第14話 新人研修というものを、俺は一度もまともに受けたことがない
アルゲリア王宮の地下深く、日当たりゼロ・風通しゼロのカビ臭い空間。そこが彼ら王宮直属トラブルシューティング部門に与えられた絶望の執務室である。
今日の地下室は、奇跡的なまでに静まり返っていた。壁際で常に不吉な赤い光を放ち続けていた魔導水晶ターミナルは、今は嘘のように穏やかな緑色の光を保っている。
「……信じられん。アラートが一件も鳴らない時間が、連続して三時間も続いているなんて。前世で何か徳でも積んだか?」
ガルム・フォン・アッシュは椅子に深くもたれかかり、手元のマグカップに入った、すっかり冷めきって泥水のような色になったコーヒーを見つめながら、呆然と呟いた。
彼の目の下には、世界が「Ver2.0 平和な世界」へと移行して以来、一度もベッドで三時間以上連続して寝ていないことを証明するような、恐ろしい鉛色の隈が深く刻み込まれている。
「奇跡ですねえ、PLさん」隣の小さなデスクで、新米ゴブリン技術者のゴブ太が、背伸びをして大きなあくびをした。「昨日の昼頃から急に、王都全体のサーバー負荷が劇的に下がったんですよ。なにか常時高負荷をかけていた凄まじく重いプロセスが、どういう風の吹き回しか、自発的に待機状態に入ってくれたみたいで」
「神か仏か、誰がやったにせよありがたい話だ。この一時的な平和がいつまで続くかは知らんが、今なら息がつける……」
ガルムは椅子から立ち上がり、カチカチに凝り固まった首をボキボキと荒々しく鳴らした。そして、執務室の床や机の上でいびきをかいて死体のように寝落ちしている者たちへと鋭い視線を向けた。
旧第三ダンジョンのインフラ班リーダーだった豪快なドワーフのドランをはじめとする、他の第一〜第六区画から強制異動させられてきたベテラン技術者の面々である。彼らもまた、合流して以来の地獄の徹夜デスマーチにより、限界を迎えて床に転がっていた。
「おい、起きろお前ら。いつまでも寝てんじゃねえ! せっかくの無風状態だ。今のうちに最優先でやっておくべき致命的なタスクがある」
ガルムが容赦なくつま先に蹴りを入れると、ドランは「ぐあッ!? 緊急バグか!? どこだ、どこにレンチぶち込めばいい!?」と血走った目で跳ね起きた。
「落ち着け、バグじゃない。……新人研修だ」
ガルムは壁際にある、配属されてからまったく使われていなかった真新しいホワイトボードをフロアの中央に引っ張り出し、黒の魔導マーカーを手に取った。
「し、新人研修……だと?」ドランが寝惚け眼をこすりながら怪訝な顔をする。「俺たちが新人って歳かよ。魔王軍じゃもうベテラン通り越して化石扱いだったんだぞ」
「歳の話じゃない。お前ら他ダンジョン組は、魔王軍時代の実力と根性は申し分ないが、このアルゲリア王宮の新世界のアーキテクチャや根本的な仕様については、まだ何一つ体系的に理解していないだろう。だからバグが起きた現場で毎回、勘とレンチによる力技で修復している状態なんだ」
ガルムはホワイトボードに、複雑で奇妙な幾何学模様とシステム構成図をスラスラと描き始めた。
「これ以上、属人的な力技だけで乗り切るのは必ず限界が来る。次期アップデートの大型パッチに備えて、お前たちにも新環境のベースシステム、特にオブジェクトの管理機構と、通信プロトコルの基礎を今のうちに頭に叩き込んでおく。俺が過労で倒れてもお前らが単独で世界を再起動できるようにするためにな」
「おおーっ! ブラボー!! ワンダフルじゃないか、ガルム君!!」
突然、執務室の真っ赤な最高級革張りのソファから、底抜けに能天気でカン高い拍手の音が上がった。
いつの間に入室していたのか、地下室の汚れなど一切知らないような純白のオーダースーツを着こなした新上司、特命プロジェクトマネージャーのルシアンだった。彼は優雅に長い足を組み、香りの良い高級な王室専用紅茶をティーカップで啜っている。
