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ダンジョン探索者だけど猫耳美少女になった件について  作者: 蒼井茜


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可愛いは正義

 そして月曜日がやってきた。

 最近時間の流れ遅くない? 高校生になってからスポーツカーに乗ってた気分で時間が経過してたけど、ここに来てエンストでもしたのかってくらい1日が濃い。


「おー、三上! 猫耳もふらせて!」


 ギャルが早朝から突撃してくる。

 もはや慣れてしまった俺は言われるがままに頭を差し出す。


「……むっ、この臭い。金持ちの家の飼い猫のそれ!」


「やめてくれ、飼い猫と言われると心が軋む」


 俺にとってクリティカルな発言だが、三姉妹によって「お兄ちゃんはもっと美容に気を使うべき!」という発言と、母さんの「お金の心配も無くなったしいいの用意したわよ」という善意による地獄への舗装で俺のシャンプーやらは高級品へと交換された。

 残っていたのは親父が代わりに使う事になったというが……うん、なんかここ最近髪の艶がすごくいい。


 毎朝寝ぐせが面倒くさいから親父にバリカン借りようとしたらグーで殴られた俺の、この自由形寝癖生成選手権世界トップクラスの髪が常にすべすべでアホ毛一本も立たないのだ。

 女子が美容にこだわる理由を垣間見た気がするが、今は面倒だし邪魔なので毎朝朝食時に瑠璃にされるがまま髪を結んでもらっている。

 あの子は三姉妹の中でも早起きの部類で、一番遅く寝て一番早く起きて、そして本を読むのだ。

 そのルーティーンの中に俺の髪で遊ぶが入っただけで、たまに茉莉や亜衣も参加する。

 結果として登校前と帰宅時に髪型が変わっているのは珍しくないのだ。


「で、にゃんこはどうして飼い猫って言われたくないのかにゃー?」


「ごろごろごろごろ……」


 喉が鳴って答えられんからやめてくれ、とも言えずにされるがまま雑賀さんに視線を向ける。


「現在三上幸助さんの立場は非常に危ういのでライセンスを2級まで、つまりはプロ扱いできる所までダンジョン省が上げています。それに加えて将来的には省に努めていただく形をとってもらっているので、飼い猫と言われるのがいたたまれないのでしょう」


「にゃーるほど、うりうり。ここがええんか?」


「ごろごろごろごろ……ふにゃあ……」


 あ、あくびが堪えられない……。


「ほーれチュールだぞー」


「いや流石にそれは人の尊厳無視し過ぎで……うっま!」


 差し出された猫のおやつからなんとも香しい物を感じ、口に突っ込まれた瞬間には脳がスパークしたかと思うほどの美味に驚いた。


「え、うまっ!」


 そのままぺろぺろと差し出されたチュールを舐める。

 なんだこのうま味!

 猫はいつもこんな豪勢なおやつを口にしていたのか!?


「キャットフード食べる?」


「食べる!」


 誰かが持ってきたキャットフードも素晴らしい微香だったため、放り投げられたそれを空中でぱくり。


「うっまー!」


 猫、いいもの食ってるなおい。


「これ猫缶用意したらどうなるかな……」


「中毒になりそうだからほどほどにしてくれ……アイスキャンディー代わりにチュール舐めながら道行く不審者の完成だ」


「可愛いから許されるんじゃない?」


「可愛いは正義というが免罪符にはならねえんだよ」


 間違いなく不審者扱いされる。

 俺じゃなくて雑賀さんが。

 で、Dの関係者と気付いた警察官がいたたまれなくなる。


「まーしょーじきどーでもいいんだけどねー。ほーれごろごろ」


「ごろごろごろごろごろごろ……」


 もうなんか喉鳴らすマシーンになった気分だ。

 気が付いたら膝枕までされてるし……なんだこれ、ぼっちだったのが教室のど真ん中でギャルに膝枕されるとか天国か?


「あの、おれせいしんはおとこのまま」


「見た目可愛けりゃおっけー」


「じゃああいつとかは……」


 適当なクラスメイトを指さす。

 指の延長線上にいた男子が「俺!?」と驚きの声を上げる。


「え、やだ、タイプじゃない」


「じゃああっち」


「ナルっぽくてやだ」


「じゃああれ」


「ロン毛キライ」


「あそこの」


「ブス」


「じゃあ……」


 指を動かすたびに撃沈していく男子たち。

 いや、ほんとごめん。

 わざとだけど、誠心誠意謝罪しておく。


「女子でそういう相手いないの?」


「三上ゲームのやりすぎじゃね? あたしら可愛い猫撫でる事あっても女子同士でこんな事ほとんどしないよ?」


 ほとんどってことはたまにするんだ……ふーんえっちじゃん。


「なんか鼻の下伸びてるけど可愛いからいっか」


 ……可愛いも免罪符足り得るんだな、今じゃ絶滅危惧種の神様と教会破産させるくらい堪能してやろう。


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