マーケット作戦
「明日の弁当のおかずを買って帰るわよ」
帰りにマーケットへ立ち寄る。
駅前で人の出入りが多く賑わっている。
「この時間は、競争が激しいのよ」
「大学生やお年寄りが半額を狙ってくるからね」
スマホの時刻を確認しながら、各コーナーを回って買い物かごに入れている。
店舗の一角が賑わっている。
これから戦いが始まると母ちゃんはいう。
赤い手押し車の辰バアは、年の割には通常の3倍の速度で半額商品を取るらしい。
今日はいないみたいだ。
すでに、数人、品定めを終え、狙っているであろう人達がいる。
周囲には取るなよ!という圧をかけながら他の人に迷惑にならないように動いている。
さすがだ・・
店舗の自動ドアが開く。
エレガントに優雅に買い物かごを赤い手押し車にのせて
風格があり入れ歯をもぐもぐしながらやってくるおばあさんが来た。
あれが辰バアだな・・
横目でチラリと確認し何事もなかったかのように通り過ぎる。
今日の参戦者らしき人物を見てみると
---社会人のオタク系男子
---大学生
---おじさん
今日は唐揚げ弁当、鮭弁当、のり弁当が残っている。
小太り快速シール貼りの梅林。
ベテラン店員で誰よりも早く、正確に貼ることのできる男らしい。
店舗のバックヤードドアがバタンっと開き、左右を確認。
総菜や弁当など集められているコーナーへ進む男の名札は
-梅林-
梅林が一歩一歩、会場に近づいてくる。すべての指に半額シールを張り付けて、準備ができている。
狩りの時間が始まる。猟犬たちが獲物を囲むように、徐々に商品へ近づく。
辺りは、静まり、息をのむ音さえ聞こえてくるようだ。
舞台俳優はそろった。
商品には誰も手を触れない。
まだだ。
空気が変わる。
梅林が腕時計を確認する。
カチッ
「とりぁぁぁぁ!!!」
並んだパッケージに一瞬で半額シールが決まった位置にセットされる。
全員の手が唐揚げ弁当に向かう。明らかに辰バアの左手が早い。
弁当を確保した辰バア。
会場は盛り上がる。
なんと右手にも団子をしっかり確保するという二刀流テクニックを披露した。
「若いもんにはまだ負けんわっ」
辰バアは剣を鞘にしまうがごとく、買い物かごに商品を入れ立ち去る。
母ちゃんはしっかり総菜と、のり弁当をゲットしていた。
参加してたの!?




