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ムーンフラワーの儚い美しさで  作者: 影葉 柚希
始まりの出逢い~村設立
7/8

6話:いざ、ゴルゾネ退治の始まり

 ルグとリュミが村設営予定地に大繁殖した土の養分を食べてしまうモンスター「ゴルゾネ」の巣穴を掃討する為に、何処から掃討するかの確認をしていた頃。アベリアはエミルとルスと共に執事とメイドの協力を得て何かの液体を用意していた。

「お姉さん、この量で一つはいいの?」

「はい。その量でいいですよ。ルス様、こちらにラベルを貼って下さい」

『分かった』

 人型になってアベリアとエミルが作っている液体を詰めた瓶にラベルを貼る作業を、ルスは文句を言わないで従いつつ作業をしていた。そして、執事とメイドが瓶に詰める液体を作ってくれているのをアベリアが瓶に詰めていき、エミルが蓋をしてから飾り用の布リボンを蓋部分に結んで、の作業を流れでしている状態である。

 何をしているのかはルグとリュミが戻ってきてから判明した。二人が戻ってきた頃に屋敷の中全体が爽やかな香りに包まれて、その香りでルグとリュミが香りの元になっている存在に関して話をしながら、二階に繋がる階段を上がっていた。

「戻った。アベリア、作っていたのか?」

「お帰りなさい。はい、私とエミルが出来る事をと考えたらこれを作る事なので」

「この香りから察するに……ルードル(回復薬)を作ってくれていたんだね」

 そう、アベリアとエミルがせっせと瓶詰めしている液体はルードル(回復薬)と呼ばれる薬品で。材料が比較的どこでも手に入る薬草から抽出した成分に、家庭でも使われる素材を使って調合してから煮詰めた液体を飲むと、不思議と色々な傷や怪我に効果を発揮するという謎仕様。

 アベリアとエミルは元々住んでいた村で、このルードル(回復薬)を作って生計を立てていた。だから、リュミも二人がこれを作るのに適したレシピを持っている事も理解しているし、二人がルグの力を借りないで協力をする事を考えれば自然の行動である。

「私とエミルはこのベースになる薬を使って色々と効能の違う薬にしたり出来ます。ハンターの皆さんにもお使いいただければと思っているので、メイドさんと執事さんのお力をお借りしてます」

「うん、皆がそうやって力を貸してくれるだけでも、僕は凄く嬉しいな。エミル君の医者になりたいって夢の一歩だね」

「うんっ! ルグ様の怪我にも使えるように愛情沢山入れるね!」

 エミルの当たり前のように告げられた言葉にキョトンとしてしまうルグ。だが、アベリアとリュミはクスクス笑いつつルスが真剣な表情を浮かべて瓶にラベルを貼り付けている姿を眺めていた。

 そして、ハンター達が派遣されて到着する日。朝からアベリアとエミルはメイドと共に部屋の準備をしていく。

 執事達は人数の多いハンターの名簿と特徴を書いた書類と見比べながら、出迎える用意に携わっているのでメイドのサポートはアベリアとエミルに託されている。ルグとリュミは玄関前でハンター達の到着を待っていたが、心なしかルグの表情が硬い。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって」

「分かっているつもりなんだけれど……僕自身が吸血鬼だってことでハンターの人達に嫌な気分にさせてしまったらって考えていね」

「その心配はあまり必要ないと思うけれどな。ほら、お迎えをするぞ」

 バタン、屋敷の外から聞こえてきたドアを閉める音にルグも深呼吸をして領主としての顔をする。リュミが玄関のドアを開けてハンター達を出迎えると、ハンターの集団は総勢五十名という大所帯で来訪してくれていた。

 リーダーらしき男性のハンターは見た感じ五十代を数えてもいいだろうとの中年ハンターで、リュミが笑顔を浮かべてその中年ハンターに声を掛ける。勿論、他のハンター達も全員がリュミとルグに対して満面の笑みとまでは行かないが柔らかな雰囲気でいるのが伺える。

「フェルドさん、お久しぶりです」

「おーリュミ坊。手紙を送ってきた時は生きていて嬉しいと思っていたが、こんなに成長していたか! うんうん、五年の月日はあっという間だったな」

 フェリド、と呼ばれた中年ハンター。リュミがルグの事を紹介するとフェリドはゴツゴツと剣ダコが溢れている手を差し出してくる。

  ルグは少し戸惑いを見せてしまうが礼儀を欠かさないように、フェリドの手をしっかりとした力強さで握り返す。それがフェリドには嬉しかったのだろう、ルグにニカッとはを見せながら笑い掛けてきてくれた。

