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零からの魔法回路 〜世界システムをハックする反逆のSE〜  作者: ラレイラ
第三章:交錯する影と盤上の手札

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第90話 実戦出力テスト

ボリスの工房の中央で、本体であるカイトと、新たに起動した『生体プロキシ - Living Proxy v2.0』が静かに並んで立っていた。


「……信じられん。魔力の波形どころか、息遣いまで寸分違わんぞ。どちらが本物のカイトなのか、並んでおっても区別がつかんわい」


ボリスが腕を組み、感嘆と呆れが混ざったような溜め息を漏らす。


「カイト様、この生体プロキシがあれば、カイト様ご自身が戦場に身を晒す危険を大幅に軽減できますね」


楓の言葉に、カイトは生体プロキシの視界(映像データ)を同時に処理しながら首を振った。


「それだけじゃないよ、楓さん。単なる影武者(デコイ)として使うなら、ここまでのスペックは必要ない。この生体プロキシv2.0の本領は――『並列処理による魔法出力の増幅』だ」


カイトが視線を送ると、プロキシが滑らかな動作で一歩前へ出た。コンソール上に2系統の描画スレッドが独立して展開される。


(――スレッド1:本体(カイト)側の演算コア確立)

(――スレッド2:生体プロキシv2.0へ処理タスクを分散デプロイ)


「これまでは、俺一人で魔法の構造解析、コード記述、展開、魔力供給の全工程をシングルタスクで行っていた。だがプロキシに演算と魔力保持の半分をオフロード(外部委託)すれば、理論上、魔法の構築速度と威力は従来の倍以上に跳ね上がる」


「な……魔法の並列処理(マルチスレッド)じゃと……!?」


ボリスが目を丸くする中、カイトとプロキシが同時に右手を掲げた。


(――エアギャップコード実行。錬金技能ライブラリ・《魔導土偶創造《ゴーレム・クリエイションズ》》)


二人の手元から放たれた青白いコードが複雑に交錯し、工房の演習スペースに瞬く間に重厚な岩石の壁――テスト用ターゲットが組み上がった。さらにカイトは一髪の間も置かず、次のコードをプロキシ側から叩き込む。


(――プロキシ側スレッド実行。無属性技能ライブラリ・『コンバージェント・ハイプレッシャー・バレット(収束高圧弾)』)


本体が標的の構造をセンシングし、その隙を突く形でプロキシが超高圧の魔力弾を放つ。従来のカイト単体ではあり得なかった、詠唱・構築の「ラグがゼロ」の連続複合展開だ。


ドドドォォォン……ッ!


高密度に圧縮された青い衝撃波がターゲットを打ち抜き、分子レベルで砕け散った岩石が粉塵となって舞い散る。


「レイテンシ(遅延)なし、システム同期率99.8%。これなら実戦でも問題なく機能する」


カイトは不敵な笑みを浮かべ、プロキシの接続ログをコンソールへ格納(スタンバイ)した。


「完璧だ。【高純度霊核結晶(フラスコ・コア)】の空間固定、【深淵の黒粘土(プライマル・スラッジ)】の柔軟性、【竜の脈動血(ドラゴン・バイタル)】の高出力……すべてが完璧に噛み合っている。ボリス、楓さん、協力してくれて本当にありがとう」


「礼を言うのはこちらじゃ、カイト。ドワーフの技術と異界の理論が合わさり、とんでもない神具が誕生する瞬間を見せてもらったわい!」


ボリスが満足げに豪快な笑い声を上げ、楓も深く一礼する。


素材ハントから始まった『生体プロキシ - Living Proxy v2.0』の開発プロジェクトは、ここに完全なる成功を収めたのだった。

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