↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
52/59

【最終話】悪役令息に転生したのでヒロインと悪役令嬢を百合HAPPYENDにしたら悪役令嬢の兄に目をつけられました。

「何するんですか! おかげで、殿下に挨拶できなかったじゃないですか!」

「したかったのか?」


 引きずられるようにしてその場をあとにした俺は、漸く解放してもらってからそう叫んだ。


「当たり前です! 俺の兄とも親交があるようですし、失礼な態度はとれません! それに――」


 俺は、殿下の表情を思いだした。


「あんなに、寂しそうな表情かおをしてたのに」


 これもまた、俺の本心だった。


「……お前は。誰かが悲しんでいたら、誰彼かまわず助けるのか」

「かまわずっていうか、そもそもあの人は、この国の王族で――」


「そうだ。『魅了』の力が効かなくとも、あの方はこの国の王家の人間だ」


 ノクス先輩の声は厳しかった。


「人を従えるのには長けている。自分の欲しいものは――本当に欲しいものは、望めば全て手に入る方なんだ」


 俺はその言葉の意味が、一瞬よくわからなかった。


「彼が手にしなかったものは結局、彼が手に入れないことを選んだものにすぎない。私の妹も、マリー・ステラも、彼にとって手放してもいい人間だったということだ。そして彼は――今回彼女よりもっと、欲しいものができた。相手が望むものを全てを与えて、誰にも奪われないよう、自分の籠の中にしまってしまいたい相手が」

「?」


 空っぽの鳥籠を愛しそうに眺める彼が、今一番求める存在。

 その人間の名前は――?


「――レイ・シルフィード」


「はい」


 その時何故か、突然ノクス先輩が俺の名前を呼んだ。


「……えっ? 何ですか? 突然。俺の名前を呼んだりして」


 どこで話が変わったんだろう。殿下が執着する人物――その人のことは、彼は俺にはまだ内緒なんだろうか?


「……いや、なんでもない」


 真剣な目をして俺に話をしていた筈の彼が、少しの間の後に俺から視線を逸らす。


「それよりお前が前言っていた小説、作りたいというなら、私が支援しよう」

 

 代わりに嬉しい提案があり、俺の頭はすっかりそれで埋まってしまった。


「それってつまり――ノクス先輩が、俺の創作のパトロンになってくれる、ということですか?」


 できれば百合小説を刊行したいけど、この世界で百合小説を出していいかは調査しなくては。


「どうだ? 国王付きの王宮魔法使いよりも、ずっと自由で楽しそうだろう?」

「はい!」


 剣と魔法のファンタジー。この世界で、新しいことを覚えるのは楽しくもあるけれど、遊ぶことはもっと楽しい。

 俺は自由を愛している。

 この世界も魔法も、まだわからない俺にとって、殿下が提案したことよりも彼が見せてくれる未来のほうが、よほど近くてわかりやすい。


 俺がいて、マリーさんがいて、イザベラ様がいて――それから、ノクス先輩がいる。

 ノクス先輩はイザベラ様が大切で、イザベラ様はマリーさんが大切で、俺は、イザベラ様とマリー様の二人の関係が大好きで。

 俺の手の届く限りの人の幸福を願って生きることが、今の俺にとっての幸福に他ならなかった。


「ノクス先輩」


 俺は、これから続く幸せな時間を夢見て彼に笑った。作り物なんかじゃない。本物の、とびっきりの笑顔だ。


 今――俺の居場所はここにある。

 俺が好きなものを、好きでいいんだと、肯定してくれる人たちのところに。


「これからもずっと俺がノクス先輩に、百合の素晴らしさを教えて差し上げるので、覚悟しておいてくださいね?」


 俺がいたずらっ子っぽく言うと、ノクス先輩は一瞬目を見開いて――。


「……善処する」


 それから何故か静かに微笑んで、優しい目で俺を見て頷いた。


 



最後までお付き合いありがとうございました。

もし「面白い」・「続きが気になる」と思っていただけましたら、☆☆☆☆☆での作品評価、フォローなどで応援いただけますと、今後の創作の励みになります。

※番外編後日投稿予定・続編は執筆悩み中です(需要があれば・・・)。

朝霧いお

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。