「まさにそれはメンター制度の導入だね! 素晴らしい! 現場の暗黙知を可視化・共有し、チーム全体のスキルセットをボトムアップで引き上げる! 私が提唱したアジャイルでオープンな組織づくりが、ついに君たちのような野蛮でアンコントローラブルな技術者にも浸透してきたかと思うと、上司としてこれ以上のシナジーはないよ!」
ガルムとドランは、その光り輝く笑顔を前にして、無言で顔を見合わせた。そして深い深いため息を吐き、無言でルシアンから完全に顔を背けて、研修を続行した。この男の口から次々と飛び出す中身のないカタカナビジネス用語は、彼らにとってはただの耳障りなノイズでしかないからだ。
「いいか、あっちのノイズは無視しろ。よく聞けよ」ガルムがマーカーで図の中央のコア部分を強く叩く。「新世界では、旧魔王軍時代とは異なり、すべての人や物がそれぞれ独立した属性タグによって厳密に管理されている。例えば、市民のAIの行動ルーチンは……」
ガルムが白衣を翻し魔導マーカーを走らせる。彼の説明は極めて理路整然としており、本来ならば新体制の基盤を固める素晴らしい技術研修になるはずだった。
ビィィィィィィィィィィンッ!!!! ギャァァァーーンッ!!!!
突如、沈黙を保っていた魔導水晶ターミナルが、地下室の淀んだ空気を切り裂くような破滅的な轟音のアラートを鳴り響かせた。画面全体が真っ赤なエラーの文字で激しく明滅し、カビ臭い部屋の隅々までを毒々しい赤色に染め上げる。
「…………チッ」
ガルムの右眉がピクリと、危険な音を立てて痙攣した。
「平和は3時間しかもたなかったか! 発生源はドコだ、ゴブ太!」
「は、はいPLさん!! エラー発生源は、王都東部の王室直轄・緑の牧場です! 牧場主からの緊急通報いわく……羊が空を飛んで、雲の上で恐ろしい速度で細胞分裂して増殖しているとのことです!!」
「はあ!?」ドランが目玉が飛び出そうなほどに見開く。「羊が空を飛ぶぅ!? おまけに細胞分裂だと!? どんなトンチキな自然現象だよ!!」
「……おそらく悪質な当たり判定のすり抜けだ。多数の羊の物理モデルが狭い柵や地面のオブジェクトにめり込み、物理反発によって空の彼方に凄まじい力で弾き飛ばされているんだろう。さらに上空の限界ギリギリでスタックし、処理ループのバグでクローン増殖を併発している!」
ガルムは血を吐くような凄惨な顔で、叩きつけるようにマーカーを机に置いた。
「研修は一時中断だ! 全員、強制修正ハンマーと浮遊魔法のスクロールを持て! 牧場へ急行するぞ!! あの増殖した羊が限界を超えて空から一斉に雨のように降り注いだら、王都が羊の凄まじい物理演算で敷地ごと圧殺されるぞ!!」
「クッソがぁぁ! 結局現場で体で覚えるしかねえのかよ!! 行くぞ野郎共!!」
――3時間後。
「……ぜぇ、はぁ、ぜぇ……」
ボロボロになり、全身の至る所に羊の白い毛と泥と謎の粘液をこびりつかせたガルムとドランたちが、幽鬼のように極端に猫背の姿勢で地下室へと帰還した。全員の目から光が失われており、ドランの巨大な魔導レンチには、空飛ぶ羊を物理的に地面に叩き落とした際についてしまった緑の草の汁がべっとりと付着している。
「なんとか……すべての羊の質量パラメータを限界まで強引に書き換えて……クローン増殖の無限ループをハンマーで断ち切ったぞ……」ガルムが机に前のめりに突っ伏しながら怨念の声を出した。
「あのモフモフした白い悪魔共……殺しても殺しても叩き落としても、雲の彼方から湧いてきやがって……! 今日から羊肉を見るだけで吐き気がしそうだぜ……」屈強なドワーフであるドランですら、膝をガクガクと小刻みに震わせている。
