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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
一の巻
15/153

伏兵

  小春との特訓に疲れた私は、授業後に彼女と喜んで休憩したの。

小春は(くりや)、つまり台所にお茶と甘味を頼んでくれて、

持ってきてくれた。女官さんは台所って言っていたけど、

正式には厨っていうんだそうだ。


大きな宴会を開いていただいた時は、ご挨拶に明け暮れていたから

デザート食べ損ねていたの!!

美味しそうな和菓子、たぶん練り切りだったり、お団子だったり、

葛餅もあったから、残念に思っていたんだよね。


目の前に置いてくれたお菓子は、綺麗な練り切りだった。

庭にある百日紅(さるすべり)の鮮やかな花を模したお菓子。

綺麗!!!

たぶん顔がゆるんでいたんだろうと思う。小春に笑われてしまった……。


この世界にきて、初めての女子会(2人だけど)を満喫していると、

そこへヒョコッと顔を出した人物がいた。

……ウィンク医師だ……。


「なんだ、まだここに居たのか。雫と茶を飲もうと思って、

探していたんだぞ」

そう言って入ってきた仁様は、手にしていたお盆を机の上に置き、

私の隣にドッカリと座った。思わずソソっと横にずれる。

その私を見て、ニンマリと笑った仁様はカッカッカと笑っていた。

「なんだ、随分と警戒されたな。しまった、真向かいに座るべきだったか?

雫の隣で嬉しいが、可愛い顔が見えないな」


そんな仁様は、これが通常運転なのだろう。

向かいに座っている小春が、ハァ〜っとため息をついて

私に大丈夫だからと言った。

「雫、怯えなくても大丈夫。この人は、女性と見ればこんな感じなので。

仁様、貴方も距離が近すぎるんですよ。雫に嫌われますよ?」

小春にたしなめられた仁様は、変わらずニコニコしながら私を眺めていた。

「嫌われるのはイヤだなぁ。オッ、練り切りか。この季節のは鮮やかだよな。

俺は団子をもらってきてやったんだぞ。ほら、2人とも食べると良い」


みたらし団子だ……!!いや、油断大敵。これで味が違ったらショックだ。

恐る恐る、口に運ぶと……、やった!!!みたらし団子だ!!

はあ〜〜、良かった!!これでまさかのソース味とかだったら泣いちゃうよ。


「料理は口に合うんだな」

仁様はくだけたようにあぐらをかき、机に肩肘をついて頬を乗せ、

団子を堪能している私を、観察しているようだった。

……油断大敵……、やっぱり仕事はできそうだわ……。


「食事は、元の世界とほとんど変わらないと思います。

料理の種類はこちらの方が少ないけど……」

「種類?」

「ええ。私の育った国は、伝統的な自分の国料理と、他の国料理を

食べられたんです。ここの料理は、伝統的な料理とほぼ一緒だと思います」

「へえ〜、そりゃあ豊かな国だな」

「はい、恵まれた国だと思います」


それを聞いていた小春は、少し首を傾げて

私に質問をし出した。

「雫、他の種類の料理も食べたくなるのでは?」

「ああ、その内なるかもね。ま、その時は料理すれば良いし」


そう言った私に、2人はこちらが驚くほどの反応をしました。

「雫、料理ができるのか?!」

仁様のすごい勢いに押されながら、私はコクコクと頷いた。

「え?? たぶん、できると思います。

そりゃあ出来ますよ。元の世界では庶民ですもん。

あ、でも確認しないといけないけど。

だって小鬼に手伝ってもらったりするんでしょう?」

「もう小鬼に会ったのか?」

「ええ、毎朝、目が覚めると部屋で遊んでいるので……。

女官さんが好きで手伝ってくれる子が、この屋敷にたくさんいるって

聞いたんですけど……。毎朝、遊びにきてくれているみたいです」


私が答えると、仁様と小春は真顔で見合っていた。

……料理するのは専門家がいて、やっちゃいけないとかなの……?

マズかった?という表情をしていた私に、小春が事情を説明してくれた。

「雫、私たちは一応、料理を習うの。自立したときに出来ないと困るから。

でも大きな家、どんな仕事でも良いんだけど、使用人を抱える家では

料理の専門職がいるの。それから、……小鬼は、簡単には懐かないのよ」

「え?! 初日から居たよ?コロコロ転げ回って、すごく可愛かったの。

そういえば小鬼ってどうやって数えるの?1人?1匹?」

「普通は一鬼(いっき)と数えるわ。変えがたい仲間だから」

「おお〜〜、そうなのね。それは覚えておかなくちゃ。

元の世界に、その数え方はなかった気がする」

「その小鬼は遊んでいるだけなのね?」

「うん。ひとしきり遊ぶと、抱っこしてってしがみついてくるの。

6……、六鬼(ろっき)?いるから大変だけど、可愛いよ。

そうしてると女官さんがきてくれて、お手伝いに行っているみたい」


私が素直に、あった出来事を話すと

またしても2人は面食らったようになっていた。

仁様は、顎をサスって呟いている。

「六鬼か……。凄まじい数だな」

「えっ?! そうなんですか?!」


なんのことか分からず、キョロキョロする私に、

仁様は人誑(ひとたら)しの見本のようにニヤリと笑っていた 。


「雫、雫は俺たちにも至宝をもたらしくれそうだ。

いや、面白いことになったな。さ、たらふく食べたな?

次は俺の番だ。じっくり何でも答えてやるぞ。

その代わり、俺の質問にも答えてもらう」


……本当に大丈夫なんだよね?

助けを求めるように小春を見ると、小春は大きなため息を付きながら、

心配いらないと保証してくれた。


……小春、信じているからね!!!


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