やけくそハウジング
無自覚煽り馬鹿エルフをラブホまで連行した俺は別室をあてがわれた。
見張りは必要だが、戦闘力としての目安になるレベルが一番高かったのが俺だったからである。
雑賀さんは今書類と格闘中。
他のDのメンバーはこのアホエルフが登ってきた事で予兆を見せているスタンピードに備えている。
猫耳になってから嗅覚も聴覚も過敏になっているんだが、この部屋臭い……。
栗の花みたいな匂いに、多種多様な香水、他にも様々なにおいが混ざって悪臭が酷い。
さっきまでいた高級ホテルは消臭がしっかりされてたけど、ここは完全な閉鎖空間なのでめっちゃ匂う。
「……すんません、見張り役ですが廊下で寝ていいですか……ダメ? 今美少女だから? はい……いや、鼻が曲がりそうなくらい臭いんです。多分俺の嗅覚過敏。あと防音とか関係なく声がね、うん、種族的なあれだと思います」
「えーと、三上さんでしたっけ。周りの部屋五月蠅いんで全員消し炭にしちゃだめですかね」
「すんませんカスエルフがとんでもない事言い始めてるのでどっか貸し切りにできる施設か、最悪の場合無人の建物に布団運んでください」
こいつもこいつでレベルが高いから色々感じ取れるんだろうけど、五感も優れているタイプか。
人間はレベル上げまくっても日常生活じゃそこまで気にならない程度だってのに。
流石に腕力とかは目に見えて成長するけどさ。
「エウレカさん、頼むから大人しくしててくれ……」
「十分大人しいじゃないですかー。周りが騒がしいんですよー」
「それは認める。けど安全性の問題でな……」
「私がいる場所が一番安全!」
「いや、爆心地な」
少なくともエウレカを中心に大爆発が起こるのは確定。
そんでこいつだけ生き残るのも確定している。
主犯は反撃で死ぬだろうし、巻き込まれたら俺も普通に死ぬ。
そしてなにより……周囲の被害が洒落にならん。
「今からは流石に無理か……仕方ない、【ハウジング】」
「おー、なんですかそれ!」
「俺のスキルの一つ。一応秘密にしてるんだが……お前次元くらい簡単に切り裂いて辿り着くだろ。隠すだけ無駄なダメージ受けそうだから見せておく」
「ふむふむ、異空間に陣地を構築するスキル……なかなか高度ですね。私でもこれは難しい。切り離されている分辿り着くのも一苦労しそうです」
「そうか、簡単って言われなかっただけよしとしておくよ。とりあえず今日はここで寝るか」
「ここって寝具はあるんですか?」
「ある。2階に一つと地下に一つ。1階には厨房とカウンター、あと楽器が一通り」
「へぇ、他には?」
「地下は書斎になっているから本が大量に置いてある。2階はマジで寝室イメージだから化粧台くらいだな」
「じゃあ2階を貸してもらいます!」
「おう、そうしろ。エウレカが入ったら入口消すから外の声も臭いも気にならないだろ」
「なんと素晴らしいスキル! 私も取得したいです!」
「方法が分かればいいな。俺は知らん」
「保持者なのに?」
「そうだよ、アナウンスの時にこの猫耳と尻尾に合わせて生えてきたスキルの一つだ」
他にも色々生えてきたけど、今一番助かっているのはこのスキルがあることだ。
他のもまぁ、うん、【牧場】とか【インベントリ】とかかなり使っているんだけど、事ここに至って今まで活躍の機会がなかった【ハウジング】に光明が差した。
今後ダンジョンで寝泊まりとなるともっと役に立つんだろうけど……スタンピード直前みたいな空気だからな。
しばらくお預けだ。
「あ、最近のダンジョンの異常ってエウレカの仕業か?」
「いえ? 私はみんなが深層って言ってる場所から半日で登ってきたのでアナウンスじゃないですかね」
……喋るたびに人間卒業していくのやめてくれないかな。
こっちの精神がゴリゴリ削られていく。
しかしそうか、それはそれで報告しておかないと……とはいえ今は一瞬でもあの部屋に戻りたくないので明日にさせてもらう。
すまんなDの皆さん。
お休み!