「おお、お帰り皆の衆!」ルシアンだけが、相変わらず汚れ一つない真っ白なスーツで立ち上がり、満面の笑みで拍手で迎えた。「無事にイシューはクローズできたようだね! 素晴らしい消防活動だったよ。さあ、自己研鑽の続きを再開しようじゃないか!」
ガルムの瞳に明確な殺意の炎が宿ったが、彼はぐっと胃液と暴言を飲み込み、痛む腰を抑えながら再びホワイトボードの前に立った。ここで諦めてしまえば、永遠に彼ひとりがドランたちの尻拭いをし続けることになるからだ。
「……よし、気を取り直して再開する。次は、ネットワークの非同期通信のラグについてだ。この世界は……」
ガルムが震える手でマーカーを握り直し、深呼吸をした、およそ五分後のことであった。
ビィィィィィィィィィィンッ!!!! ギャァァァーーンッ!!!!
「あああああああああっ!! もう嫌だぁぁ!!」ゴブ太が自らの頭を両手で抱えて絶叫した。「また特大のアラートです! 今度は西の海域です!! 漁師の船が、見えない滝壺のような何もない真っ黒な空間に次々と吸い込まれて落ちていくと!!」
「海域マップの境界線描画限界バグだ!! そこから先はそもそも世界が作られてねえんだよ!!」ガルムが力余ってマーカーを真っ二つにへし折った。「なぜ海に見えないバリア境界を設置しておかなかったんだ、前任の開発者はぁぁぁッ!!」
「どうすんだガルム! 海なんか行っても、俺たちのレンチでどうにかなるのか!?」
「強大な結界魔法を物理的に海にぶち込んで、あの空間ごと無理やり蓋をするしかねえ!! 行くぞドラン、文字通り泥舟に乗るドブさらいの始まりだ!!」
――さらに8時間後。深夜。
「…………」
重い音を立てて地下室の扉が開き、そこにはもはや泥人形か深海のクリーチャーと化した男たちの無残な姿があった。
全身はずぶ濡れになり、海水の塩と深淵の瘴気にまみれ、ガルムに至っては白衣の半分がちぎれ飛んで素肌が見えている。彼らの頬は完全にこけ、生気というものが一切感じられなかった。
「ふふふ……アジャイルな現場対応、深夜まで本当にお疲れ様!」ルシアンが空気も読まずに輝く笑顔で純白の歯を見せてウインクをする。「君たちの果てなきコミットメントの高さには目を見張るものがあるね。私からの評価も大いに期待してくれたまえよ!」
ドランは無言でルシアンの方へ歩み寄り、血走った目で巨大なレンチを振り上げかけたが、かろうじて理性の端っこの一ミリでそれを堪え、ドスンと、崩れ落ちるように床に座り込んだ。
「……ガルム。もう諦めようぜ」ドランが完全に枯れ果てた声で言う。「研修だの引き継ぎだの、一切無駄だ。俺たちは一生、このどうしようもない世界の不具合の掃除を、走りながらやらされる運命なんだよ。魔王軍の時代から俺たちは知ってたはずだ……王宮の人間が綺麗な夢を見てる間に、泥水をすするのは常に俺たち現場の人間だってな」
ガルムは冷たい石の壁に背中を預け、ずるずるとしゃがみ込んだ。
「……お前の言う通りかもしれないな」ガルムが自嘲気味に、力なく笑う。「こんな自転車操業の世界で、綺麗な設計図なんか紙切れ以下の価値しかねえ」
だが。
ガルムはゆっくりと、まるで錆びついた機械のように立ち上がり、折れた魔導マーカーの代わりに、床に転がっていたチョークの破片を拾い上げた。
彼の目には、先ほどまでの疲労とは明らかに違う、ゾッとするほど冷たく、底知れぬ狂気すら孕んだ鋭い光が宿っていた。
「……だが、これだけは絶対に伝えておかなければならない」
ガルムの声のトーンが、極端に一つ下がった。地下室の空気が、急激に零下へと冷え込んだように感じられた。
「新環境の、最も深い地下の階層……ディープ・メモリー・コアと呼ばれる領域がある。ここは、アルゲリアのシステム全体の理そのものを統括する、絶対的な深層神域だ」