「僕はこのルルーンガリア国領地を治めている領主のルグ。ルグ・シルベ……あまり歓迎されないとは理解しているけれど、吸血鬼の者だ」

「ほう? 吸血鬼の割には……相当な苦労してきてんな?」

「分かるのかい?」

「伊達にハンターを四十年もしてねぇよ。リュミ坊が信頼しているのもあって俺達も最初から疑う事はしたくねぇが、まぁあれだ。お手並み拝見させてくれ。俺達は種族は異なれどハンターとして戦地を共に駆けてきた仲間達だ。だから、言葉でもなく、名誉とかでもなく、行動で、態度で俺達を惚れさせてくれ」

 フェリドの言葉に意表を突かれたルグは少しの間の唖然としている姿にリュミがクスッと笑う。フェリドは元々吸血鬼だとは知っていた。

 リュミの手紙でハッキリと「吸血鬼の領主の力になって欲しい」と書いていたからだ。その手紙をギルドは最初断ろうかと相談していたのをフェリドが捥ぎ取りギルドを説得して、仲間を集めて今回派遣をしてもらったのである。

 どんな事情があるにせよ、旧友であるリュミが助けを求めている。それならば自分達の力を使って助けるのがハンターの掟だとフェリドは仲間達にそう言って説得をしていた。

「それじゃ、早速現場を見てもらいたい。僕とリュミで計画地図を作成して皆さんに行き渡るだけの枚数は用意しているから、各々で書き込みとかして独自の地図を作成してもらえると助かるよ」

「ゴルゾネだってな? こりゃ俺としては日頃の鬱憤を晴らすのに最適な相手だ」

「フェリドさんはこう見えて専門は畑のハンターなんだ。この人の育てる作物は凄く質が良くて味もいい。首都のルルーンガリア国ではプレミア級の価値を持っている。ルグが考えている栽培の計画についても相談を出来ると思うぞ」

 現場に向かいながら、ルグの肩をフェリドは豪快に抱き寄せて息子のようなルグを試すように寄り添っていたが、ルグは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めて歩いてた。リュミと一緒に用意していた地図を執事達がハンター全員に渡し終えて全員で現地に向かってから一〇分後、高台に並んだハンター達がまず第一声に上げたのは。

「こりゃ……」

「フェリド! この土地って」

「あぁ……こりゃゴルゾネが好物だと言っても過言じゃねぇ程の魔力(マナ)を含んだ土地だ。いいねぇ……ルグさんよ、この土地で一体何をしようって感じだい?」

「ルルーンガリアの古くに咲いていた花を栽培しようと思っているんだ。この土地の魔力(マナ)から適している植物から栽培を開始したいと思っている」

 フェリドの肩をバシバシ叩く一人の女性ハンター。彼女は以前リュミがルグにレーレリアンの種子からオイルを取り出す際の方法を聞いたら答えてくれる、と言っていたハンターのクオンである。

 クオンはフェリドの右肩に左腕を乗っけて、そのボディーは鍛えられた腕は男性のよりかは細いがそれでも筋肉が適量付いてあり、ボディーラインはしっかりと胸は豊満な膨らみ、腰はきゅっと絞れて、お尻は丸っこくて小尻のナイスボディーをしているクオン。その身体を寄せてフェリドに小声で告げる……内容は至ってクオンからしたら大真面目な内容だが、フェリドからしたら笑いの話である。

「フェリド、この土地の魔力(マナ)から察するに近くに沼があるなら……」

「任務が終わってからならいいぞ」

「えー今すぐに行かせてよ! 私のメインを知っているだろー!?」

 クオンの首根っこを掴んでフェリドは顔面にクオンを持ってくると、しっかりした口調で告げる。その瞳に宿っている輝きを見たクオンが本気で怯えていたのはフェリドを知っているリュミからしたら、まだこの人は変わらないな、と思う程度ではあるが。

「いいかクオン。この土地のゴルゾネを駆逐したらどうせ消臭の為に最低でも一月は滞在をしないといけない。これだけの量と土地の広さ、それだけじゃない。魔力(マナ)の含まれ方次第では沼地の生態系も調査は必要だ。俺の畑ハンターとしての炎を、魂を邪魔するならクオンでも容赦はせんぞ」

「ひー」

 フェリドの言葉を聞いていたルグはリュミを見て少し納得する。リュミがこのフェリドをハンターズギルドを経由して派遣してもらったのは、この熱意と経験があればとの事だと分かった。

 フェリドが右手を上げて仲間のハンター達に合図をすると、全ハンターが持ってきた道具を袋や道具箱から取り出し、高台からそれぞれが飛び降りてゴルゾネ駆逐を開始する。至る場所からゴルゾネが発する奇声音が響き上がり始めると、リュミとクオンも高台から土地に降りていく。

