしれない。

でも、私の専門は違います。こんな感じでしたとしか話せません。

原理を説明はできますが、それを実現させる方法を知りません。

それでもよろしければ、いくらでもお話しします」


この時初めて仁様は、真面目な顔をしていた。

でも、気の張り詰めた私の緊張を(ほど)くかのように

フッっと微笑んだ

「君は、どうやら(さと)いらしい。そうだな、できれば聞かせて欲しい。

知識はあって困ることはない。技術は後から追いつくかもしれない。

書き記しておけば、後世の連中の役に立つかもしれない。

だから、雫。よろしく頼む」

そう言って頭を下げた仁様に、私は唖然としていた。


人は見かけで判断してはいけない。

このことを、これほど実感した時があっただろうか?

医は仁術なり……。仁術の仁と、仁様の仁。

偶然なのかどうか、一緒の漢字だ。

この人のことを何も知らないけれど……。

真摯な仁様には、本心をさらしても良いような気がする……。


勇隼様が、私の為に人選したとおっしゃっていた。

彼に狙いがあったのか、はたまた本能で選んだのかは分からない。

でも私はすっかり、関わる人たちに絆されつつあったのだ。

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