ガルムは黒板に、禍々しいほどの何重ものバリアで囲まれた、小さなブラックボックスの図を、ひときわ強い筆圧で描いた。
「いいか、ドラン。ゴブ太。お前ら他ダンジョンの奴らにも厳命する。今後どれだけヤバいバグが起きようと……どれだけ俺たちの目の前で世界が崩壊しそうになろうとも、絶対に、このコア領域にだけは直接干渉を試みるな」
「……どうしてだ?」ドランが顔をしかめる。「旧魔王軍の時は、やばくなったら俺が直接コア・エンジンの蓋をこじ開けて、物理的に魔力を流し込んでただろ。バグの根源がそこに鎮座してんなら、元から断つのが定石じゃねえか」
「俺たちの知っている過去の定石は、この世界では通用しないんだ」
ガルムがチョークを握る手が、微かに、だがはっきりと小刻みに震えていた。
彼の顔からすべての感情が抜け落ち、どこか遠くを見るような、底なしの深淵を覗き込むような虚無の表情へと変わる。
「……第三インシデントの、二の舞になりたくなければな」
その言葉がガルムの口から発せられた瞬間だった。
ピタリ、と。
ドランをはじめとする、血気盛んなベテラン技術者たちの動きが、完全に凍りついた。
誰もが呼吸を忘れ、顔面から血の気が一気にサーッと引き、ありありとした強烈な恐怖が、歴戦の猛者である彼らの顔に浮かび上がった。新米のゴブ太だけが、その異様な空気の変化に戸惑い、きょろきょろと先輩たちを見回している。
第三インシデント。
それは、旧魔王軍の技術者たちの間では、決して口に出してはならないタブーの禁忌であり、全員の魂に刻まれた最悪のトラウマだった。あれが原因で、魔王軍のIT部門のトップエリートの半数が消滅した、と言い伝えられている。
ガルムの脳裏に、彼が絶対に思い出したくない凄惨な過去の真実が、ノイズまみれの走馬灯のように短くフラッシュバックした。
――鼓膜を破るほどのサイレン。真っ赤に染まった、魔王城の最深部の中枢サーバー室。
――限界を超えて稼働し、血の混じった黒い液体を噴き出しながら悲鳴を上げる巨大冷却装置。
――「ガルム主任!! 駄目です、コードを上書きできません! 『彼ら』のデータが……っ!! アアアアッ!!」
――眼の前で、親しかったはずの優秀な開発チームの同僚たちが、崩壊に巻き込まれ、次々と絶叫を上げながら概念から消去されていく凄惨な光景。
――ガルム自身の血に塗れた手。彼が自らの手で震えながら入力した、取り返しのつかない絶対の強制終了コマンドの、あの時のひどく冷たいキーボードの感触。
彼が魔王直属のエリート開発チームの最年少主任という華々しい権力を持つ立場から、全てを失い、最下層の存在である辺境の第七ダンジョンへと実質的な追放をされることになった、血塗られた事件の記憶。
その深淵の底には、まだ誰にも解き明かされていない残酷なロジックが眠っている。
「……これ以上の詳しい理由は聞くな」
ガルムはチョークを叩き落とし、声の震えを隠すように低く、だが鋭く唸った。
「エラーが起きたら必ず表層で止めろ。もし世界のシステムそのものが自壊しそうなら、それは俺たちがあのコアを開けて直していいものじゃないんだ。……決して触れてはいけない変数があるんだよ。この世界には」
重苦しい、まるで水底のような極限の圧迫感に満ちた沈黙が地下室を支配した。
いつもは能天気なゴブ太すらも言葉を発することができず、ドランは無言で視線を床に落とし、固く拳を握りしめていた。
ただ一人、空気を全く読めないルシアンだけが「どうしたね諸君! なぜ突然黙り込んでいるのだ! 心理的安全性のあるフラットなチームを作ろうじゃないか!」と的外れに叫んでいたが、もはや完全に背景の環境ノイズと化していた。
その、息が詰まるほどの極度に緊張した沈黙を破ったのは――。
ビィィィィィィィィィィンッ!!!! ギャァァァーーンッ!!!!
