その後 2.インタビュー
「あ、これこれ」
俺は湊から連絡を受けていた番組へと、リビングに置かれているテレビをつけ、チャンネルを変えた。出演した映画の宣伝の為、とあるニュース番組でインタビューを受けたのだと言う。
「なに? またあいつ?」
日曜日。遅めの朝食をキッチンで摂っていた亜貴が、横から不満の声を上げた。
それも仕方ない。湊は、ちょっとでも自分が出るものに関しては、逐一知らせてくるのだ。それを、俺も律儀に片っ端から観ようとするものだから、テレビは独占状態で。不満が募るのも仕方ない。
「すまないな。他に観たいのあるよな? これは録画しとくから──」
いそいそと録画に切り替えようとすれば。
「違うよ。──大和には悪いけど、俺は素直にそいつ、応援出来ないんだよね…」
亜貴は、『そいつ』が出演するだろうテレビ画面を睨み付けた。画面には、にこやかに湊の出演した映画についてコメントしているアナウンサーが映っていた。この後、湊の出番がある。
湊は高校を卒業後、俳優業に力を入れたのか、活動が活発になり、ちょくちょくマスコミに取り上げられるようになっていた。
俺はそれが嬉しくて、連絡を受けると、つい観てしまう。気持ち的には、親戚の子どもの活躍を応援している親族に似ている。
「けど、演技力は結構、あるだろ? 観るとつい、引き込まれるって言うか…」
「それは──認める。そいつが大和を好きってんじゃなきゃ、なんとも思わなかった」
亜貴はイスの背に腕を預け、恨みがましい目をする。
「──それは…」
いつの間にか、湊の好意が俺に向けられていると言う事実を知られていた。岳は口にしていない。けれど、態度には出ている。それを不審に思った亜貴が、おおかた真琴から聞き出したのだろう。
因みに、真琴と岳との間に、隠し事はないらしい。と言うか、岳が言うには、岳をよく知っている真琴には、黙っていてもバレてしまうのだとか。
「あ、出た…」
亜貴が声を上げる。画面に湊が現れた。愛想はあまりないが、そこがまた、知っている湊と変わっていなくて、ホッとする部分でもある。と、そこでリビングドアが開いた。
「──なんだ。また観てるのか?」
岳だ。リビングに入って来ると、呆れたようにテレビにちらと目を向けた。日曜日は営業日。ただ、休憩中はこちらに戻ってくる。
画面の中の湊は、インタビュアーに、映画の見所を聞かれていた。映画は恋愛もので、湊は主人公の女子高生に思いを寄せる生徒役だ。準主役といったところか。ストーリーは、全くタイプでないのに、徐々に主人公の女子高生に惹かれていく──と言う、王道ものだ。
「今日はチラッとだけだってさ。ほら、直に終わる──」
『それでは、最後に。ズバリ聞きますが、好きなタイプは?』
つい、耳がそちらにつられた。はにかんだ湊は。
『えーと…。(ここでカメラ目線)左の頬に切り傷のある、やんちゃで金髪の人──です(ニコリ)』
インタビュアーは一瞬、固まった。観ていた岳も固まる。インタビュアーは間を空けたのち、
『アハハハ、流石! 面白い回答でしたねぇ。かなり具体的でしたが、モデルはいらっしゃるんですか?』
──インタビュアー、余計なことを!
「さ、もうおしまい──」
俺は焦って、チャンネルを変えようと、リモコンに手を伸ばすが、
「いいさ。最後まで聞こう」
岳は不敵に笑む。
『はい。いますよ? 高校生の時──』
ハッとして画面の中の湊を凝視する。
『──読んでいた《《少女》》漫画の主人公です』
『そうなんですね──』
──よかった。違った…。
セーフと、ホッとした様子のインタビュアーに負けないくらい、ホッとした。しかし、脱力した俺の背後で、岳が。
「…そんな漫画、あるわけないだろ」
腕組みをし、苦々しい表情でそう呟いた。そうだ。そんな少女が主人公の恋愛漫画、あるわけがない。
──あいつ。
画面には、最後に笑みを浮かべ、手を振る湊が映っていた。
ー了ー




