相違
私は、出申帝国と着珠王国の知識を
叩き込まれることになったの。
翼賛の國は、至宝様が来たことを公にしているから
もし、外交で内密に問われた時に、どこまで隠せるかは
やってみないと分からないんだって。
存在自体は大祭もあったし知られてしまっていると思って
間違いないみたい。……ええ〜〜〜、バレてるの? もう? 早くない?
と思っていたら、どこの國にも間者は入り込んでいるもんだって。
「雫、国交はあるものの、二国とも我らの出方を窺っている段階だ。
まず、我が國に来るには航海をしなければならん。
これは、大陸にいくつもの国があるものにとっては
面倒でしかないのだ。陸路の方が楽だし、費用もかからんからな」
「海を走る航海術というのは発達しているんですか?」
「どの国も良いところがある、つまり拮抗している実力だ」
橙矢様の説明に、ふんふんと頷く私。そういえば、橙矢様も留学してたって……。
「橙矢様は、どちらの国に行ってらしたんですか?」
「どちらもだ」
「言葉は?二国とも同じですか?」
「ほぼ違いはないが、数の数え方の言い方が違ったり、書き方が違ったり、
物の名前が違ったりなどはある」
「橙矢様、先に橙矢様が思っている私的な感想を聞いてみたいです」
「私的な感想?」
「はい。参謀としてではなく、もし橙矢様が、その国に住むことになったとしたら、
どんなことが便利か、不便か、慣れるところ、慣れないところ、
これはやってみたい、これはやりたくない。色々あるでしょう?」
「……お前、……やはりお前は面白い……」
最近減り気味だった魔王のニヤリが出てきた……!!!
そうよね、そうこなくっちゃ橙矢様。
「私なら着珠王国に住むことを望む」
「何故ですか?王族でなくとも、能力があれば仕事が得られる。
そして王族ではないので面倒な責任は持たずとも良い」
「と、いうことは出申帝国は、その反対ということですか?」
「私は、客人という立場があったのでな。さして面倒なことにならなんだ。
でも帝国というのは世襲制をとっていないようでも
血の繋がりは重要なのだ。要は親戚に頼めば士官がかなうという
まか不思議なことが起こる」
「能力の高い人は、やっかまれる?」
「そのようなこともあろうな。おかげで、皆が腹の探り合いだ。
不得意ではないが、翼賛の國の出身からすれば
そのような日常はごめんだ。それが本音になろうな」
「なんだか暗い印象の国ですね……」
「雫、どの国にも腹のさぐり合いはある。我が國にもだ。
帝国は、その中でも群を抜いて心を配る必要があるということだ」
「得意な産業はなんですか?」
「どちらも一定の文化を誇っておる。着珠王国は特に医療に力を入れておる。
仁が勉強にいったさきだ。我が國の治療法より、かなり進んでおるそうだ。
出申帝国は、工芸に優れておる。立派な職人が多いのだ。
生活に必要な工芸品、それを大量に作る工場、なんでも大きく大量にというのが
特徴になるであろう」
「それって……、武器も含まれるんですよね……」
思わずいやぁな顔をしてしまった……。
「何故そう思う?」
「国内で、役職の奪い合いが激しい国ほど、外に領土を拡大しようとしませんか?
だって、国が潤えば人が増える。良いことですけど競争も増えます。
それが純粋に、お互いに励ましあえるような競争であれば良いですよ?
でも、血縁を頼らなければならないとなると話は違います。
影で争いの種が、いくらでも広がっていきます。
役職がないのなら他国を奪えば良いと、短絡的な人が出てきても
おかしくありません」
「なるほどな」
「これが、その国が戦乱や内乱が起きているならば、
争いを治めたくて立ち上がる人が出るかもしれません。
でも状況は、そうではないのですよね?」
「そうだな、どちらの国も平和と言えるであろう」
「では、まだ煙は立っていません。でも策略はあるかもしれない。
それに呼ばれしものが関わっているとしたら……。
私だったら、嫌です。人の安心のために働くなら
いくらでも協力しますけど、国主の私利私欲のために働くのは
ごめんです。自分で策を練るでしょう。騙されたと思うかも。
まあ、まだ想像でしかありませんけどね。
それで、楽しいことはなんでした?」
「お前、この話の後に……。まあ良いか、それでこそ雫であろう」
「ええ、橙矢様。どんな時にも楽しみは必要なのです」
橙矢様は、少し柔らかく笑っていた。
「そうだな、食べ物が合わずに苦労した。
が、着珠王国の飯炒めは美味かった」
「飯炒め?」
「そうなのだ。我が國とは道具も違っておってな。
材料は同じなのに、違う食べ物が出来上がるのだ。
卵を炒ってあったり、肉を細かく切ったものや
ネギも入っておった。料理人がいうには、鶏で出汁をとった
スープ、汁物だな、それを少し入れるのがコツなのだそうだ。
あれは美味い」
その話を聞いて、私の瞳は過去一で輝いていただろう。
だって、それって……!!! たぶん、チャーハン???
美味しそうだ。そして、これって中華料理に近づく方法ができたってこと?!
「雫、お前……、これは授業だぞ?」
「ええ、もちろん分かってますとも!!でも、もう少し料理の話が聞きたいです!!!」
橙矢様は、呆れたように笑っていた。
「分かった。いくらでも話してやるから、楽しみは後だ。
膨れても譲らんぞ。お前の安全がかかっておるのだ。
……雫、分かったな……?」
ここで真面目に戻らなくても……。
私は、渋々授業に話を戻したのだった。