今日3度目となる、狂ったようなエラーアラートの凄まじい轟音だった。
「ッ――!!」ガルムがビクッと肩を大きく震わせ、沈痛な過去の暗い記憶から、容赦のない現実に無理やり引き戻された。「今度は何だ、ゴブ太!!」
「ぷ、PLさん! あの……ええと! 城下町のど真ん中の中央広場で、市民の乗合馬車が……地面に垂直に突き刺さったまま、空中でドリルのように凄いスピードで無限回転し続けているそうです!!」
「……は?」
ドランがぽかんと、心底間抜けな顔で口を開けた。
先ほどの重苦しい過去のトラウマの空気が、そのあまりにもアホらしい物理法則を無視したバグの報告によって、一瞬にしてギャグのように粉砕されたのである。
「市民が回る馬車の中でバターみたいになっちまうって通報がひっきりなしですぅ!!」
「あああああもうクソがぁぁぁぁッ!!」
ガルムは残ったチョークの破片を床に力の限り叩きつけると、自らのボロボロの白衣の残骸を破り捨て、強制ハンマーを恐ろしい力で引き抜いた。彼の目からは、先ほどの暗い過去の影は綺麗さっぱり消え去り、あるのは純然たる終わらないアホなバグに対する絶望的なキレ顔だけだった。
「……新人研修なんぞ中止だ!! そんな生ぬるいもんに甘えるな馬鹿野郎!! 現場の火消しは俺の背中を見て走れ!! 体で覚えろォォォ!!」
「クハハハッ!! 結局いつもこうだなぁ!! よし、行くぞ新世界のバカ野郎共! その回転するドリル馬車のど真ん中に、俺の魔導レンチをぶち込んで力技で止めてやらぁ!!」
「ああっ、僕もいきます! 馬車の周りに強制冷却魔法をかけます!」
ドランが盛大な高笑いをあげて立ち上がり、ゴブ太や他の技術者たちと共に、ガルムの怒れる背中を追って荒々しく地下室を飛び出していく。
嵐が去った後のように散らかり、埃が舞う執務室に、またしても一人取り残されたルシアンは、誰もいなくなった部屋で優雅に高級なティーカップを傾けながら、心底満足そうに深く頷いた。
「素晴らしいではないか! これこそ実力主義の現場での実践的プロジェクト・ラーニング! これぞ極限のアジャイルメソッドの体現! 私の最高にスマートなマネジメントが完全に機能している何よりの証拠だね!!」
ルシアンのその一点の曇りもない満面の笑顔は、彼がどれだけ究極的に無能で、現場の実態を何一つ理解していないかを示す、ある種の究極の平和の象徴であった。
回転する馬車の乗客をバターになる危機から救うため、文字通り命がけで走るガルムの心の最奥底には、あの厳重に封印された第三インシデントの傷跡が、依然として暗黒の影を落としたままである。
彼らエンジニアのトラウマと恐ろしい因縁を呼び覚ます、本当の絶望的なバグに出会う日が近いことを、過労で死にかけのご一行はまだ知る由もない。




