テイム?
「しかし思わぬ検証ができちまったなあ」
「あー、【ハウジング】に他人が入れるってやつね」
空間型ダンジョンには入退場に制限がかけられている物もある。
一番多いのは人数制限で、次が持ち出し禁止。
前者は言うまでもなく入れる人数の上限が決まっているというもので、後者はダンジョン内で手に入れたアイテムの持ち出しができない。
正確に言うならドロップアイテムは持ち帰れるんだけど、そこら辺で拾った石とかは持って帰れない仕組みになっている。
その点、俺の【ハウジング】はどうやら制限人数は関係ないようだ。
俺が中に残って【ハウジング】の門を閉じる事も出来たし、冷蔵庫から拝借した卵を庭先において3時間くらい放置してたらしっかり傷んでた。
つまり外と仲の時間経過は同じで、中に人をいれたままにすることもできるという事だ。
緊急時の避難、あるいは換金に使える危険なスキル認定するには十分だな。
「これよう、ダンジョン内で使えたら反則もいい所だな」
「確かに……いつでもどこでも安全に、なおかつ万全の休みがとれるっていうのはでかいよね」
「あとは昼夜の検証だな。それができたら悪さの幅も増えるぞ」
「悪さ……?」
「おう、俺等が入った時は太陽は真上にあった。卵を出した時もそうだった。ずっと昼で、太陽光発電が使えれば電気も使える。そうじゃなくてもバッテリー持ち込めるなら悪用できる。ただ……寝るには遮光カーテンが必要だな」
「なるほど」
確かに便利ではあるが、利便性を考えれば昼夜があった方がいいかもしれない。
俺が【ハウジング】を使っていない間も発電して、蓄電器でも置いておけばそれだけで生活が成り立つ。
一方で昼オンリーだった場合は蓄電器がいらなくなるが、遮光カーテンが必要。
ここは折り合いだし、XLハウスなら地下室があるのでそっちで寝てもいい。
あるいは、自在に変えられるとか、外の気候に左右されるとか、色々な可能性があるから軽々に「これだ」って言いきることはできないけれど、それでも少しワクワクしてきた。
ちなみに【ハウジング:牧場】も最大サイズを持っていたのだが、中で飼育していた馬などは軒並みいなくなっていた。
まぁ、牧場の経験なんてゲームしかないからいいんだけどさ。
そもそもゲーム内でも暇つぶし感覚でやってただけだし、一部はモンスターの飼育もしていたから下手に連れ出したらヤバい事になってたかもしれない。
ただ【乗り物】スキルで動物系も呼び出せそうなのが怖い所でなぁ……。
試しにバイクを念じたら目の前に現れた。
無免許で、なおかつナンバーついてないから公道を走れない代物だけど、これ空飛べるんですよね。
つまるところ現行の法律だと道路交通法より航空法に引っかかる可能性が高い。
なのでどのみちお蔵入り……と思っていたんだが、解除の方法がわからなかった。
いくら念じても消えないので、もしかしてコレ一度呼び出したらそのまま? という状況。
仕方なく今は【ハウジング】の庭に置いてある。
いやぁ、過去のイベントで配布された超弩級戦艦とか呼び出さなくてよかったよ。
【ハウジング:牧場】の中で出したから周囲に被害は無かったにせよ、移動できずに頭抱えるところだった。
「ふぅむ……ここでダンジョンのモンスター飼えないもんかね」
「飼ってどう……あぁ、養殖?」
「それもあるが、5層にいるブル系のモンスターや6層のチキン系は牛乳やたまごがとれるでな」
「……知らんかった」
「凶暴な奴らだ。その乳しぼりだのたまごとりだのは割に合わんからな」
「そらそうだ」
「代わりに高値で取引される。g千で売れるぞ」
……とんでもない高額商品じゃねえか。
それなら喜んで採取しに行く奴らもいるだろうに。
「なんで皆それをやらないんだ?」
「だから割に合わんのだ。それができるなら中層より先で獲物を狩った方が実入りがいい。ドロップ品もレベルもな。それができない奴らはお前のようにボア肉や小さな魔石でどうにかしている」
「なるほど」
そりゃそうか。
確かにそれができるレベルなら先に行くし、できないなら諦める。
命がけの乳しぼりとか絶対にやりたくねえわ。
けどそれができるなら……安定収入になるよな。
問題はその手のモンスターを手なづける方法がないってことだが……待てよ?
たしか採取系ジョブの中にサモナーっていうのがあった。
野生のモンスターを捕まえて、乗り物として利用できるように調教するジョブだ。
元々は戦闘用のジョブだったのがボツになって、でも運営側がノリと勢いで造形決めてたために実装されたジョブだ。
そもそもの乗り物が少なかったから、じゃあいっそ既存のモンスターにも乗れるようにするかって流れで作られた新興ジョブ。
全レベルカンストさせてた俺は意地で最大レベルに持って行って、乗り物のバイヤーもやって稼いでいたけど……あれはなかなかの苦行だった。
オンラインゲームで一人寂しく反復作業だったからな。
スキルを連打して、捕まえられるかどうかのお祈り、それを繰り返して捕まえられたらそのモンスターに乗って牧場まで爆走。
途中で他のモンスターの攻撃受けたら最初からやり直し。
牧場に連れて行ったら乳幼児のように数時間おきに餌やりやブラッシングをして、好感度をマックスまで上げる。
途中で好感度がマイナスになると一定確率で逃げ出すし、モンスターにも個性があったからそれに合わせてやらないといけない。
健康のステータスもあったから捕まえたモンスターが嫌がってもブラッシングとかは不可欠で、乗り物として登録できるようになるまでも長い道のり。
この一連の作業を終えてようやくレベルが上がるという苦行も苦行。
おかげで競合他者はいなかったけど、あまりに仕様が面倒くさすぎて運営にクレームが大量に送り付けられたという。
ただそれでも、運営は「そのくらい大変なんだぞ!」という意思を覆さなかったのと、それまで頑張った奴らが報われないという理由から改善はしないまま。
稼ぎたければサモナーになれと言われるほど極まった苦行ジョブだったが、金策としては本当に美味しかったと言える。
ついでに乗り物にできるモンスターも人気不人気がはっきりしていたし、隙間産業や個人間取引もよく行われていた。
数千を超えるモンスターを全て乗り物にできるというのはそれだけ大きな事業になるからな。
まぁ大体の連中が序盤のエリアで捕まえられるモンスター育成して、それで終わりにするんだけど。
「なんとかなるかもしれない……」
「本当か?」
「確証はないけど、もしかしたら……ペットが増える事になったらみんな反対するかな」
「んー、金の心配も無くなったしみんな余裕も出てきた。あの雑賀って兄ちゃんが入り浸ってる延長と考えりゃ問題ねえと思うが」
「じゃあちょっと明日試してみる」
とりあえず狙い目は送り狼かな。
あいつら温厚だし。




