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零からの魔法回路 〜世界システムをハックする反逆のSE〜  作者: ラレイラ
第三章:交錯する影と盤上の手札

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第87話 ビルド開始の鐘

「――おいおい、どれ一つとして滅多にお目にかかれねぇ極上素材じゃ……。カイト、おぬし一体どうやってこれを手に入れおった……!?」


ボリスの工房に足を踏み入れるなり、ドワーフの鍛冶職人ボリスは眼前の光景に目を見開き、フサフサの髭を揺らした。


作業台の上に並べられたのは、周囲の空間を青く歪ませる【高純度霊核結晶(フラスコ・コア)】、不純物が削ぎ落され漆黒に光り輝く【深淵の黒粘土(プライマル・スラッジ)】、そしてガラス容器の内部でドクドクと自律的な脈動を打ち続ける【竜の脈動血(ドラゴン・バイタル)】。


「楓さんの完璧なナビゲートと、現場でのログ解析(ハッキング)のおかげだよ」


カイトは透明コンソールを慣れた手つきで操作し、三つの素材の測定データをボリスの巨大な魔導モニターへ転送(キャスト)する。


「素材の純度、魔力伝達率、伸縮性のパラメータはすべて想定値(仕様書)をクリアしている。ボリス、工房の設備を借りて、すぐに組み上げ(ビルド)に入りたい」


「ガハハ! 言われんでも工房の鍛造炉も錬金釜も、とっくに最高温度まで焚きつけてあるわい! だがなカイト、これほどの神級素材を一つに練りあわせるとなると、並の鍛冶や錬金術じゃ一瞬で反発を起こして爆発するぞ」


「だからこそ、異種プロトコルの調停(ブリッジ)が必要になる」


カイトは指先をコンソール上で走らせ、開発中のシステム構成図を展開した。


(――開発環境セットアップ。統合開発環境(IDE)『Magic-SE v3.4』起動)


(――プロジェクト読込:『生体プロキシ - Living Proxy v2.0』)


宙に浮かぶ幾何学的なホログラムが、人型のシルエットを描き出す。骨格に【高純度霊核結晶(フラスコ・コア)】、肉体と皮膚に【深淵の黒粘土(プライマル・スラッジ)】、そして全身を巡る血管系に【竜の脈動血(ドラゴン・バイタル)】。三つの素材が完璧な役割分担で繋ぎ合わされるグラフィックだ。


「まずは第一段階――フラスコ・コアを核《システムストレージ》として固定し、その周囲に黒粘土で柔軟な生体フレームを構成する。ボリス、炉の温度をパラメータ通りに制御してくれ」


「任せておけ! ドワーフの鍛冶魂、見せてやるわい!」


ボリスが巨大な槌を振り下ろし、炉の火柱が青く燃え上がる。


「楓さんは工房周囲の魔力干渉を遮断(エアギャップ)し、ノイズが入らないよう警戒をお願いします」


「御意に、カイト様。蚊の一匹たりともこの工房へは近づけさせません」


楓が印を結び、静かに息を呑む。


「久遠流忍術――『潜影断界(せんえいだんかい)』」


楓の身体が影へと溶け込むように霞み、一瞬で工房の梁(はり)の上へと躍り出た。完璧に存在感と気配を断ち切った彼女は、影の中から工房全体と外部を鋭い眼光で警戒し始める。


「よし――全モジュール、コンパイル準備完了。ビルドプロセスを開始する」


カイトの指がキーを叩くたび、青い幾何学コードが三つの素材を包み込み、ゆっくりと一つの「人型」へと融合を始めていく。


カイトの魔法出力を極限まで引き上げるための相棒――『生体プロキシ - Living Proxy v2.0』の組み上げが、ついに始まった。

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