「ルグさんよ」

「なんだろう?」

「俺はこんな土地を見てきた事はあまりない。ゴルゾネもこんな軽く一〇〇は超えるだけの量の大発生をしているのは正直初めてだ。だが、それだけこの土地が豊かであり、そして、愛されている土地だと実感している。この仕事を終えたら俺も今日リュミ坊のように力になってもいいかな?」

 驚きだった。リュミの結んでくれたハンター達の一人とこうして仕事をお願いしている上に、力を貸してくれると言ってくれる人材をルグは初めてと言ってもいい出逢いをしたと言える。

 だが、ルグはすぐには返事をする事ができなかった……それは、高台の下から悲鳴の上がる声が聞こえてきて、フェリドとルグはすぐに高台から土地に降りなくてはならない状態になっていたから。リュミがクオンと共に悲鳴を上げているハンターの救助を行なっているが、そのハンターの右足にはゴルゾネのと思われる細い数十本もあるだろう線状の触手が巻き付いていたのである。

「どうしたんだ?!」

「ゴルゾネの触手みたいなのが足に巻き付いてきて! 痺れて動けねぇ!」

「触手に痺れ液が纏わり付いているのよ! 早く切って外さないと溶解液も上がってきて足が溶けるわ!」

 クオンが小型のナイフを使って触手を切り裂いているが、切っても切っても触手は巻き付いてくる。リュミとフェリドの行動は凄まじく早かった。

 リュミが腰に刺していたナイフで道を切り開き、フェリドが背中に背負っていた大型の剣を右手一本で引き抜けば、溶解液を吐き出して動こうとしているゴルゾネを持っていた剣を横一戦薙ぎ払った風圧で、巣穴の壁に吹き飛ばして動きを封じると迷わずに剣の腹をゴルゾネに押し当てて体重を乗せて、ブシャっと押し潰したのである。体液が剣を染めるがシューと何かが腐食していく音がするのに対して、フェリドが使っている剣は腐食どころか溶解液で磨かれているように輝きを見せている。

「全ハンターに告げろ。触手を吐き出している奴は触手を出すから動きが鈍い。しかも、見た感じ、出しているのはオスの個体だ。メスより先にオスの個体を潰せ!」

「クオン、俺が精霊魔法で知らせるから風を呼んでくれ」

「じゃ、やりますか!」

 連携の取れた行動を見せるリュミ・フェリド・クオンを見ながらルグはこれがハンターだと思ってしまったが、今は痺れているハンターの手当てが必要だと、ハンターに肩を貸して高台に上がる。高台で触手が巻き付いていた右足のズボンを上げて麻痺の効果を薄める治癒魔法を唱えていたら、ルスが口にバスケットを加えて屋敷から走ってくる。

 それでアベリアとエミルが作っていたルードル(回復薬)を持ってきてくれたことを知る。ルスがハンターの男に犬のフリをしてルードル(回復薬)を入ったバスケットを持たせると、ハンターはルグを心配そうに見つめてどうしたいいのかと戸惑いを見せていた。

「リュミの幼馴染のシスターと可愛らしい女の子が愛情を込めて作ってくれたルードル(回復薬)がだから飲んでくれたら嬉しい。彼女達のハンターへの無事を願う願いも込めらているから」

「そっか……それじゃ一つ頂戴する。へぇ、本格的な出来栄えだ。これは味も期待出来そうだ」

 ハンターの男性はバスケットからルードル(回復薬)を一つ取り出すとリボンを丁寧に解いて蓋を開ける。そこから香りを嗅ぐと爽やかで、瑞々しい香草の印象を得る事ができた。

 男性が飲み始めるとルスが嬉しそうにルグの手を舐めて、小さな声でルグだけに聞こえるように告げる。

『アベリアとエミルの祈りが込められている。効果はあるだろう』

「うん。大丈夫……祈りは何よりも強い力になる」

「おぉ、これは……ルードル(回復薬)を飲んでこんなに心穏やかな気になるのは初めてだ。きっと作り手の人達の優しさが伝わっているんだろうな。うん、痺れも取れてきた。これならまだ仕事は出来る! 領主さん、俺頑張るから見ててな!」

 ハンターの男性がヒョイっと立ち上がり、また高台から土地に降り立っていくとルグは不思議とこの土地をキッカケに、人と吸血鬼、いや、他の種族とも交流を、そして国を作れるのではないだろうか? そんなな希望を抱かせるだけの現実を見ている気がしていた。

 ルグの双眸にはルルーンガリア国の首都を治める兄レイドルが微笑みを浮かべて喜ぶ姿が浮かんでいたのは間違いないだろう。だが、ゴルゾネの駆逐はまだ続く。

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