↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
零からの魔法回路 〜世界システムをハックする反逆のSE〜  作者: ラレイラ
第二章:漆黒の檻と深層の侵蝕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/102

第36話 裏口(バックドア)の共鳴と歪む空間

療養生活が4日目の夜を迎えた。


特別療養房(メディカル・セル)の冷たい空気の中、カイトはベッドの上で規則正しい寝息を立てるふりをしながら、意識を自身の内側へと深く沈めていた。日中のリハビリや主治医のエリカとのやり取りを終え、房内が完全に静まり返ったこの夜の時間こそが、監視の目を盗んで要塞の深部へと食い込むための絶好のチャンスだった。


すでにこの特別区画のインフラには、秘密裏に幾重もの裏口(バックドア)が構築されている。新たなファイアウォールを強引に突破する必要などない。カイトは静かにそのバックドアを経由し、神聖術式監査局(アーク・コード)の中枢ネットワークへと無音でアクセスを果たした。


(――よし、夜間の定時巡回と監視カメラのログは正常ループ中。誰にも気づかれていない)


表面上の平穏を保ちながら、カイトの意識はネットワークの奥底へと潜っていく。その中心で、胸部の肉体深部に寄生する――『黒曜神経核(エクリプス・コア)』が、ドクン、と重く脈打った。


それは旧文明が遺した世界改変用の根幹端末の欠損破片であり、生体魔導ネットワークと宿主の心拍・神経パルスを無理やり直結させることで、世界の外側からシステムへ干渉するための絶対的な裏口である。


本来であれば稼働時に宿主の生命力を直接喰らう諸刃の剣だが、完成されたカイトの魔力回路のシステム基盤と緻密な演算制御によって、その拒絶反応や致命的な負荷は完全に抑え込まれていた。


「――出力、最大同調(シンクロ)。《エクリプス・コア》の全リソースを解放する」


カイトが意志の力で神経回路を直結させると同時に、コアから高圧電流のような圧倒的な魔導パルスが全身を駆け巡った。

すでに構築済みのライフラインの裏口を経由し、カイトは新たなファイアウォールを強引に突破する必要などなく、滑らかに神聖術式監査局(アーク・コード)の中枢ネットワークへと接続を果たしていく。


三歳の時に完成されたカイトの魔力回路のシステムと『黒曜神経核(エクリプス・コア)』の爆発的な演算出力が引き出されたことで、広範囲のネットワーク制御は一瞬で掌中に収まった。


フロア全体の監視カメラ映像の偽装ループ、自動扉のロック解除、そして上位管理端末の特権IDの窃取――それらの膨大なマルチタスク処理が、遅延一切なしでリアルタイムに完遂されていく。


(接続完了。……さて、先の訓練でその身に受けた、最高幹部ゼノン・フォン・グレイスの『コード・シフト』のログを引っこ抜くとするか)


カイトの漆黒の瞳の奥で、青いデータストリームが幾重にも反射する。

ゼノンの義手に刻まれたルーン演算補佐、空間密度の書き換えアルゴリズム、そして座標再定義の変数。通常であれば数年かかる複雑怪奇なコードの塊を、コアの出力を得たカイトの脳内演算回路は冷徹なまでの効率性でスライスし、瞬時にデバッグしていく。


(――解析完了。空間密度の偏差値修正、および座標転移時のタイムラグを相殺するパッチの生成に成功した)


王国最強の 空間歪曲(コード・シフト)魔導の秘密が、カイトの記憶(メモリー)へと焼き付けられる。

バックドアを閉じることなく、痕跡を綺麗に消去しながら、カイトは現実世界へと意識を浮上させた。


静まり返った病室のベッドの上で、カイトはそっと目を開ける。

扉の向こうからは、一定間隔で巡回する衛兵の足音が微かに響いていた。


(……順調だな)


あどけない少年の顔を仮面の下に隠し、カイトは再び静かな闇の中へと身を横たえる。その漆黒の瞳の奥では、要塞のすべてをハックし尽くすための冷徹な牙が、着々と研ぎ澄まされていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。