フィルのマーケット作戦
フィルとルネアは美術部に入ったようだ。
ルネアは運動系に入るかと思っていたけど。
フィルのスケッチブックを見せてもらう。
白いページに家・・・あのまんまだ・・
スーパーの総菜売り場。
「おっ!阿佐倉A,B,C、買い食いか?」
振り返ると、ニコニコな担任がいる。買い物かごが似合わない。
「俺は塾で、2人は部活帰りです」
「部活決めたのか、そっかよかったな」
安心した顔をする。
「おっ、これは・・飛行船のショートケーキか!?」
先生がルネアが持っているコンビニ袋の中を見る。
「おう!俺はこれが好きだ!」
「はっは!朝、言ってたな。俺もこれ好きだ」
「先生、いいやつだな!」
食べ物で善悪判断できるのかっ!
先生の指がコンビニ袋を少し引っ張る。
「イチゴ倒れてるじゃん!」
「・・・・」
「先生!いつもこんな時間まで仕事をしているんですか?」
「いや、ちょっと交番にたちよったんでなー」
弁当を眺めながら、どれにしようか考えているようだ。
「パンツ事件ですか?それとも、わるいことしたんですか?」
「なんでそう思う」
振り返り、顔を少し赤くする。
変なこと言わないでね、と言いながら、他の総菜コーナーに行ってしまった。
今日の参戦者らしき人物を見てみると
---社会人のオタク系男子
---大学生
---フィル
---俺
今日は唐揚げ弁当、特のり弁当、のり弁当が残っている。
小太り快速シール貼りの梅林。
ベテラン店員で誰よりも早く、正確に貼ることのできる男。
あれ・・・辰バアが入り口から来ない。
店舗のバックヤードドアがバタンっと開き、左右を確認。
総菜や弁当など集められているコーナーへ進む男の名札は
-梅林-
今日も出勤日だ!
梅林が一歩一歩、会場に近づいてくる。すべての指に半額シールを張り付けて、準備ができている。
狩りの時間が始まる。猟犬たちが獲物を囲むように、徐々に商品へ近づく。
辺りは、静まり、息をのむ音さえ聞こえてくるようだ。
気がつけば、辰バアがいる。
いつものポジションだ。
忍びか?
心が動揺した。
辰バア、フィルは100%唐揚げ弁当を狙うだろう。
どうする、特のり弁当に切り替えるか!
いや、のり弁も値段的に魅力が・・
舞台俳優はそろった。
商品には誰も手を触れない。
まだだ。
空気が変わる。
梅林が腕時計を確認する。
カチッ
「とりぁぁぁぁ!!!」
並んだパッケージに一瞬で半額シールが決まった位置にセットされる。
俺は、特のりで勝負!
なにぃ!辰バア・・・出遅れる・・
よし!いけるぞ!
まるで、遡上する鮭のように各挑戦者の手が伸びる。
!====なに!====!
銀鮭!辰バアの手が加速してくる。
明らかに辰バアの左手が早い。
フィル!なんと辰バアを妨害しに手をスライドさせる!
汚い!
戦術だ!
いや!さらに加速する!
速度に緩急をつけた戦術にフィルは引っ掛かる!
弁当を確保した辰バア。
会場は盛り上がる。
--フィル 敗北--
--俺 敗北--
フィルの動きに集中力を失った。
またしても、右手にも団子をしっかり確保するという二刀流テクニックを披露した。
「若いもんにはまだ負けんわっ」
「くやしい~~」
フィルは無念の臍をかむ。
「あれは、鬼だ・・・」
戦いを見ていたルネアがつぶやく。
辰バアは人の皮をかぶった鬼だったのか!
「俺のおかんだ!」
後ろから声がする。
「「「え?」」」
先生が買い物かごを持って立っていた。
「先生のお母さんですか!?」
「息子がおせわになっております」
やさしそうな声をしている。
ルネアは辰バアと会話を楽しんでいるようだ。
「母さん帰ろう!」
「はぃ。・・はて、どちらさんじゃ?」
「母さん!」
「冗談じゃよ」
レジに消えていく親子。




